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IT キャリア開発: "ゲーム化" が IT にもたらす機会

ゲームのメタファーを用いて IT プロフェッショナルのキャリア開発について考えると、その地位を向上するための機会を最大限に活かすのに役立ちます。

Romi Mahajan

あらゆる主要なビジネス チャンスには、必ず人を引き付ける中心的なテーマや理念があります。このようなテーマから、専門用語が生まれ、それが一人歩きするようになり、企業家、投資家、および専門家のインスピレーションを刺激します。最近の例としては、Web 2.0、クラウド コンピューティング、位置情報サービス、マーケティング サービス、サービスとしてのソフトウェア (Software as a Service)、電子商取引などがありますが、他にも数多くのテーマがあります。

今ここに、それらすべてを上回る可能性を秘めた新しいテーマがあります。それは "ゲーム化" (Gameization) です。ゲーム化は、さまざまな種類のビジネスに共通するものなので、基本的なトレンドとなる可能性があります。ゲーム化は、成果だけでなく、プロセスにも関係します。このテーマを無視してもかまいませんが、その結果については、ご自分で責任を持ってください。

それでは、この概念はどのようなもので、なぜ重要なのでしょうか。また、IT プロフェッショナルの仕事にどのように適用できるのでしょうか。これを理解するために、ゲームの概念と構造を最も基本的なレベルで考えてみましょう。

ゲームは、広く普及し、幅広く楽しまれています。ゲームの競争的な側面に魅力を感じる人もいれば、うまくなろうと挑戦するのが楽しいと言う人もいます。多くの人にとって、ゲームは、"こまを進めて" 結果を得るという達成感を与えてくれるものです。結果は積み重なると、大きな成果を生みます。また、ゲームは本当の意味での存在意義とアイデンティティを与えてくれるものだと言う人もいます。つまり、ゲームは、楽しくて、快感が得られ、やりがいがあり、魅力的で、強い感情を引き起こすものだと見なせます。

"ゲームのメタファー" は、ビジネスやテクノロジへのアプローチとしては、見落とされ過小評価されることが往々にしてあります。ゲームとは具体的にどのようなものなのでしょうか。Jane McGonigal は、『Reality Is Broken』 (The Penguin Press HC、2011 年) という興味深い本で、一般的なゲームに備わっている 4 つの性質を定義しています。彼女の定義によれば、すべてのゲームには次の要素があります。

  • 目的
  • ルール
  • フィードバック システム
  • 自主的な参加

これらの要素を組み合わせた結果、何十億もの人を刺激し、熱中させ、やりがいを与えています。当然、ビジネスやテクノロジにとっても重要ないくつかの教訓があるに違いありません。

世界中の企業が、これまでに考えたことすらないやり方で、既存および将来の顧客とかかわろうとしています。"Facebook によるマーケティング" が行われるようになったのも、このトレンドの現れです。 企業は、社員やパートナーの創造的なエネルギーを引き出す方法を探しています。政府が、一部の決定に市民を参加させようとする動きは加速しています。教育機関までもが、参加という概念に対応するようにカリキュラムを見直しています。組織は今や、"成長する" ためには、すべての参加者とのかかわりや意義のある会話が不可欠だと理解しています。

参加者をプロセスに引き込む最良の方法は、すべてを "ゲーム化" することです。McGonigal が指摘するように、あらゆる種類の人がゲームに参加し、やりがいを見つけています。おもしろく刺激的な方法で、目的を追求し、その過程でフィードバックを得て、問題の解決策を探すことに夢中になっています。このような要素が、参加者が継続して引き込まれている要因となっています。

もたらされる機会

IT 組織には、実業界の階層における地位を向上させるための、いくつかの機会があります。そのような機会において、ゲーム化は、地位を向上するという目的を達成するための "隠し味" になるでしょう。

機会 1: 組織の他の部門に IT 部門の価値を効果的に伝える

私が一緒に仕事をした企業の 90 パーセント以上で、IT 部門は正しく理解されていませんでした。ほとんどの企業では、IT 部門はコストセンターか、非協力的なマニアの巣くつだと考えられています。IT 部門が必要とされるのは、問題が生じたときだけという場合も少なくありません。その結果、IT 部門は非難され、IT プロフェッショナルの評判は悪くなります。

この状況は、能動的な不満ではなく、無知とかかわりの欠如から生じたものです。IT 部門は社内ユーザーとかかわりを持って、社内ユーザーを "教育" し、同時に好かれる必要があります。その方法は、コミュニケーションとかかわりをゲーム化し、IT 部門に対して否定的な感情を持つ人をなくすことです。

機会 2: 社内ユーザーを引き込むプロセスと "成果" を作り出す

多くの場合、IT 部門が社内ユーザーに対して能動的に連絡するとき、支配、強制、および命令するような態度になります。これが、IT 部門に対する否定的な感情をあおり、IT 部門は "命令的で支配的である" という印象を与えます。

IT 部門が、より魅力的な形で "命令" を行えば、プロセスのこの部分は大幅に簡略化できます。社内ユーザーとかかわりを持ち、プロセスに引き込むことでふさわしい成果を導けます。いつものように、「X、Y、および Z を行わないと、シャットダウンされます」 と伝える電子メールを立て続けに送信するのではなく、これまでよりも早い段階でプロセスを開始し、楽しく、すばらしくて、"自発的" なものにします。この方法を採用すると、"命令" に対して、より完全な遵守を得られる場合があります。

機会 3: 他の人が自分で解決できるように手助けする

社内ユーザーが IT 部門に実際に連絡するときには、次の 2 つの事象がほぼ必然的に発生しています。1 つ目は、連絡をしている人が腹を立てていることで、2 つ目は会社が大きな損失を被っていることです。また、問題の解決策を自分でも見つけられるとわかっている場合に、IT 部門に連絡する人は、IT 部門に連絡するという特権を乱用しているようなものだと感じることがあります。

動的なセルフヘルプ システムは、企業、IT 部門、および社内ユーザーのすべてに恩恵をもたらします。しかし、セルフヘルプ システムが受話器を取るよりも、実際に簡単で魅力的な選択肢でない限り、人々は IT 部門に電話をかけるでしょう。IT スタッフの助けが過度に必要になる状態は、経費がかさみ、IT 部門が能動的ではなく受け身の姿勢になる一因となります。すべての IT 組織では、セルフヘルプ システムをゲーム化する必要があります。

機会 4: 革新にかける時間を増やし、応対にかける時間を減らす

2006 年にマイクロソフトが行った調査で、IT プロフェッショナルは、常に応対に追われ、問題を解決する態勢でいるため、能力開発と革新が彼らにとって一番重要なのにもかかわらず、わずかな時間しかかけられていないことが判明しました。

この記事で示した提案は、IT 部門の優先順位と仕事の態勢のバランスを取り戻し、IT プロフェッショナルが学習、成長、および能力開発に今よりも多くの時間をかけられるようにするのに役立ちます。ゲーム化の概念は、コミュニケーションから、製品設計や商取引に至るまで、多くの分野で急速に拡大しています。IT プロフェッショナルには、他に先んじるチャンスがあります。この機会を逃さないようにしましょう。

Romi Mahajan

Romi Mahajan は、KKM グループの代表取締役です。KKM に加わる前は、Ascentium Corporation のマーケティング最高責任者でした。Romi はテクノロジとメディア回路に関する著名な講演者で、さまざまな諮問機関の委員を務め、また、年間 12 個以上の業界イベントで講演を行っています。

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