~大規模移行~
Point 5: Windows XP に依存したアプリケーションの移行

更新日: 2011 年 10 月 19 日

Windows 7 と互換性のないアプリケーションを Windows 7 から利用可能にする最後の切り札が、OS の仮想化技術を利用する方法です。具体的には、ソフトウェア的に構築した仮想環境 (仮想マシン) 上に Windows XP をインストールし、この上でアプリケーションを実行します。この場合、アプリケーションは Windows XP 上で実行されることになるので、従来と高い互換性が実現されます。業務上必要な Web アプリケーションが、既存の Internet Explorer 6 (以下、IE 6) に依存している場合も、仮想技術を使って、必要なときだけ IE 6 を実行するなども可能です。

仮想環境を利用した非互換アプリケーションの実行方法には、以下の 3 種類があります。

図 1

まずは、仮想マシン (.vhdファイル) をクライアント PC 側で実行するのか、サーバー側で実行するのかで方法が分かれます。Windows XP Mode と MED-V は前者、VDI は後者になります。仮想マシンをクライアント側で実行する場合にはオフラインでの実行が可能です。一方、サーバー側で実行する場合は、オンラインでの利用が前提になります。

仮想環境を管理できる MED-V

Windows XP Mode は、仮想化技術によって Windows 7 上に仮想的な Windows XP の環境を構築し、その内部で Windows XP に依存したアプリケーションを実行できるようにする機能です。

関連リンクWindows XP Mode とは

非互換アプリケーションを Windows 7 で実行するという目的は達成できますが、Windows XP Mode の問題点は、仮想環境を中央から管理できないことです。エンタープライズ環境では、ネットワーク内のすべての PC を中央で管理する必要がありますが、Windows XP Mode を使うと、ネットワーク内に管理が困難な PC 環境 (Windows XP Mode による仮想環境) が存在することになってしまいます。高度なコンプライアンスが求められるエンタープライズ環境では、このような状態は許されません。

こうした Windows XP Mode の問題を解決し、仮想環境もすべてサーバー側で集中管理できるようにするのが Microsoft Enterprise Desktop Virtualization (MED-V) です。MED-V では、OS (Windows XP) や業務アプリケーション、IE 6 など、カスタマイズされた仮想イメージを用意して、このイメージを通常のアプリケーションと同様にクライアント PC に配布して展開します。仮想イメージは、複数のユーザーで同じイメージを使えます。ユーザーの数だけイメージを用意する必要はありません。展開時に割り当てられる仮想マシンのコンピュータ名は、管理者が制御できます。これ以外にも MED-V では、管理者による仮想マシン上のアプリケーションの制御や、クライアント PC に接続されたプリンターを仮想マシン上のアプリケーションから利用可能にするなども可能です。

図 2

MED-V で IE 6 実行用の仮想イメージを用意しておけば、新しい Internet Explorer 8/9 (以下、IE 8/9) と互換のない Web アプリケーションを Windows 7 から利用できるようになります。具体的には、IE 6 で利用する Web アプリケーションを特定し、そのための仮想イメージを用意しておきます。管理者は、Active Directory のグループ ポリシーで設定することで、この特定 Web アプリケーションについては自動的に仮想イメージの IE 6 で表示するように指定できます。

Windows Server 2003 R2 のターミナル サービスを利用した IE 6 の利用

やや例外的な対処方法ではありますが、ネットワーク内に Windows Server 2003 R2 が存在し、ターミナル サービスを利用できるなら、これを利用して クライアント PC から IE 6 をサーバー側で実行して使うこともできます。具体的には、Windows Server 2003 R2 側でターミナル サービス ホストを設定し、IE 6 を実行するユーザー、IE 6 の自動起動、IE 6 が起動されたときに自動で表示される Web サイトなどを指定します。次にそのターミナル サービスに接続するためのリモート デスクトップ ファイル (.rdp ファイル) を作成し、クライアント PC に展開します。クライアント PC 側でこの .rdp ファイルを実行すると、Windows Server 2003 R2 のターミナル サービスに接続し、サーバー側で IE 6 が起動され、対象の Web サイトが表示されます。こうして Windows 7 クライアント PC から、IE 6 依存の Web サイトを利用できるようになります。

サーバー側での管理性をさらに高める VDI

Windows XP Mode と MED-V では、仮想イメージをクライアント PC 側で実行するのに対し、仮想イメージの実行をサーバー側で行い、クライアント PC からはこの仮想環境にリモート デスクトップで接続して使用するのが Virtual Desktop Infrastructure (VDI) です。VDI では、サーバーのプロセッサ機能を生かした Hyper-V テクノロジを利用して効率よく仮想環境を実行できます。

図 3

このように VDI では、仮想イメージがサーバー側で実行されるため、サーバーでの管理性をさらに高められます。クライアント PC 向けの仮想マシンの展開モデルとしては、一般的に次の 2 種類を選択できます。

■ 個人用デスクトップ モデル

個人用デスクトップ モデルは、各ユーザーが利用するクライアント PC 環境の仮想マシンをユーザー分用意し、OS 環境に加え各ユーザー データや各種設定、アプリケーションなどをイメージに組み込みます。ユーザーが 100 人いれば、100 個の仮想マシン イメージが必要になります。この展開モデルでは、各仮想マシン イメージをサーバーに保存するための領域は増えますが、仮想環境を実行する際のオーバーヘッドは小さいという特徴があります。

■ デスクトッププール モデル

デスクトッププール モデルでは、当初から各ユーザー向けの仮想マシンを用意しておくのではなく、予めいくつかの仮想環境を用意し、プールを割り当てておけば、ユーザーがログオンした時点で、空いている環境を割り当てることができます。ユーザーがログオフした時点で仮想環境を初期状態に戻すことも可能です。このようにデスクトッププール モデルでは、ユーザーの数だけ仮想マシン イメージを作成する必要がないため、イメージ数を削減できます。ただし、仮想マシンが実行時に割り当てられるため、プールに含まれる仮想環境の数よりもログインしているユーザーが多くなった場合にアクセスが出来なくなる可能性があります。

<関連リンク>

  • Virtual Desktop Infrastructure Suite
  • Windows Server 2008 R2 機能評価ガイド仮想デスクトップ インフラストラクチャ (VDI) (PDF ファイル、3.17 MB)(もはや利用できます)

ページのトップへ