Windows PE 2.0 for Windows Vista の概要

公開日: 2005年12月19日

Tony Northrup

Windows PE 2.0 は、Windows Vista 向けの中核となる展開基盤です。このツールは、新しい Windows Vista オペレーティング システムのカスタマイズされた大規模展開が大幅に容易になるようにデザインされています。Windows Vista の発売時に、Windows Vista を導入するすべての法人ユーザーは Windows PE 2.0 を入手できるようになります (Windows XP 向けの Windows PE は、引き続き Microsoft ソフトウェア アシュアランス (SA) を購入したユーザーのみが入手できます)。ユーザーは Windows PE により、システムの問題点の診断やトラブルシューティングだけでなく、ドライバの追加、オフラインでの Windows Vista の構成、および復旧手段の提供を行うことができるようになります。

Windows Vista のプレリリース プログラムに参加しているすべての法人ユーザーは、Windows Vista 向けに構築された Windows PE 2.0 のプレリリース版を 2006 年 2 月にダウンロードおよびテストできるようになります。

概要

Microsoft Windows プレインストール環境 (Windows PE) 2.0 には、Microsoft Windows Vista オペレーティング システムを準備およびインストールするための高性能なツールが用意されています。Windows PE を使用すると、Windows Vista のインストールおよびトラブルシューティングに必要な、ネットワークや他のリソースが提供された Windows Vista のサブセットを、ネットワークやリムーバブル メディアから起動できます。このドキュメントは、Windows PE およびその機能と、従来のプレインストール テクノロジからの改善点について紹介します。

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トピック

はじめにはじめに

Windows PE をインストールに使用Windows PE をインストールに使用

Windows PE をトラブルシューティングに使用Windows PE をトラブルシューティングに使用

Windows PE テクノロジWindows PE テクノロジ

Windows PE 2.0 と従来のテクノロジの比較Windows PE 2.0 と従来のテクノロジの比較

まとめまとめ

はじめに

Microsoft Windows プレインストール環境 (Windows PE) 2.0 は、Microsoft が提供する起動可能なツールであり、インストール、トラブルシューティング、および復旧のためのオペレーティング システム機能を備えています。Windows PE は汎用的なオペレーティング システムではありません。次の 3 つの特定の用途で使用するようにデザインされています。

  • Microsoft Windows Vista のインストール : Windows PE は Windows Vista をインストールするたびに実行されます。Windows PE 内部では、セットアップ フェーズのときに構成情報を収集するグラフィカル ツールが実行されます。また、情報技術 (IT) 部門が、それぞれの企業独自の展開ニーズに合わせて Windows PE をカスタマイズおよび拡張できます。
  • トラブルシューティング : Windows PE は、自動と手動のトラブルシューティングに役立ちます。たとえば、Windows Vista がシステム ファイルの破損により起動できない場合、Windows PE が自動的に開始して Windows Recovery Environment を起動します。また、手動で Windows PE を開始して、組み込み、カスタムを問わずトラブルシューティング ツールおよび診断ツールを使用することもできます。
  • 復旧 : 相手先ブランド供給 (OEM) および独立系ソフトウェア ベンダ (ISV) は、Windows Vista を実行するコンピュータを復旧および再構築するための、カスタマイズと自動化が行われたソリューションを Windows PE で構築できます。たとえば、Windows PE のリカバリ CD やリカバリ パーティションからコンピュータを起動して、自動的にハード ディスクをフォーマットし直し、オリジナルのドライバ、設定、アプリケーションを適用した Windows Vista を再インストールすることができます。

この資料は、IT プロフェッショナルを対象に、Windows PE のインストール機能およびトラブルシューティング機能について説明します。OEM および ISV が復旧を目的に Windows PE を使用する方法については説明しません。

最終的には、管理者が効率的に問題の領域を特定して修正するための標準的な方法論を確立することで、複雑なエラー ログの解析にかける時間を節約できます。この資料のツールとチェックリストの情報を参考にすることで、エラーが発生した接続の修正にかける時間を減らすことができます。また、Microsoft 製品サポート サービスに問い合わせる前に、自力で問題解決を図ることができます。

注 : Windows PE は Windows Vista の構成、インストール、およびトラブルシューティングを行うツールとしてデザインされているので、Windows Vista と別個で購入することはできません。

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Windows PE をインストールに使用

Microsoft は Windows PE を MS-DOS に代わるプレインストール環境としてデザインしました。Windows PE は Windows Vista コンポーネントから構築されているので、堅牢で柔軟性があり、使い慣れた環境で作業できます。Windows PE は、さまざまな Windows Vista アプリケーションの実行、最新ハードウェアの検出と有効化、およびインターネット プロトコル (IP) ネットワーク内での通信などが可能です。Windows PE で使用されるディスク領域は通常 100 MB 未満、すべてランダム アクセス メモリ (RAM) から実行できるだけでなく、ドライバやソフトウェアが収録された別の CD を挿入することもできます。したがって、フォーマット済みのハード ディスクやインストール済みのオペレーティング システムがないコンピュータでも Windows PE を実行できます。ただし、Windows PE は、Windows Vista のようにすべての機能を搭載したオペレーティング システムではありません。

Windows Vista インストールのカスタマイズ

しかし、IT 部門が展開を自動化するスクリプトやアプリケーションを作成できるので、Windows PE は企業に適しています。たとえば以下のプロセスに従い、Windows Deployment Services リモート展開インフラストラクチャの構成、構成スクリプトの作成、およびカスタム Windows PE イメージの構築を行って、展開プロセスを高度に自動化できます。

  1. 新しいコンピュータをネットワークに接続すると、組み込みの PXE (Pre-boot eXecution Environment) クライアントが Windows Deployment Service サーバーに接続し、カスタマイズ済み Windows PE イメージをネットワークからダウンロードします。
  2. Windows PE が新しいコンピュータのメモリに読み込まれ、構成スクリプトが起動します。コンピュータの構成が、IT 部門のハードウェア要件を満たしているか、検証されます。
    注 : Windows Deployment Server (Windows DS) はリモート インストール サービス (RIS) に代わる機能です。
  3. 必要であれば、別のコンピュータの共有フォルダにユーザーのデータがバックアップされます。
  4. Diskpart ツールが実行され、ディスクのパーティション分割とフォーマットを行います。
  5. Windows Vista のセットアップ ファイルが格納された共有フォルダに接続し、Windows Vista のセットアップ プログラムが実行されます。オペレーティング システムは完全に無人でインストールされます。

Windows PE および Windows Imaging Format

Windows PE を配布する最も有効で柔軟性のある方法は、WIM (Windows Imaging Format) ファイルに埋め込むことです。WIM は、Windows Vista で採用されている、新しいコンピュータへのインストールを短縮するためのファイル ベースのイメージ形式です。WIM ファイルには、Windows Vista、Windows PE など、1 つ以上のオペレーティング システムのコピー (これを "イメージ" といいます) が保存されます。オペレーティング システムを起動することなく、ドライバ、更新プログラム、および Windows コンポーネントをオフラインで追加および削除できるので、WIM ファイル内のオペレーティング システムは容易にメンテナンスできます。WIM ファイル内の Windows PE イメージは、Windows Vista イメージとほぼ同様にメンテナンスできます。

Windows Vista と同様に Windows PE は WIM ファイルに保存できます。WIM ファイルに Windows Vista イメージを保存した場合、Windows Vista を起動するにはイメージをコンピュータのハード ディスクにするしか方法がありませんが、Windows PE はハード ディスクにコピーすることなく、WIM ファイルから直接起動できます。したがって、WIM ファイルを作成して CD や USB フラッシュ ドライブなどの起動可能メディアに保存しておき、そのメディアから直接 Windows PE を起動できます。Microsoft は Windows Vista を新しいコンピュータにインストールする際、この機能を使用し、Windows PE を RAM に読み込んで起動します。

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Windows PE をトラブルシューティングに使用

Windows PE の第一の用途は Windows Vista のインストールですが、トラブルシューティングにも使用できます。トラブルシューティング作業の例を次に示します。

システム ファイルの置き換え : 破損したファイルを元のインストール メディアのファイルと置き換えることができます。たとえば、破損したシステム ファイルが原因でコンピュータを起動できない場合、Windows PE を使用してコンピュータを起動し、破損したファイルを Windows Vista メディアのものと置き換えることができます。

Windows 再インストール前のデータの復旧 : Windows PE は FAT と NTFS の両ファイル システムに完全にアクセスできます。ハード ディスクの交換または再フォーマットが必要な場合、まず Windows PE でコンピュータを起動してから重要なファイルを別のディスクや共有フォルダにコピーできます。なお、暗号化ファイル システム (EFS) で暗号化したファイルは、簡単には復旧できません。

診断ツールおよび構成ツールの実行 : Windows PE には、一般的なコマンドライン診断ツールが搭載されています。それ以外の標準およびカスタムの Windows トラブルシューティング ツールも Windows PE 内から実行できます。組み込まれているツールを次に示します。

  • Diskpart: Diskpart はテキスト モードのコマンド インタープリタであり、コマンド プロンプトやスクリプトからディスク、パーティション、またはボリュームを管理できます。
  • Drvload: drvload コマンドは、オーディオ、ビデオ、マザーボード チップセットなどのデバイス ドライバを Windows PE イメージに追加するために使用します。drvload を使用すると、Windows PE の起動後にドライバを動的に読み込むことができます。
  • Net: Net コマンドライン ツールは、ローカル ユーザー データベースの管理、サービスの開始と終了、および共有フォルダへの接続に使用できます。
  • Netcfg: このネットワーク構成ツールで、ネットワーク アクセスを構成します。Windows PE をカスタム展開ツールとして使用する場合、ネットワーク設定をスタートアップ スクリプトの一部として手動で構成するために Netcfg を使用できます。

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Windows PE テクノロジ

Windows PE の用途をできる限り広げるため、Microsoft は軽量、高性能、柔軟になるようデザインを行いました。ここからは、それらの特徴の詳細と、Windows PE の制限事項について説明します。

軽量

Windows PE は、CD、USB フラッシュ ドライブなどのリムーバブル メディアに保存し、高速に起動し、コンピュータのメモリ上にすべて読み込むことができるよう、できる限りサイズを小さくする必要があります。Windows PE の正確なサイズは、イメージをどのようにカスタマイズしているかにより異なりますが、WIM ファイルに圧縮すれば通常は 100 MB 以上消費することはありません。64 ビット版の Windows PE はそれよりもサイズが大きく、言語パックやアプリケーションを追加して Windows PE イメージをカスタマイズすると、サイズは増加します。

メモリを極力使用しないようにするため、Windows PE は圧縮したイメージから実行できます。つまり、WIM ファイルに Windows PE を圧縮しておき、展開せずにメモリから実行できます。したがって、圧縮の利点は、イメージをディスクに保存するときも、コンピュータのメモリに読み込んだ後にも、得られます。

ディスクの保存領域を最小限にするため、WIM 形式では重複するファイルのインスタンスが 1 つしか保存されません。したがって、2 つの Windows PE イメージが含まれた WIM ファイルがある場合、2 つのイメージが共有しているファイルは 1 つのみ保存されます。

高性能

Windows PE はサイズを小さくデザインしてありますが、Windows Vista の中核的な機能の多くが含まれています。Windows PE は (Microsoft Windows XP や Windows Vista と同様) Win32 をサポートしているので、大半の Windows アプリケーションは Windows PE 上で実行できます。したがって、IT 部門の開発者は Microsoft Visual Studio などのツールを使用して、Windows PE で実行する Win32 アプリケーションを作成できます。

また、マルチスレッドとマルチタスクもサポートしているので、複数のツールを同時に実行できます。その結果、ハードウェアとソフトウェア イメージの検証およびテストに必要な時間とリソースを節約できます。Windows PE では、バッチ ファイル、Microsoft VBScript (Visual Basic Scripting Edition) スクリプト、WSH (Windows Script Host) スクリプト (オプションの WSH コンポーネントをインストールしてある場合)、HTML アプリケーション (HTA)、Microsoft ADO (ActiveX Data Objects) を実行できます。Windows PE によって RAM ベースの一時領域が提供されるので、ハード ディスクを利用できない場合でも、一時ファイルをハード ディスクに書き込む必要があるアプリケーションを実行できます。

ディスクの保存領域を最小限にするため、WIM 形式では重複するファイルのインスタンスが 1 つしか保存されません。したがって、2 つの Windows PE イメージが含まれた WIM ファイルがある場合、2 つのイメージが共有しているファイルは 1 つのみ保存されます。

注 : ゲームなど、Windows PE のデザインの意図と合わない一部のアプリケーションは実行できません。また、現時点では Microsoft .NET Framework もサポートしていません。

柔軟性

Windows PE には大半の Windows Vista ドライバが収録されています。お使いのコンピュータ ハードウェアのドライバが Windows Vista に収録されている場合、そのハードウェアは Windows PE でも高い確率で機能します。また、Windows PE イメージに新しいドライバを追加できます。エンタープライズ環境では、1 つの Windows PE イメージに組織のすべてのコンピュータで必要なすべてのドライバを追加して、どのコンピュータにもそのイメージを適用できるようにすることが可能です。

特殊なハードウェアを搭載したコンピュータについては、Windows PE を起動した後でドライバをインストールして、コンピュータを再起動することなくすぐにハードウェアを使用できます。たとえば、Windows PE を起動してから、適切なネットワーク ドライバが含まれていないことが判明した場合、ネットワークに接続するために、必要とされるドライバが収録された CD を挿入し、Drvload コマンドライン ツールでドライバを追加できます。このようなことが可能な理由は、後で説明するように、コンピュータの RAM から Windows PE を直接実行できるためです。

Windows PE には組み込みの機能が多数搭載されていますが、多くのツールと機能をオプションとして扱い、Windows PE をできる限り軽量に保っています。たとえば、標準の Windows PE イメージには WSH は含まれません。しかし、スクリプトを実行する必要がある場合、WSH コンポーネントを簡単に追加できます。同様に、カスタマイズした Windows PE イメージに Tracert やカスタムのトラブルシューティング ツールを追加できます。同じオフラインのイメージ編集ツールを使用して、Windows PE を最新の状態にするための更新プログラムや Service Pack をインストールできます。

Windows XP、Windows Vista など、大半のオペレーティング システムはハード ディスクから実行する必要があります。Windows PE は、各種起動可能メディアまたはネットワークから (WDS を使用するなどして) 起動できます。また、X86、X64、および IA64 アーキテクチャをサポートするので、組織のすべてのコンピュータでプレインストールおよびトラブルシューティングの環境を揃えることができます。Windows PE は IPv4 ネットワーク (大半の組織およびインターネットで使用されています) と IPv6 ネットワークの両方に接続できます。Windows PE のスタートアップ設定を変更するには、テキストベースの Unattend.xml ファイルを編集します。

Windows PE はハード ディスクまたはリムーバブル メディアから直接実行できますが、メモリから直接実行することもできます。メモリから Windows PE を実行する場合、最初に Windows PE のブート ローダーによってメモリ上に仮想 RAM ディスクが作成されます。次に、圧縮されている Windows PE が RAM ディスクにコピーされます。最後に、RAM ディスクをディスク ドライブと見なしてマウントし、Windows PE を起動します。Windows PE を RAM から読み込むと、Windows PE が起動した後に Windows PE メディアを取り出せる点で柔軟性が高まります。その場合、Windows PE を CD から読み込んだ後、ツールやドライバが収録された別の CD に入れ替えることができます。Windows PE をメモリから実行すると、CD などの読み取り専用メディアでは不可能な、仮想 RAM ディスクへの一時ファイルの書き込みがサポートされます。

Windows PE の制限事項

Windows PE はできる限り軽量、高性能、柔軟なデザインになっているので、次の制限事項があります。

  • コンピュータには最低 256 MB の RAM を搭載する必要があります。
  • Windows PE はフロッピー ディスクには収まりませんが、起動可能な CD に Windows PE イメージを書き込むことができます。
  • VESA (Video Electronics Standards Association) 互換のディスプレイ デバイスが必要です。これを使用することで、サポートされていると判断した最大の解像度で表示されます。ビデオ設定を検出できない場合、640 × 480 ピクセルの解像度が使用されます。
  • Windows PE は、スタンドアロンの分散ファイル システム (DFS) ルートへの DFS 名前解決のみをサポートします。
  • Windows PE を実行しているコンピュータのファイルおよびフォルダに、別のコンピュータからはアクセスできません。つまり、Windows PE 内部では Server サービスを利用できません。
  • Windows PE は IPv4 および IPv6 をサポートしますが、IPX/SPX (Internetwork Packet Exchange/Sequenced Packet Exchange) など、他のプロトコルはサポートしません。
  • セッション間でドライブ文字の割り当てが保存されません。Windows PE を再起動すると、ドライブ文字は既定の順序で割り当てられます。
  • WOW (Windows on Windows) がサポートされないので、16 ビット アプリケーションを 32 ビット版の Windows PE で実行したり、32 ビット アプリケーションを 64 ビット版の Windows PE で実行したりすることはできません。
  • 汎用的なオペレーティング システムとして使用されることを防ぐため、最初のブートストラップから 24 時間後に Windows PE が自動的に再起動します。

また、Windows PE には I/O (ディスクおよびネットワーク) と中核的な Win32 の API を含む、Windows Vista Win32 アプリケーション プログラミング インターフェィス (API) のサブセットのみが含まれています。アクセス制御、NetShow Theater 管理、OpenGL、電源オプション、印刷と印刷スプーラ、静止画像、テープ バックアップ、ターミナル サービス、ユーザー プロファイル、Windows ステーションとデスクトップ、Windows マルチメディア、Windows シェルのうち、いずれかの Win32 API を必要とするアプリケーションは Windows PE で実行できません。

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Windows PE 2.0 と従来のテクノロジの比較

展開またはトラブルシューティングのツールとして、これまで MS-DOS または旧バージョンの Windows PE を使用したことがある方は、Windows PE 2.0 でそれらのテクノロジにどのような改善が見られるのかに関心があると思います。ここでは、MS-DOS または旧バージョンの Windows PE から、どのような点が改善されたのかについて説明します。

MS-DOS ブート ディスクと Windows PE 2.0 の比較

以下の作業を行うとき、MS-DOS 起動可能ディスクの代わりに Windows PE を使用すると、短時間でストレスなく作業を完了できます。

  • NTFS ファイル システムのパーティションを含めたディスク パーティションの作成とフォーマットを行う : Windows PE では、サード パーティのユーティリティを使用することなく、NTFS ファイル システムでディスクをフォーマットできます。また、Windows PE のファイル システム ユーティリティはスクリプトとして記述できるので、パーティションの分割とフォーマットを完全に自動化できます。
  • トラブルシューティング ツールの実行とオペレーティング システムのインストールを行うため、ネットワーク共有にアクセスする : Windows PE には、Windows Vista 同様のネットワーク クライアント機能があります。Windows PE には Windows Vista に付属するものと同一のネットワーク ドライバが用意されているので、短時間で簡単にネットワークにアクセスできます。MS-DOS 起動可能ディスクをカスタマイズしてネットワーク共有にアクセスするのは、決まって時間がかかる無味乾燥な作業でした。
  • Windows Vista ドライバを使用するオーディオ、ビデオ、マザーボード チップセット、バッテリなどのデバイスの、32 ビット版と 64 ビット版のデバイス ドライバを読み込んでアクセスする : Windows PE は、Windows の大容量記憶装置、ネットワーク、オーディオ、ビデオなどのドライバを読み込むことができます。MS-DOS の場合、16 ビット版のドライバを探して MS-DOS 起動可能ディスクをカスタマイズし、ネットワーク アダプタを別のディスクで管理する必要がありました。
  • タスクを自動化する : Windows PE のスクリプト機能は、MS-DOS 起動可能ディスクの機能をはるかにしのいでいます。たとえば Windows PE では、MS-DOS バッチ ファイルよりも使いやすく高性能なスクリプト言語 VBScript を使用します。Windows PE では、数 GB のメモリを搭載したシステムから実行できるだけでなく、保護モードの伝送制御プロトコル/インターネット プロトコル (TCP/IP) スタックを使用したネットワーク通信をサポートします。スタートアップ スクリプトやアプリケーションは、テキストベースの拡張マークアップ言語 (XML) ファイルを編集して簡単に追加できます。既に MS-DOS 用にスクリプトを作成してある場合、高い確率で Windows PE でも使用できます。また、既存の MS-DOS ベースのスクリプトを簡単に Windows PE に移植できます。
  • Win32 アプリケーションを実行する : プレインストールおよびトラブルシューティング用のオペレーティング システムとして MS-DOS を使用する短所は、MS-DOS 専用に記述されたアプリケーションしか実行できないことです。Windows PE は主要な Microsoft Win32 API のほとんどをサポートしているので、グラフィカルなものとコンソール ベースの大半の Windows アプリケーションを実行できます。また、マルチスレッドとマルチタスクをサポートしているので、複数のツールを同時に実行できます。

従来のバージョンの Windows PE と Windows PE 2.0 の比較

多くの Microsoft ユーザーにとって、Windows PE 2.0 は初めてユーザーの環境に導入されるバージョンになります。しかし、Windows PE 1.0 を使用した方は、Windows PE 2.0 での改善点に関心があると思います。ここでは既存の Windows PE ユーザーを対象に、Windows PE 1.0 からの主な改善点について説明します。

まず、旧バージョンの Windows PE は Windows XP または Microsoft Windows Server 2003 に基づいていますが、Windows PE 2.0 は Windows Vista のコンポーネントに基づいています。したがって、Windows PE 2.0 は Windows Vista ドライバをサポートする以外にも、ネットワーク攻撃を Windows ファイアウォールで保護する機能の強化など、Windows Vista で強化された機能の多くを利用できます。既に説明したとおり、Windows PE 2.0 はドライバの追加をサポートしているので、Windows PE の起動前にも後にもドライバを読み込むことができます。Windows PE を起動してから必要なドライバが足りないと判明した場合、標準でないドライバをリムーバブル メディアから読み込んで、再起動することなくすぐにハードウェアを使用できます。

特にプレインストール スクリプトを作成するときの柔軟性を高めるため、Windows PE 2.0 は WMI (Windows Management Instrumentation) をサポートしています。WMI を使用すると、スクリプトまたはコマンド プロンプトで、構成と管理の作業の大半を実行できます。WMI の詳細については、https://msdn.microsoft.com/en-us/library/aa286547.aspx (英語) を参照してください。

Windows PE 1.0 は CD などの書き込み不可能なメディアから起動することが多かったので、一時的な保存領域が必要なアプリケーションの多くを実行できませんでした。Windows PE 2.0 は、コンピュータの RAM に 32 MB のスクラッチ領域を確保することで、一時ファイルを書き込む必要があるアプリケーションの大半をサポートするようになりました。一時ファイルを書き込もうとするたびに、どのフォルダかにかかわらず、変更がメモリ上のスクラッチ領域にリダイレクトされ、ハード ディスクが存在するかのように見せかけます。当然のことですが、コンピュータを再起動するとすべての変更が失われます。

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まとめ

Windows PE は Windows Vista のコンポーネントを基にした起動可能ツールです。汎用的なオペレーティング システムである Windows Vista とは異なり、Windows Vista のインストール、トラブルシューティング、および復旧に使用することに特化してデザインされています。すべての Windows Vista インストールには Windows PE が使用されますが、平均的なユーザーは Windows PE の存在に気付くことはありません。

しかし、IT 部門は Windows Vista をカスタマイズおよび拡張して、展開とトラブルシューティングを効率化できます。展開シナリオでは、IT 部門の特定のニーズに合わせてカスタム コンポーネント、ドライバ、および言語を Windows PE に追加できます。また、Windows Vista の展開およびアップグレードのプロセスをカスタマイズおよび自動化するため、構成とインストールの作業を自動化できます。

トラブルシューティングのシナリオでは、Windows Vista を正常に起動できない場合のトラブルシューティングに、MS-DOS 起動ディスクではなく Windows PE を使用します。Windows PE は Windows Vista を起動できない場合、自動的に Windows Recovery Environment を読み込んで起動します。Windows PE は手動のトラブルシューティングにも使用できます。組み込みのツールを活用することも、Windows PE イメージにツールを追加することも可能です。

Windows Vista によって IT インフラストラクチャの効率と信頼性を高める上で、Windows PE には重要な意味があります。Microsoft は、プレインストールの構成とトラブルシューティングのための軽量、高性能で柔軟性のある専用ツールを提供するという目標を掲げ、Windows PE を準備しています。

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