仮想化

Windows Server 2008 Hyper-V の概要

Rajiv Arunkundram

 

概要 :

  • 仮想化とは
  • 3 つの仮想化アーキテクチャ
  • マイクロカーネル ハイパーバイザとモノリシック ハイパーバイザの比較
  • Hyper-V がもたらす効果

目次

サーバー仮想化市場
サーバーの仮想化のしくみ
仮想化ソリューションの種類
Windows ハイパーバイザ
親パーティション
デバイス共有アーキテクチャ
統合コンポーネント
Hyper-V の機能セット
スケーラビリティ
高可用性
セキュリティ
管理容易性
まとめ

最近、仮想化はずいぶん話題になっており、こうした議論のほとんどはサーバーの仮想化に関するものです。これは、業界において最も魅力的な動きの 1 つであり、IT システムを展開する方法のパラダイムを今後数年間で変化させる可能性を秘めた動きでもあります。ただし、サーバーの仮想化は、サーバーやシステムの利用に関する IT 管理者やアーキテクトの考え方を変化させるだけでなく、ますます動的になっていくことが確実な環境を管理するために使用されるプロセスやツールにも、影響を与えるでしょう。

仮想化が登場してからかなりの期間がたちましたが、仮想化テクノロジはまだ進化を続けています。実際、いまだに "仮想化" という言葉自体の意味するものは人によって異なります。ただし、広い意味では、仮想化とはテクノロジ スタックの 1 つの層をその次の層から分離する (たとえば、サーバーから記憶域を分離する、アプリケーションから OS を分離する) ことです。さまざまな層を分離すると、統合を行ったり、管理容易性を強化したりできるようになります。

概念としては、仮想化は、記憶域、ネットワーク、サーバー、アプリケーション、およびアクセスに適用されます。記憶域とネットワークに関して言えば、仮想化の目的は、リソースのプール全体を 1 つのエンティティとして扱うことができるように、また、リソースのプール全体が 1 つのエンティティとして機能するように、さまざまなデバイスを統合することです。たとえば、2 TB の記憶装置 20 個の代わりに、40 TB の記憶域ソリューション 1 つを構成できます。ただし、記憶域とネットワーク以外のコンポーネントに関して言えば、仮想化は逆向きに機能し、仮想化によって 1 つのシステムを複数のシステムであるかのように扱うことができます。この最も一般的な例が、サーバーの仮想化です。サーバーの仮想化を行うと、複数の OS インスタンスや環境を 1 台のサーバーでホストできます。

マイクロソフトは、デスクトップからデータセンターに至るまでのさまざまなレベルで仮想化に取り組み、サーバーの仮想化、アプリケーションの仮想化、プレゼンテーションの仮想化、およびデスクトップの仮想化を対象としたソリューションを提供してきました。これらすべてに共通する特徴は、Microsoft System Center を使用して管理することです。この記事では、サーバー仮想化コンポーネントに重点を置いて説明します。特に、Windows Server 2008 の主要な機能である Hyper-V が動的なデータセンターでどのように役立つかについて詳しく説明します。

サーバー仮想化市場

まず、現在何が存在し、市場全体がどこに向かっているのかを確認しておくのは、意味のあることだと思います。数値は調査によって異なりますが、一部のアナリストは、現在販売されているすべての物理サーバーの 5 ~ 9% が仮想化ホストとして使用されていると推定しています。皆さんはこれを、市場に出回っているシステムのかなりの部分だとお考えになるかもしれません。市場には、毎年 900 万台を超える物理サーバーが出荷されています。でも、確かなことが 1 つあります。それは、仮想化に詳しくなり、仮想化を導入しようとしているユーザーが増えているので、まだ市場が拡大される可能性が大きく残されていることです。

仮想化がどのような環境で導入されているのかを確認しておくことは重要です。もちろん、大企業は、先頭に立ってテストや早期の導入を行ってきました。ただし、仮想化を展開している中小企業も存在します。仮想化の導入は、ビジネス アプリケーションや管理から Web や電子メールに至るまで、さまざまな種類のワークロードに及んでいます。

では、なぜ仮想化は現在これほどまでに流行しているのでしょうか。これにはいくつかの要因がありますが、その中でもタイミングという要因が占める割合は少なくありません。いくつかの主要な産業要因が重なり、仮想化の導入増加が促進されました。これらの要因には、64 ビット コンピューティングへの移行、マルチコア プロセッサ、システムのより効率的な利用を目指した持続可能なコンピューティングの推進などがあります。

システムの規模ははるかに大きくなっており、システムの能力を最大限に利用するには仮想化のようなテクノロジが必要になっています。システムが利用できるレベルを超えた処理能力を生み出すという点で、主要なテクノロジ (およびムーアの法則) が常に重要な役割を果たしてきたのは事実ですが、現在は、環境に与える影響、必要な電力、および冷却コストへの意識も以前より高くなっています。

これらすべての要因、および仮想化を導入すると投資収益率 (ROI) が向上するというわかりやすい理由によって、大規模な企業と小規模な企業の両方で仮想化の導入が促進されるでしょう。そして私たち IT プロフェッショナルは、すべての主要企業が今後数年間にわたってこのテクノロジへの投資を継続し、機能を強化することを期待できます。

サーバーの仮想化のしくみ

大まかに言えば、サーバーの仮想化を使用すると、1 つの物理デバイスに、提供される ID やアプリケーション スタックなどが異なる複数の OS 環境 (異なる OS どうしでも可) をインストール (さらに同時に実行) できます。Hyper-V は、信頼性が高くスケーラブルなプラットフォーム機能を提供する、次世代の 64 ビット ハイパーバイザ ベースの仮想化テクノロジです。System Center と組み合わせると、物理リソースと仮想リソースの両方に対応した 1 組の統合型管理ツールとなります。

これらすべての機能によって、コストの削減、システムのより効率的な利用、インフラストラクチャの最適化、および企業での新しいサーバーの迅速な準備が実現されます。Hyper-V のアーキテクチャに関する理解を深めていただくために、まずは、異なる種類の仮想化ソリューションについて見ていきましょう。

仮想化ソリューションの種類

サーバーの仮想化に使用される一般的なアーキテクチャは、基本的に 3 つあります (図 1 参照)。根本的な違いは、仮想化層と物理ハードウェアの関係に関する違いです。仮想化層は、ここでは仮想マシン モニタ (VMM。Virtual Machine Manager と混同しないように注意してください) と呼ばれるソフトウェアの層を示します。同じハードウェア リソースを基盤として使用する複数の分離されたインスタンスを作成できるのは、この層が存在するためです。

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図 1 仮想化の 3 つのアーキテクチャ (画像をクリックすると拡大表示されます)

タイプ 2 VMM アーキテクチャの良い例は、Java 仮想マシンです。このアーキテクチャにおける仮想化の目的は、プロセスがホスト システムに依存することなく一連の処理を実行できるランタイム環境を作成することです。この場合、プロセスごとに分離が行われるので、OS との依存関係を気にすることなく 1 つのアプリケーションを別々の OS で実行できます。サーバーの仮想化は、このカテゴリには分類されません。

タイプ 1 VMM とハイブリッド VMM は、現在最も目にすることが多い、幅広く使用されている 2 つのアプローチです。ハイブリッド VMM では、VMM がホスト OS と並列に実行され、仮想マシンを最上位に作成するための基盤となります。ハイブリッド VMM の例は、Microsoft Virtual Server、Microsoft Virtual PC、VMware Workstation、および VMware Player です。このようなソリューションは、仮想マシンをあまり実行しないクライアント シナリオには適していますが、ハイブリッド VMM はオーバーヘッドの大幅な増加を引き起こすので、リソースを大量に消費するワークロードには適していません。

タイプ 1 VMM アーキテクチャでは、VMM 層はハードウェアのすぐ上の層で実行されます。これは、よくハイパーバイザ層と呼ばれます。このアーキテクチャは、もともとは 1960 年代に IBM によってメインフレーム システム用に設計されましたが、最近では、Windows Server 2008 Hyper-V などのさまざまなソリューションが提供され、x86 プラットフォームや x64 プラットフォームでも使用できるようになりました。

ハイパーバイザがファームウェアの一部として組み込まれたソリューションも提供されています。ただし、これはパッケージ化という単なるオプションで、基盤となるテクノロジは変わりません。

タイプ 1 VMM について考えると、基本的に、ハイパーバイザ ソリューションを設計するための主な 2 つの方法は、マイクロカーネルとモノリシックです。図 2 に示すように、これら 2 つのアプローチはどちらも、ハイパーバイザが物理ハードウェアに直接インストールされる真のタイプ 1 VMM です。

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図 2 ハイパーバイザ ソリューションの 2 つの設計方法 (画像をクリックすると拡大表示されます)

モノリシック ハイパーバイザのアプローチでは、ハイパーバイザ (VMM) がホストされる 1 つの層に、必要なコンポーネントのほとんど (カーネル、デバイス ドライバ、I/O スタックなど) が含まれています。これは、VMware ESX や従来のメインフレーム システムなどのソリューションで使用されるアプローチです。

マイクロカーネルのアプローチでは、主要タスクであるパーティションの分離とメモリの管理のみを実行する、非常に軽量な専用のハイパーバイザが使用されます。この層には、I/O スタックやデバイス ドライバは含まれません。これは、Hyper-V で使用されるアプローチです。このアーキテクチャでは、仮想化スタックとハードウェアに固有のデバイス ドライバが、親パーティションと呼ばれる専用のパーティションに格納されます。

Windows ハイパーバイザ

複数の OS 間の分離は、仮想プロセッサ、仮想メモリ、仮想タイマ、および仮想割り込みコントローラを作成することによって実現されます。OS は、対応する物理リソースを使用する場合と同じように、これらの仮想リソースを使用します。

Hyper-V の一部である Windows ハイパーバイザは、次のタスクを実行します。

  • 論理パーティションを作成します。
  • ゲスト OS で使用されるメモリとプロセッサのスケジュールを管理します。
  • 入出力を仮想化してパーティション間の通信を行うためのメカニズムを提供します。
  • メモリ アクセスに関する規則を適用します。
  • CPU 使用率に関するポリシーを適用します。
  • ハイパーコールと呼ばれる単純なプログラマティック インターフェイスを公開します。

Windows ハイパーバイザでは、マイクロカーネルのアプローチが使用されるので、サイズはかなり小さく、1 MB 未満になります。このようにサイズを最小限に抑えることによって、システム全体のセキュリティを強化できます。

Hyper-V を実行するための要件の 1 つは、Intel VT テクノロジまたは AMD-V テクノロジが実装された x64 システムです。x64 テクノロジを使用すると、アクセスできるアドレス空間の範囲が広がるだけでなく、より多くのメモリが搭載されたシステムをサポートできるようになります。また、1 つのホスト システムで実行できる仮想マシンの数が増加します。Intel VT と AMD-V はハードウェアに依存する仮想化ソリューションで、非常に高度な特権が与えられた層をリング アーキテクチャ内で提供します。これらのテクノロジは、ハイパーバイザの実行環境をシステムの残りの部分から分離するのに役立ちます。また、エミュレーションのパフォーマンスを大幅に低下させることなく、変更されていないゲスト OS を Hyper-V で実行できます。

親パーティション

Hyper-V は、1 つの親パーティションで構成されます。これは基本的に、特殊なアクセスまたは特権アクセスが許可された仮想マシンです。これは、ハードウェア リソースに直接アクセスできる唯一の仮想マシンです。その他の仮想マシン (ゲスト パーティションと呼ばれます) はすべて、親パーティションを経由してデバイスにアクセスします。

ユーザーが親パーティションの存在を意識することはほとんどありません。Hyper-V のインストールを開始するには、まず Windows Server 2008 x64 Edition を物理システムにインストールする必要があります。次に、サーバー マネージャを起動し、Hyper-V の役割を有効にして、システムを再起動する必要があります。システムが再起動したら、まず Windows ハイパーバイザが読み込まれ、次にスタックの残りの部分が親パーティションに変換されます。

親パーティションは、キーボード、マウス、ビデオ ディスプレイなど、ホスト サーバーに接続されているデバイスの所有権を持ちますが、ハイパーバイザによって使用されるタイマや割り込みコントローラを直接制御することはできません。

親パーティションには、仮想化環境のあらゆる側面の管理を容易にする Windows Management Instrumentation (WMI) プロバイダ、および子パーティションの代わりにハードウェア関連のタスクを実行する仮想化スタックが含まれます。また、ホスト システムのハードウェアに必要な独立系ハードウェア ベンダ (IHV) のドライバもすべて含まれており、Windows Server 2008 x64 エディション用に作成されたドライバはすべて親パーティションでも適切に動作します。

デバイス共有アーキテクチャ

Hyper-V の革新的なアーキテクチャ コンポーネントの 1 つは、エミュレートされた統合デバイスを各ゲスト OS でサポートする新しいデバイス共有アーキテクチャです。デバイスのエミュレーションは、旧世代のハードウェア用に設計されたデバイス ドライバを使用する旧バージョンの OS をサポートするのに非常に役立ちます。たとえば、Hyper-V では Intel 21140 ネットワーク アダプタ (多くの旧バージョンの OS が出荷されていた当時は、DEC 21140 ネットワーク アダプタと呼ばれていました) をエミュレートできます。

一般に、デバイスのエミュレーションは低速で、容易に強化できず、スケーラビリティも高くありません。それでもエミュレーションは重要です。エミュレーションを使用すると、ほとんどの x86 OS を Hyper-V 上で実行できるようになるからです。現在、仮想化は、テストと開発を主な対象としたニッチ テクノロジから、運用環境向けの非常に重要なテクノロジに移行しているので、ユーザーは、より大規模なワークロードを実行するために、より高いパフォーマンスを必要としています。そして、エミュレートされたデバイスでは、この高まる要求を満たすことができなくなっています。

これに代わる解決策は、Hyper-V 統合デバイスを使用することです。統合デバイスは、物理デバイスに直接マップされた仮想デバイスです。エミュレートされたデバイスとは異なり、統合デバイスはレガシ ハードウェアをエミュレートしません。Hyper-V のハードウェア共有モデルを使用すると、サポートされるゲスト OS は、対応する物理デバイスが存在しない可能性がある統合デバイスと直接対話できます。これらの OS は、仮想サービス クライアント (VSC) を使用します。VSC は、ゲスト OS 内のデバイス ドライバとして機能します。

VSC は、親パーティションの仮想サービス プロバイダ (VSP) にアクセスするときに、物理ハードウェアに直接アクセスせず、VMBus (高速なメモリ内バス) を使用します。続いて、親パーティションの VSP が、基盤となる物理ハードウェアへのアクセスを管理します (図 3 参照)。統合デバイスの重要なメリットは、VMBus を使用したときのパフォーマンスが、仮想化されていないハードウェア デバイスのパフォーマンスに近いことです。

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図 3 VSC は VMBus を使用して VSP にアクセスし、続いて VSP が基盤となる物理ハードウェアへのアクセスを管理する (画像をクリックすると拡大表示されます)

統合コンポーネント

Hyper-V は、1 台のコンピュータで実行されるさまざまなインスタンス間の強力な境界を提供するように構築されています。Hyper-V では、ゲスト OS とホスト OS との間の対話を可能にしたり、サポートされるゲスト OS に追加機能を提供したりするために、統合コンポーネントが提供されます。

Hyper-V の統合コンポーネントでは、次の機能がサポートされます。

  • 時刻の同期
  • ボリューム シャドウ コピー サービス (VSS)
  • ハートビート機能
  • ゲストのシャットダウン
  • キーと値のペアの交換 (ゲスト OS のレジストリにアクセスするために使用します)
  • OS の特定

Hyper-V の機能セット

言うまでもないことですが、仮想化プラットフォームの動作が物理サーバーの動作に近くなるほど、組織では仮想ワークロードを展開および使用しやすくなります。私の考えでは、仮想化プラットフォームのさまざまな機能は 4 つの主要な領域に分類できます。

現在提供されているハイパーバイザ ベースの仮想化ソリューションのほとんどは、機能面ではよく似ています。今後は、総保有コスト (TCO) や使いやすさなどが主要な差別化要因となることが予想されます。また、引き続き管理ソリューションへの投資が行われ、"動的な IT 環境" 構想の実現に向かって管理ソリューションは進歩するでしょう。動的な IT 環境では、インフラストラクチャが柔軟にビジネス要件に対応でき、モデルやポリシーによって自動化や管理の強化が促進されます。

スケーラビリティ

Hyper-V では、マイクロカーネル ハイパーバイザ アーキテクチャを使用することにより、CPU のオーバーヘッドが抑えられるので、ワークロードの仮想化に使用できる CPU 時間が増加します。また、仮想マシンで強力な機能やハードウェア (マルチコア テクノロジ、ディスク アクセスの強化、メモリの増加など) を利用できるので、仮想化プラットフォームのスケーラビリティとパフォーマンスが向上します。

Hyper-V を Windows Server 2008 のその他の機能と組み合わせることにより、ほとんどのワークロード (32 ビット ワークロードと 64 ビット ワークロードを含む) を 1 つのシステム上に集約できます。また、Hyper-V を使用すると、64 ビット テクノロジの導入と、既に環境全体で使用されている 32 ビット ワークロードのサポートの継続を両立させることができます。

64 ビットのホスト システムと、ハードウェアに依存する仮想化が必要であるという Hyper-V の仕様により、ホスト システムは大きなメモリ リソースのプールにアクセスできます。Hyper-V は、ホストで最大 1 TB のメモリをサポートでき、仮想マシンごとに最大 64 GB のメモリをサポートできます。これは、Exchange Server や SQL Server など、メモリを大量に消費するワークロードの仮想化を考えているユーザーにとっては重要です。

また、Hyper-V は、ホスト システムで最大 16 個の論理プロセッサをサポートしているので、2 つまたは 4 つのソケットを持つほとんどの一般的なマルチコア システムに拡張できます。マルチプロセッサ機能を必要とする (または利用する) ワークロードをサポートするために、最大 4 つの仮想プロセッサが搭載された仮想マシンを作成することもできます。

Hyper-V を使用してサーバーを統合すると、統合されたサーバーでは、VLAN、ネットワーク アドレス変換 (NAT)、ネットワーク アクセス保護 (NAP) ポリシー (検疫) などの堅牢なネットワーク サポートも利用できるようになります。また、Hyper-V は Windows Server 2008 の機能なので、Windows Server の他の機能 (BitLocker や Windows PowerShell など) と適切に連携します。

高可用性

高可用性は、Hyper-V とホストのクラスタリング機能が連携することによって、ビジネスの継続性と障害回復に関する要件に対処できるシナリオです。ビジネスの継続性とは、予定されたダウンタイムと予定外のダウンタイムの両方を最小限に抑える能力のことです。これらのダウンタイムには、メンテナンスやバックアップなどの日常的な作業に費やされる時間や、予期せぬ停電も含まれます。

障害回復は、ビジネスの継続性を構成する重要な要素です。自然災害や悪意のある攻撃だけでなく、構成上の単純な問題 (ソフトウェアの競合など) が発生した場合でも、管理者が問題を解決してデータを復元するまで、サービスやアプリケーションが正常に動作しなくなることがあります。信頼性の高いビジネスおよび障害回復戦略とは、データの損失を最小限に抑え、強力なリモート管理機能を提供できる戦略です。

高可用性について考えるときは、予定されたダウンタイム、予定外のダウンタイム、およびバックアップという 3 つのカテゴリを検討する必要があります。通常、予定されたダウンタイムによる影響は回避する必要があります。その理由は、仮想マシンをホスト システムから別の場所に移動して、ハードウェアのメンテナンスを行ったり、ホスト システムや仮想化プラットフォームに更新プログラムを適用したり (再起動が必要となる可能性があります) する必要があるからです。

ほとんどの組織では、予定されたメンテナンス時間帯が設けられています。ここで本当に期待されるのは、メンテナンスでホスト システムがダウンしている間に仮想マシンを使用できない時間を最小限に抑えるか、その時間をなくすことです。Quick Migration (クイック移行) 機能を使用すると、実行中の仮想マシンをある物理ノードから別の物理ノードにわずか数秒で移行できます。そのため、元のホストのメンテナンス中も、仮想マシンを運用環境で使用し続けることができます。メンテナンスが完了したら、Quick Migration を使用して、仮想マシンを元のホスト システムに戻すことができます。

予定外のダウンタイムとは、不測のダウンタイムのことです。たとえば、自然災害や、単純にだれかが間違って電源コードを抜いたことによってサーバーがダウンした場合が考えられます。信じられないかもしれませんが、私は長年の間に、Tech•Ed、VMworld、およびその他のカンファレンスで、多くの管理者から、同僚がサーバーの電源を間違って切ってしまったという体験談を聞きました。

Hyper-V を使用すると、さまざまなホスト システムから成るホスト クラスタを設定し、すべての仮想マシンをクラスタ リソースとして構成できます。これにより、いずれかのホストで障害が発生した場合、別のシステムにフェールオーバーできるようになります。また、Windows Server 2008 のマルチサイト クラスタリング機能を使用すると、プライマリ データセンターで障害が発生した場合にさまざまな仮想マシンをリモート データセンターに回復できるように、地理的に分散したクラスタを設定できます。

これは、すべてのブランチ オフィスを保護する場合にも役立ちます。Hyper-V で予定外のダウンタイムがサポートされるメリットの 1 つは、ゲスト OS への依存が発生しないことです。つまり、高可用性のメリットを Linux 仮想マシンや旧バージョンの Windows Server でも得ることができ、それらのシステムも同様に保護および回復できます。

予定外のダウンタイムについて考えるときは、回復によって得られる効果がシステムの電源を切って再起動した場合と同等であること、つまり回復を行うと状態情報がすべて失われることに注意してください。これが問題となるかどうかは、仮想マシンで実行するワークロードによって決まります。バックアップを高可用性と関連付けて考えることが重要なのは、そのためです。

Hyper-V を使用すると、仮想マシンの実行中に、各仮想マシンのバックアップを作成したり、VSS を使用して、VSS に対応したすべての仮想マシンの一貫性のあるバックアップを作成したりできます。VSS を使用すると、予定外のダウンタイムが発生した場合に状態を容易に回復できる継続的なバックアップ計画を用意できるだけでなく、運用環境のワークロードの可用性に影響を与えずに、指定された間隔でバックアップが実行されるように設定できます。Hyper-V を使用した高可用性ソリューションの詳細については、今月号の TechNet Magazine で Steven Ekren が執筆した記事「Hyper-V の高可用性を実現する」(technet.microsoft.com/magazine/cc837977) を参照してください。

マイクロカーネル ハイパーバイザ アーキテクチャは、攻撃を受ける確率を最小限に抑え、セキュリティを強化するように設計されています。Hyper-V が Server Core の役割として実装されている場合は特に、攻撃を受ける確率が低下し、セキュリティが強化されます。Server Core は、Windows Server 2008 のインストール オプションです。ハイパーバイザにはデバイス ドライバやサードパーティ製のコードが含まれないので、より軽量で安定性が高く、セキュリティで保護された仮想マシンの実行基盤が提供されます。また、Hyper-V を使用すると、Active Directory 統合によって強力な役割ベースのセキュリティが提供されます。そのうえ、Hyper-V を使用すると、仮想マシンでハードウェア レベルのセキュリティ機能 (NX ビット (execute disable bit) など) を使用できるので、仮想マシンのセキュリティをさらに強化できます。

Hyper-V は、他の Windows Server コンポーネントと同様に、セキュリティ開発ライフサイクル (SDL) を通じて開発されており、Hyper-V を高度なセキュリティで保護された仮想化プラットフォームにするために、脅威のモデル化と分析が幅広く行われています。Hyper-V を展開するときは、Windows Server 2008 の展開に関するベスト プラクティスと、Hyper-V の展開に関するベスト プラクティスに従います。また、計画には Active Directory だけでなく、ウイルス対策ソリューションとマルウェア対策ソリューションも含めます。さらに、委任された管理機能を使用して、Hyper-V ホストに対する管理者のアクセス特権を適切に使用します。

管理容易性

サーバーのちょっとした分散が、仮想マシンの大規模な分散という問題を引き起こすことはよくあります。これは、仮想マシンの展開が非常に容易であることが原因で発生するリスクです。また、仮想マシンのモビリティが向上したので、ユーザーには、さまざまな仮想マシンが実行されている場所を正確に把握したり、仮想マシンのセキュリティ コンテキストを追跡したりする責任が新たに課せられています。

さいわい、Hyper-V を使用すると、仮想環境用に別の管理インフラストラクチャを作成する必要がなくなります。Hyper-V は、マイクロソフトの管理ツール、System Center Virtual Machine Manager、Microsoft System Center Operations Manager、およびサードパーティ製の管理ツールと統合されます。そのため、すべての物理リソースと仮想リソースを 1 つのコンソールから管理できます。System Center Virtual Machine Manager 2008 の詳細については、今月号の TechNet Magazine で Edwin Yuen が執筆した記事「VMM 2008 を使用して仮想環境を管理する」(technet.microsoft.com/magazine/cc836456) を参照してください。また、Windows PowerShell のサポートにより、容易にタスクを自動化できます。

Hyper-V を使用すると、仮想マシンで、ハードウェアをかつてないほど効率的に利用できます。また、Windows Hardware Quality Lab (WHQL) 認定ドライバをすべて親パーティションで実行できるので、広範なドライバやデバイスに互換性が提供され、環境内で実行されるさまざまなドライバの管理が容易になります。

まとめ

前述のとおり、管理は開発と差別化が発生する主要な領域となることが予想されます。今後、この領域で多くの取り組みが行われるのは間違いないでしょう。全体的に考えて、仮想化がより中心的な役割を果たすようになってきた今は、非常におもしろい時代です。まだ Hyper-V を試したことがない場合や、Hyper-V の詳細を確認するには、microsoft.com/Hyper-V を参照してください。

Rajiv Arunkundram は、マイクロソフトでシニア プロダクト マネージャを務めており、Windows Server マーケティング部門でサーバーの仮想化に関する業務に携わっています。Rajiv の主な仕事は、顧客やパートナーがマイクロソフトの仮想化戦略と仮想化ソリューションを技術的およびビジネス的な観点から理解できるよう支援することです。