System Center Essentials

エンタープライズ以外でも System Center が役立つ理由: 完全な可視性と完全な制御

Greg Shields

 

概要:

  • エンタープライズ以外での事前監視
  • 監視から行動へ
  • 自動化された仮想管理
  • エンタープライズ以外でのエンタープライズ バックアップ機能

目次

エンタープライズ以外での事前監視
監視から行動へ
自動化された仮想管理
エンタープライズ以外でのエンタープライズ バックアップ機能
可視性と制御の活用

Fat Tire Ale で知られるコロラド州フォートコリンズのビール醸造会社 New Belgium Brewery でシニア システム管理者を務める Travis Morrison 氏は、ネットワークの完全な可視性がもたらす利点を実体験から理解しています。New Belgium は決して小さくはなく、よく知られた企業ですが、明らかに "大企業" とは言えません。しかし、IT インフラストラクチャへの一貫した確実なアクセスを必要としています。顧客とのやり取り、製品の確実な配送、および複雑な製造スケジュールの管理は、サーバーやワークステーションを通じて行われています。

つい最近 Morrison 氏は、New Belgium の販売アプリケーションの 1 つで繰り返し発生する問題に直面しました。このアプリケーションは、SQL Server、IIS、および内部のバッチ処理を統合する複雑なソリューションでした。

この販売アプリケーションで問題が発生した場合、アプリケーションは機能を停止し、IT 担当者がサービスの復旧に丸 1 日費やすこともよくありました。. その間、New Belgium の従業員は、顧客とのやり取りができませんでした。営業チームは、販売レコードを閲覧できず、トレンドの変化を顧客に伝えるために必要なデータも取得できませんでした。これは明らかに、ビジネスに悪影響を与えます。厄介でコストのかかるサービスの停止を何度か経験した後、Morrison 氏は、ユーザーが気づく前に問題の原因を突き止める積極的なアプローチが必要であると決断しました。そして、いくつかの製品を調査した結果、最終的に System Center Operations Manager 2007 R2 を選択したのです。「このシステムは、本当に 24 時間以内で元が取れました。わずかなサポートだけで、サーバーが稼働し、ネットワーク全体にエージェントがインストールされ、ページャーへの通知を 1 日足らずで有効にできました」と Morrison 氏は語っています。

「その夜は、午前 3 時ごろにページャーが鳴り、販売アプリケーションのデータベースが満杯になっていることがわかりました。これは、それまでにもよく発生していた問題でした。でも今回は SQL Server をシャットダウンでき、丸 1 日システムを停止しなくても容量を追加できたので、余計なコストがかからずに済みました」と、Operations Manager への投資を New Belgium がすぐに回収できたことに関して、Morrison 氏は語っています。

エンタープライズ以外での事前監視

Morrison 氏の話が特に興味深いのは、New Belgium が System Center の一般的な顧客である大企業 (エンタープライズ) ではないからです。セールスマンは営業のために全国を飛び回るものですが、New Belgium は 1 か所で 1 つのビール醸造所を経営しているにすぎません。そのため、皆さんが通常思い浮かべるような典型的なエンタープライズ型の IT 企業とは言えません。むしろ中小企業であり、ニーズも中小企業レベルです。しかし、可用性の高い IT インフラストラクチャを求める New Belgium のニーズは、一般的なエンタープライズの場合とそれほど変わりません。電子メール、ファイル サーバー、顧客データベースなどの中核サービスに対しては、できる限り 100 パーセントに近い稼働時間が必要とされます。問題が発生した場合にはそれを知る必要があり、理想的には、ユーザーからクレームの電話が来る前に知る必要があります。そのためには、異種混在の (ほぼマイクロソフト中心ではありますが) IT 環境全体にわたって機能する、包括的な監視ソリューションが必要です。

Operations Manager は、まさにそのような Morrison 氏の環境に対して役立つ種類のソリューションを、パッケージで提供します。Operations Manager は、各サーバーおよびワークステーション、さらにはストレージやネットワークなど他のエンドポイントにわたって、システムの動作を監視するプラットフォームを作成します。Operations Manager のインフラストラクチャは、どのような規模のネットワークのニーズでも満足できるようスケーラブルな設計となっています。さらに、Operations Manager は、マイクロソフトの System Center ポートフォリオのほんの一部にすぎません。他のコンポーネントとして、構成管理用の System Center Configuration Manager、統合バーチャル マシン管理用の System Center Virtual Machine Manager、およびエンタープライズ品質のバックアップおよび復元用の System Center Data Protection Manager があります。

350 人のユーザーに 40 台のサーバーという規模の Morrison 氏の環境では、Operations Manager を 1 台のサーバーにインストールすれば目的のパフォーマンスを実現できます。Operations Manager の監視データを格納するために、環境内の同じサーバーまたは別のサーバーに SQL Server のインスタンスをインストールします。Operations Manager は、他の監視ソリューションとは大きく異なります。他のソリューションの場合は、イベント ログやシステム パフォーマンス データを統合および分析するために中央の場所が用意されます。Operations Manager は、管理パック (MP) を使用することで、このプロセスを一歩先に進めます。これらの MP は、マイクロソフトや他の製品ベンダーによって、それぞれ独自のハードウェアおよびソフトウェアのために設計されます。これらは基本的に、入力される大量の未加工データをフィルター処理するルールのセットであり (図 1 を参照)、管理者が関心を持つと思われる動作だけを管理者に通知するようにできます。

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図 1 管理パックが未加工データをフィルター処理し、実用的な情報を Operations Manager コンソールに表示 (クリックすると拡大画像が表示されます)

IT 組織では、どのような種類の状況をできるだけ早く知る必要があるでしょうか。それはたとえば、サーバーのディスク ストレージが満杯になっている状況、イベント ログのエントリにアプリケーションの障害情報が含まれている状況、または重要なサーバーのパフォーマンスが許容されるしきい値を下回っている状況などです。このような状況の発生をすぐに知ることができれば、ビジネスに影響を与える前に問題に対処することが可能になります。

ただし、今日の IT インフラストラクチャは途方もなく複雑であり、これは特に、少人数の IT チームしか持たないことの多い、エンタープライズと呼べない規模の組織にとっては問題となります。これは、個々の IT 担当者が、いくつかの問題に特化する代わりに、インフラストラクチャ全体にわたる複数のテクノロジに精通する必要があることを意味します。すべての問題の根本原因を突き止めることは、たとえそれが期待されていたとしても、どのような IT 担当者にとってもほぼ不可能です。

このような場合にこそ MP が役立ちます。一般に MP は、製品の開発チームによって、または何百件もの事案を経験してきたコンサルタントによって作成され、未加工データをフィルター処理することで、管理者にとって重要な状況だけに光を当てます。IT 組織では、オーバーライドやしきい値を使用して、最も必要とする種類の情報が提供されるように MP をカスタマイズできます。たとえば、プロセッサの使用率が 80 パーセントを超えてもそれほど関心はないが、95 パーセントに達したときはすぐに知りたいという場合には、そのような感度を反映するように Operations Manager の監視のしきい値をカスタマイズできます。また、通知の特性に対してオーバーライドを設定し、個別のサーバーまたは環境全体に対してそのオーバーライドを適用することで、サーバーの状況に対する各通知を調整できます。

IT 担当者は、Operations Manager を使用して、たとえばネットワーク自体など、マイクロソフト以外のコンポーネントも監視できます。Bynet Data Communications Ltd. では、Operations Manager によるネットワーク統合のおかげで、ネットワークが遅いというユーザーからのクレームに対して、定量的に反論できるようになりました。同社の管理ソリューション スペシャリストである Idan Yona 氏は、次のように語っています。「Operations Manager のインストールでは、最初の展開から成果が得られました。私たちは、リモート オフィスでのユーザーのネットワーク体験を評価するという特定の目標を念頭に Operations Manager を展開しました。システムが短期間稼働した後、メイン サイトと支店との間でユーザーの体験を比較したネットワーク統計情報を収集できました。その結果のデータにより、ネットワークが遅くなっているというリモート ユーザーのクレームに反証を挙げることができ、それによって大きな WAN アップグレード プロジェクトを中止することができたのです。結果として、6 万ドル以上のコストを使わずに済みました」。

各 MP で実現できる監視の種類については、詳細情報を記載した マイクロソフト MP カタログ (図 2 を参照) がオンラインで提供されています。MP の数や種類は広範囲にわたるため、どのような異種混在の組織であっても、ニーズに適した種類の統合が見つかることでしょう。それには、一般にはマイクロソフトと関連付けられることのないサードパーティ製のテクノロジも含まれます。多くの MP は無料でダウンロードできますが、特定のベンダーから購入が必要なものもあります。各 MP は、問題の発生を事前に通知するためのデータのセットを Operations Manager のインフラストラクチャに追加します。

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図 2 詳細なリストを含む System Center 管理パック カタログ (クリックすると拡大画像が表示されます)

監視から行動へ

環境を監視することは、完全な制御という目標のまだ途中にすぎません。第 2 の重要な能力は、追跡、繰り返し、および予測が可能な方法で、サーバーやワークステーションに変更を適用することです。ソフトウェアのインストールや、一般的なトラブルシューティング、更新プログラムの管理などのために、ユーザーのデスクに技術者を派遣しているような企業は、小規模なネットワークがスケールアップしたときには適切な管理を行えません。多数のコンピューター全体には複製できないような、手動の操作が大量に必要となるからです。そこで必要なのは、ソフトウェアや更新、ときにはオペレーティング システム全体さえも、何台ものコンピューターに同時に展開できる集中化されたツールです。

コロラド州にある中規模の防衛関連建設業者でシニア システム エンジニアを務める Eric Schmidt 氏は、System Center Configuration Manager によって、約 2,000 のデスクトップという安全面が脆弱になりがちな環境に、セキュリティを導入しました。彼は次のように語っています。

「Configuration Manager の導入の前に、いろいろな更新ソリューションを試しましたが、成果はまちまちでした。いくつかのソリューションはマイクロソフトの更新プログラムに対してよく機能しましたが、マイクロソフト以外のソフトウェアの更新は展開できませんでした。私たちの環境には複数の所有者と複数の IT 組織が存在し、すべてが同じネットワークでつながっています。そのため、ソリューションのセット全体を私たちの組織モデルに合わせることができなかったのです。最も役に立たなかったのは、多くの手作業を必要としながら統合レポート機能を何も持たないようなソリューションでした。ひどいときには、必要な更新プログラムに対して 20 パーセントも準拠しているかどうかという状態でした。何かを変える必要があったのです」。Configuration Manager は、同社の複数の IT チームと連携する自動化された更新管理インフラストラクチャを導入することで、Schmidt 氏の問題を解決しました。彼はさらに次のように語っています。「Configuration Manager によってコンピューターのコレクションを複数作成して、それぞれを指定した IT 管理者グループが管理するように設定できました。Configuration Manager は Windows Server Update Services とネイティブで統合されるので、各 IT チームは、それぞれのコンピューターに対してどの更新プログラムが意味を持つかを簡単に識別できます。すべてのコンピューターにすぐに適用する必要のあるきわめて重要な更新があれば、単にそれを "All Computers" コレクションに入れればよいのです」。

これを行うために、Configuration Manager は、コレクションと呼ばれるコンピューターの動的なグループを作成します。他のソリューションのように、管理者がコンピューター名や他の統計指標によってグループを作成するのではなく、Configuration Manager のコレクションは、各コンピューターの動的な特性に基づいています。IP サブネット上の位置に従ってコンピューターのグループを作成することも、"Microsoft Office Word 2007 がインストールされたすべてのコンピューター" のグループを作成することも、同じように簡単に行えます (図 3 を参照)。コンピューターの特性は時間の経過と共に変化するため、管理者は定期的にコンピューターをコレクションに追加したりコレクションから削除したりできます。このような流動性は、Configuration Manager の主要な利点の 1 つです。コレクションは階層化されているため、管理者は追加の制約を利用したサブコレクションを作成できます。Schmidt 氏のケースでは、最上位レベルのコレクションがコンピューターの IT チームの所有者に関連付けられ、各チームに対して、下位レベルにサブコレクションを作成する権限が与えられました。

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図 3 Configuration Manager で、Microsoft Office Word 2007 がインストールされたすべてのコンピューターなどをグループ化する動的コレクションを作成 (クリックすると拡大画像が表示されます)

Configuration Manager は マイクロソフトの更新プログラムの展開に優れた機能を持つ一方で、その真の力は、マイクロソフト以外の製品に対するソフトウェアや構成の変更も処理できることです。Schmidt 氏は、会社の環境でそのような Configuration Manager の能力を活用しました。「Configuration Manager により私たちは、マイクロソフトの更新プログラムのときと同じインフラストラクチャを使用して、Rational ClearCase や Adobe Acrobat の更新も展開できました。自動配布用のサイレント "パッケージ" を作成するコツを管理者がいったんつかんでしまえば、ほとんどどのような変更であっても、1 人の人間が多数のコンピューターに一度に展開できるようになったのです」と彼は語っています。

ワシントン州ベルビュー市の IT システム アナリストを務める Brita Rood 氏もまた、マイクロソフト以外の製品に対する Configuration Manager の展開能力に注目しました。「私たちは Configuration Manager のソフトウェア配布機能を使用して、コンピューターにサードパーティ製のソフトウェアを展開しました。その中には、手動でインストールすると 1 時間もかかるような製品もありました。インストールを自動化することで、一晩で 70 以上のクライアントに展開を完了できました。これは時間の節約だけでなく、外部のサービス ベンダーにインストールの支援を依頼する必要がなかったため、コスト的にも大きな節約となりました」と Rood 氏は語っています。

Configuration Manager の変更管理ソリューションはスケーラブルであるため、小規模な環境だけでなく、数万人のユーザーや数百のサイトを抱えるような大企業でも利用できます。どのように大規模な環境であっても、変更の展開には同じプロセスおよび操作が使用されます。1 つのソフトウェア、またはオペレーティング システム全体を複数のコンピューターに展開する必要があるとしましょう。単にネイティブ ツールまたはサードパーティ製のツールを使用してインストール パッケージを作成し、それを Configuration Manager のインフラストラクチャに投入するだけです。コンソールを使用して、展開パッケージを提供情報およびコレクションと組み合わせることにより、変更イベントを作成します。ここで、コレクションは、どのコンピューターがパッケージの対象となるかを定義し、提供情報は展開のスケジュールを特定します。提供情報および関連する Configuration Manager のメンテナンス ウィンドウを使用して、管理者は、終業後など業務が行われていない時間中にのみ展開が行われるようスケジュールを設定できます。

ソフトウェアの展開後、それを適切に管理するためには、障害発生時にトラブルシューティングを行うだけでなく、ソフトウェアがどこにインストールされているかを把握しておくことが重要です。中規模の IT 環境のハードウェアおよびソフトウェアのインベントリの確認は、多くの事後対応的な環境の場合、紙とペンを使って試行錯誤しながら行われています。Configuration Manager のインベントリ機能を、ソフトウェア メータリングおよび資産インテリジェンス機能と組み合わせることで、この手順はほぼ完全に自動化されます。

現在のツールの多くは、サーバーやワークステーションに問い合わせることでハードウェアおよびソフトウェアの構成を識別できます。この情報は便利ですが、単なる統計的表現にすぎません。Configuration Manager のソフトウェア メータリング機能は、インストールされたソフトウェアをどのユーザーおよびコンピューターが実際に使用しているかを識別する能力を付加します。IT 組織は、ソフトウェア メータリングによって、使用されていないソフトウェア ライセンスを見つけ、追加のライセンスを購入する代わりにそれらのライセンスを他のユーザーに割り当てることができます。この機能を Configuration Manager に組み込まれた資産インテリジェンス データベースと統合することで、インストール済みソフトウェアの個々の特性を、特定の製品、バージョン番号、およびエディションと一致させることができます。その結果、任意の管理対象コンピューターにどのような種類のソフトウェアがインストールされているかを厳密に特定できる実用的なレポート エンジンが得られます。

これらの機能を利用して、ベルビュー市では、未使用ライセンスに無駄な出費を行うことなく、ライセンスをすばやく "正常化" することができました。Rood 氏は次のように語っています。「資産インテリジェンスとソフトウェア メータリングを使ったレポート機能のおかげで、特定のソフトウェアの使用状況、特にサードパーティ製のソフトウェアの使用状況を把握しやすくなり、ライセンスの必要性を判断するのに役立ちました」。

また、多くの組織では、Configuration Manager を使用して OS 全体を管理対象ワークステーションに展開しています。この複雑でコストの高い作業は、マイクロソフトの最新 OS への移行を望む多くの組織にとって、大きな障害の 1 つとなり得ます。複雑さの理由は、展開それ自体にあります。従来のアップグレードでは、技術者がワークステーションを個別に処理する必要があり、多くの場合、イメージング ソフトウェアやスクリプト ベースのソリューションが使用されます。どちらの場合も、古いシステム インストールからのユーザー データが更新後のシステムに保持されません。そのため、技術者は、(ワークステーションの "個性" とも言える) 固有の設定が完全に、そして正確に移行されるよう、ユーザーと協力して作業する必要があります。

Configuration Manager では、オペレーティング システムの展開 (OSD) 機能が基本の製品に組み込まれ、管理された OS 展開への包括的なアプローチを提供します。OSD を使用することで、管理者は、ほとんどすべてのデスクトップ、ラップトップ、またはサーバーにインストールできる、Windows オペレーティング システムの標準化されたインストールを作成できます。最近のすべての Windows OS でネイティブに用意されている組み込みのプラグ アンド プレイ コンポーネントを使用すれば、デバイス ドライバーを各クラスのハードウェアに対して個別に用意できます。

デバイス ドライバーは、OS 展開の一部にすぎません。前にも述べたように、1 つの OS から別の OS にアップグレードしたり、壊れたワークステーションを更新したりする場合には、ユーザーの個人的な情報を保持することも非常に重要です。Configuration Manager の OSD 機能には、コンピューターの更新前にユーザー設定を自動的にオフロードする機能も含まれています。OS のインストールが完了した後、それらのユーザー設定が再適用されます。最終的な結果は、ユーザーから見ても "古い" OS インスタンスと驚くほどよく似ているため、ユーザーはすばやく仕事に戻ることができます。

サンパウロの 2S Inovações Tecnológicas で技術コンサルタントを務める Cleber Marques 氏は、このレベルの自動化を何度も利用したことがあります。「Configuration Manager を使用することで、私たちの顧客は 1,000 台以上のデスクトップすべてに Windows Vista を配布でき、わずか数日で本社との連携が取れることが十分に期待できます」と氏は語っています。

自動化された仮想管理

Operations Manager および Configuration Manager は物理的なサーバー上で優れた機能を提供しますが、今日の IT 組織はバーチャル サーバーにも取り組んでいます。さまざまな規模の環境が物理マシンからバーチャル マシンへと移行している中で、仮想化は現在どこにでも見られる状況です。仮想化を早期に導入した企業では、仮想プラットフォームに対して使用できるオプションが制限されていましたが、最近の爆発的な関心の高まりによって、使用できるオプションも同様のペースで増加しています。仮想化に関するプラットフォーム ベンダー間の競争は、ハイパーバイザー自体に用意された機能セットという点では、急速に引き分けに近づいていると考えられます。現在、競争の最前線にあるのはむしろ、仮想インフラストラクチャの管理に役立つツールの提供です。

その目的のため、マイクロソフトでは、仮想管理ソリューションである System Center Virtual Machine Manager (VMM) に対して、マルチプラットフォームのアプローチを選択しました。VMM を使用することで、環境は、単に 1 つのハイパーバイザー上でバーチャル マシンを管理することには制限されません。IT 管理者は、Microsoft Hyper-V に加えて VMware の ESX および vCenter 製品から構成される仮想インフラストラクチャを同じコンソール画面から管理できます。

これは、VMware 製品によって早期に仮想化を導入した環境で、Hyper-V インフラストラクチャも簡単に、すべて同じ VMM 管理コンソール内で管理できることを意味します。図 4 に、Hyper-V と ESX のホストが接続された状態でコンソールがどのように表示されるかを示しています。図からわかるように、ホスト グループの表示では 2 つの異なるハイパーバイザーが区別されていません。VMM 内では、管理者は基になる仮想プラットフォームに関係なく操作を起動できます。

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図 4 Hyper-V および ESX サーバーを含む VMM ホスト グループの表示 (クリックすると拡大画像が表示されます)

マイクロソフト環境でのバーチャル マシン (VM) の展開には、Window Server 2008 オペレーティング システムにネイティブで用意されている Hyper-V ハイパーバイザーをインストールする必要があります。Windows Server 2008 のインスタンスに Hyper-V ロールがインストールされると、サーバーはリソースで許容される数だけの VM をホストできるようになります。

ネイティブの Windows フェールオーバー クラスタリングにより、混在環境に高可用性が付加されます。この機能は、クラスターに含まれるバーチャル サーバー用の別個の Hyper-V コンポーネントです。クラスタリングにより、問題発生時には、複数の Hyper-V ホストからの VM が代替ホストにフェールオーバーできます。. Windows フェールオーバー クラスタリングをいくつかの OS バージョンで使用した経験がない方は、今こそ導入のチャンスです。インストールと管理の向上により、クラスタリングは、環境内でいったん設定すれば後は忘れていてもよいような部分となっています。

Windows フェールオーバー クラスタリングも VMM も、Hyper-V の VM の管理に必須ではありません。ただし、特に Hyper-V ホストの数が増加した場合には、それらを使用することで管理が劇的に簡単になります。VMM により、Hyper-V ホストとそれらの VM を一体として管理でき、そのうちの 1 つに対してもすべてに対しても操作を同時に実行できます。VMM は実質的に、Configuration Manager と Operations Manager が個々のサーバー インスタンスに対して行うのと同じ種類の自動化を、仮想環境で実現します。

オレゴン州ローズバーグ市の IT マネージャーを務める Tim Clauson 氏は、別のソリューションの展開で苦労した挙句、最終的に失敗に終わったという経験の後、VMM の柔軟性に早くから目を付けたといいます。「現場で 2 週間が過ぎた後、別の仮想プラットフォーム ベンダーからの 2 人のコンサルタントは、まだ 1 つのバーチャル マシンも起動させていませんでした。私たちは結局、このベンダーによる作業を断り、Hyper-V と VMM を使用することにしました。そして私たちは、文字どおり 6 時間で、最初のバーチャル マシンを稼働できました。市のたった 2 人の IT 担当者の 1 人として、私はどの分野の専門家にもならず技術的なジェネラリストであることを求められています。VMM は理解しやすく、操作も簡単でした」と Clauson 氏は語っています。

VMM に組み込まれた物理-バーチャル (P2V) 機能は、たとえベータ版の段階でも、特に有用であったと Clauson 氏は言います。「私たちは P2V と VMM が欠陥なく機能することに満足し、このテクノロジの早期導入者になろうと考えました。そこで私たちは、VMM のベータ版の P2V 機能を使用して、実稼働用の Exchange 2007 サーバーを Hyper-V 上に仮想化しました。その最初の P2V は非常にうまくいったので、それ以降、メール サービスも Hyper-V 上で稼働させることにしたのです」と彼は付け加えています。

その最初のインストール以降、Clauson 氏は、市の SQL Server およびその他のサービスを Hyper-V および製品版の VMM インスタンスで仮想化することに成功しました。そして、もともと別の仮想化テクノロジに使うために割り当てていた資金が不要になったため、それらの資金を他の必要なプロジェクトに回すことができました。税収が落ち込み、市の予算も削られる中で、これは天の恵みであったと彼は言います。

エンタープライズ以外でのエンタープライズ バックアップ機能

まだ IT 組織にそれほど浸透していない 4 つ目の System Center ソリューションが、Data Protection Manager (DPM) です。重要な R2 リリースが最近発表されたばかりの、この比較的新しいソリューションは、IT 環境全体にわたってサーバーおよびデスクトップをバックアップするためのプラットフォームを提供します。DPM は、他のマイクロソフト製品や System Center 製品との統合、およびサーバー データをディスクやテープにバックアップできる柔軟性において、他のバックアップ ソリューションとは一線を画しています。

DPM がディスクからディスクへのバックアップに重点を置いていることは、ロボットのサポートによる大規模なテープ アレイがコスト的に利用できない、または必要とされないような、エンタープライズ以外の環境に対して特に有用です。ディスク ドライブのコストが日々劇的に低下している現状では、重要なサーバーをテープではなくディスクにバックアップすることには、個々のファイルやサーバー全体をディスク バックアップから直接すばやく復旧できることを含め、いくつかの独自の利点があります。

マイクロソフトやサードパーティ製のアプリケーション、たとえば、Exchange Server (図 5 を参照)、SQL Server、SharePoint Server などとの、連続的なデータ保護の統合により、DPM はデータを破損や削除からほぼリアルタイムで保護できます。IT マネージャーは、データ保護の短期的および長期的な目標を設定し、ニーズに応じて複数のデータ保護ターゲットを有効にできます。さらに、DPM は System Center ファミリのメンバーであるため、管理者はその動作を Operations Manager を通じてネイティブに監視できます。

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図 5 DPM による Exchange サーバー バックアップの短期的目標の設定 (クリックすると拡大画像が表示されます)

「DPM では、Exchange や SQL のトランザクション ログなどからキャプチャするデータのレベルについて常に最新の情報を保持しているため、何かの "細工" でもしない限り、データを失わせることは困難です。もしデータを失ったとしても、おそらくきわめてわずかな分量しか失うことはないでしょう」と語るのは、日常的にクライアントの DMP インストールを支援している、Accusource のコンサルタント James Conrad 氏です。

ディスクからディスクへのバックアップは迅速な復元に役立つように思えますが、ほとんどの組織では、データを何らかの形でオフサイトのストレージにアーカイブすることも必要です。これは通常、テープをオフサイト ストレージ設備に循環させることを意味します。DPM は、バックアップをディスクからディスクへ移動させ、後からテープ メディアに保存することで、このワークフローを変更します。

「パフォーマンス上の目的で、多くの人々が DPM を使用し、ディスクからディスク、そしてテープへのアーキテクチャを作成しています。それによって、バックアップ ディスクから直接データを取り出せるので、失ったファイルをディスク バックアップからすぐに復元できます」と Conrad 氏は言います。「その結果、該当するテープを見つけてロードするという労力が不要になります。データを長期保存用にオフサイトで格納する必要がある場合、DPM には、ディスクからテープへの部分を自動化して、他の目的のためにデータをテープに複製する手段が用意されています。この複数ホップのアプローチによって、厳密なテープ指向のソリューションで通常見られるようなパフォーマンスのボトルネックがなくなります」。

可視性と制御の活用

監視、構成制御、仮想プラットフォーム管理、およびバックアップ サポートを提供する、System Center の 4 つの主要なコンポーネントは、実際、ほとんどどのような IT 操作のニーズに対応できます。System Center に関する報道の多くが、大規模なエンタープライズ環境での使用に関連したものですが、この製品は、業界でかなり大きな割合を占める中規模企業に対しても適しています。自分の属する組織が、問題が発生してから対処し、ユーザーから苦情があって初めて問題に気づくような、事後対応型の IT 組織であると思われる方は、完全な可視性と完全な制御への道筋としてマイクロソフトの System Center ソリューションをご検討ください。

Greg Shields (MVP) は、Concentrated Technology の共同経営者です。何でも屋である IT プロフェッショナル向けのヒントとテクニックについては、ConcentratedTech.com を参照してください。