別のサーバーまたはストレージ グループへの Exchange メールボックス データベースの移動

 

MicrosoftR Exchange Server メールボックス データベースは、同じバージョンの Exchange を実行しているサーバー間および同じ管理グループ内のサーバー間で移動できます。管理グループ内のあるサーバー上に作成したメールボックス データベースは、名前の変更が可能で、また、同じサーバー上の異なるストレージ グループまたは同じ管理グループ内の異なるサーバーにコピーすることができます。名前の変更またはコピーを行った後は、ユーザー アカウントとメールボックス間のリンクを再構成する必要があります。

通常の管理タスクを行うために、メールボックス データベース全体を移動するのは良い方法ではありません。メールボックスの移動タスクを使用して、メールボックスを別のデータベースに転送することをお勧めします。

メールボックスの移動タスクはデータベースのダウンタイムなしで実行できるため、エンド ユーザーへのサービスの中断を最小限に抑えることができます。メールボックスの移動を行っている間も、すべてのエンド ユーザーが、現在移動中のメールボックス以外のメールにフル アクセスできます。メールボックスの移動処理の詳細については、マイクロソフト サポート技術情報の文書番号 821829「Exchange Server 2003 でのメールボックスの移動」を参照してください。

従来のメールボックスの移動処理に加え、サーバー間またはストレージ グループ間でもメールボックス データベース全体を移動できます。メールボックス データベースを移動したら、エンド ユーザーがメールボックスにアクセスできるようにする前に、データベース内の各メールボックスから Active DirectoryR ディレクトリ サービス ユーザー アカウントへのリンクを再構成する必要があります。メールボックスからユーザー アカウントへのリンクの再構成の詳細については、「Active Directory 属性を使用したメールボックスの有効化、無効化、およびホーム サーバーの変更」および「Exchange メールボックス アカウントのホーム サーバーを変更する方法」を参照してください。

システム アテンダント メールボックスをホストするメールボックス データベースに対しては、特別の制限も適用されます。システム アテンダント メールボックスの詳細については、「Exchange メールボックス データベースを移動する際のシステム アテンダント メールボックスの問題」を参照してください。

パブリック フォルダ データベースの作成とレプリケーション

ここでは、メールボックス データベースの移動についてのみ説明します。Exchange を実行しているサーバー間では、パブリック フォルダ データベースを移動できません。マイクロソフトでは、同じ Active Directory フォレスト内にある Exchange サーバー間でのパブリック フォルダ データベースの移動をサポートしていません。パブリック フォルダ データベースは相互にレプリケーションを行うため、データベースを別のサーバーに移動するとレプリケーションが中断する可能性があります。サーバー間でパブリック フォルダ データベースを移動する代わりに、別のサーバー上に新しいパブリック フォルダ データベースを作成し、そのデータベースにフォルダをレプリケートすることをお勧めします。

Caution注意 :
テスト用またはデータ復旧用のラボ サーバーにパブリック フォルダ データベースを移動する場合は、決して運用環境の Exchange フォレスト (元のサーバーも例外ではありません) にそのデータベースを戻さないでください。異なる Exchange 組織でパブリック フォルダ データベースを実行すると、データベースにその組織のシステム フォルダの情報が取得されます。元の組織に戻したときに、このデータベース内のフォルダと元の組織のシステム フォルダの間に競合が発生する可能性があります。この競合によって元のシステム フォルダが破損し、それらをリセットする必要が生じる場合があります。そうなると、予定表の空き時間情報および組織全体のオフライン アドレス帳をリセットし、再構築する必要があります。

サーバー間でのパブリック フォルダの内容のレプリケーションに関する詳細については、次のサポート技術情報の文書を参照してください。

障害回復とメールボックス データベースの移植性

Exchange が備えるメールボックス データベースの移植機能は、サイトを復元する障害回復計画の設計においても役立つ場合があります。サイト復元シナリオは基本的に、Exchange を実行しているサーバー全体や場合によってはある地理的な場所全体が、長期にわたってオフラインになった場合を想定しています。このため、Exchange リソースを新しいハードウェアおよび新しい場所に移動する必要があります。

ベスト プラクティスとして、障害時にメールボックスのホーム サーバーの変更を避ける計画を設計することをお勧めします。可能な場合は、元の Exchange のインストール構成が保持されている新しい物理システムにデータベースを復元またはコピーしてください。

メールボックスのホーム サーバーの変更が不要な障害回復またはサイト復元計画を立てる方法の詳細については、「運用環境の Exchange 2003 クラスタから Exchange 2003 のスタンバイ クラスタにすべての Exchange 仮想サーバーを移動する方法」を参照してください。

クラスタ化されていない Exchange サーバーについては、サポート技術情報の文書番号 822945「Exchange 2003 を同じサーバー名のまま新規のハードウェアに移動する方法」を参照してください。この文書では、/DisasterRecovery セットアップ モードを使用して、現在の Exchange のインストール構成を保持したまま Exchange のインストールを新しいハードウェアに移動する方法について説明しています。

サーバー間の Exchange メールボックス データベースの移動

Exchange メールボックス データベースを作成すると、そのデータベースにはそれが特定の Exchange 組織および管理グループのメンバであることを示す名前情報が書き込まれます。このデータベースは、同じ組織名および同じ管理グループ名でインストールされた Exchange を実行しているサーバー上にのみマウントできます。

ただし、Exchange メールボックス データベースは、それが作成されたサーバーまたはストレージ グループに結び付けられているわけではありません。同じ組織名および同じ管理グループ名を共有し、メジャー バージョンと Service Pack バージョンが同じ Exchange サーバーか、またはそれ以降のバージョン (元のサーバーと互換性のあるもの) の Exchange サーバーに転送することができます。

note注 :
オンライン バックアップを使用して別の場所にデータベースを移動する場合は、元のサーバーと同じストレージ グループ名および論理データベース名で移動先サーバーを構成する必要があります。これは、データベースそのものの要件ではなく、バックアップ API の要件です。この要件については、後に記載する方法 1 で詳細に説明します。

ただし、バージョンがより新しいサーバーにデータベースをマウントすると、古いバージョンのサーバーにデータベースを戻すことはできなくなります。したがって、データベースを移動する場合は、サーバーのバージョンと修正プログラムのレベルをまったく同じにするか、または一方向の操作として移動を処理する必要があります。Exchange 2000 Service Pack 3 のデータベースは、元のサーバーとバージョン レベルが等しいか、またはそれ以降の Exchange 2000 Server または Exchange Server 2003 を実行する任意のサーバーにマウントできます。

Exchange システム マネージャで確認できるように、Exchange 2000 Server または Exchange Server 2003 の各メールボックス データベースは、特定のサーバー上のストレージ グループ内でホストされます。このデータベースは Active Directory データベース オブジェクトに対応する論理名を持ち、データベース ファイル (.edb ファイル) と付属のストリーミング データベース ファイル (.stm ファイル) の 2 つの物理ファイルで構成されます。これらのファイルへのパスとファイル名は、各データベース オブジェクトの [データベース] プロパティ ページで参照できます。

Exchange データベースを別のストレージ グループまたはサーバーに移動する方法は 3 種類あります。

  • **別のサーバーへの復元場所のリダイレクトによる、Exchange 対応のオンライン ストリーミング バックアップからのデータベースの復元   **この方法が機能するには、元のサーバーと同じ名前のストレージ グループおよび論理データベースで、新しいサーバーを構成する必要があります。
    たとえば、サーバー A 上のストレージ グループ "Server-A-SG1" に論理名 "Mailbox Store (Server A)" でデータベースのオンライン バックアップを作成します。次に、サーバー B 上に "Server-A-SG1" という名前のストレージ グループを作成し、そのストレージ グループ内に "Mailbox Store (Server A)" という名前のデータベースを作成します。
    復元場所をサーバー B に変更し、サーバー B 上の一致するストレージ グループ名および論理データベース名にバックアップを復元することにより、オンライン バックアップを復元します。
  • **Exchange 対応のオンライン ボリューム シャドウ コピー サービス (VSS) バックアップからのデータベースの復元   **元の場所と異なる場所へのデータベース ファイルの復元に関してベンダが設定した機能と制限に応じて、復元方法が異なります。具体的な方法については、バックアップ ベンダに問い合わせてください。
  • **現在のパスの場所から別の論理データベース、ストレージ グループ、またはサーバーのパスの場所への Exchange データベース ファイルのコピー   **この方法を使用する場合、論理的なストレージ グループ名およびデータベース名を一致させる必要はありませんが、データベース ファイル名はコピー先に定義されている名前と一致させる必要があります。一致させるために、必要に応じてデータベース ファイルの名前を変更することができます。
    たとえば、"Priv1.edb" および "Priv1.stm" という名前のデータベース ファイルが、サーバー A 上のストレージ グループ "Server-A-SG1" 内にある論理データベース "Mailbox Store (Server A)" に関連付けられているとします。サーバー B 上に "Server-B-SG1" という名前のストレージ グループを作成し、そのストレージ グループ内に "SG1-MB1" とういう名前のデータベースを作成します。SG1-MB1 データベースのファイル パスは、"F:\Databases\SG1-MB1.edb" および "F:\Databases\SG1-MB1.stm" として示されます。
    サーバー A 上の D:\Databases からサーバー B 上の F:\Databases に Priv1.edb と Priv1.stm をコピーします。次に、名前を Priv1.edb から SG1-MB1.edb に変更し、Priv1.stm を SG1-MB1.stm に変更します。

ここで説明した手順を実行する際は、次の点を考慮することをお勧めします。

  • データベースを別の場所に復元またはコピーする際は、オンライン バックアップからデータベースを復元したりデータベースをマウントしたりする前に、[復元時はこのデータベースを上書きする] チェック ボックスをオンにする必要がある場合があります。このチェック ボックスは、論理データベース オブジェクトの [データベース] プロパティ ページにあります。移動したデータベースをこの理由で復元またはマウントできない場合は、サーバーのアプリケーション ログに問題が記録されます。
  • 別の場所にデータベース ファイルをコピーする前に、それらが整合状態またはクリーン シャットダウン状態にあることを確認する必要があります。これらの状態の詳細については、サポート技術情報の文書番号 240145「[XADM] 安全に移動できるトランザクション ログ ファイルを特定する方法」のデータベースの状態に関するセクションを参照してください。
    また、データベースを別の場所にコピーまたは復元する前または後に、追加のトランザクション ログをデータベースに再生することもできます。詳細については、「Exchange メールボックス データベースを移動する際のトランザクション ログ ファイルの問題」を参照してください。
  • 移動処理を開始する前に、移動先のデータベースを停止し、既存のデータベース ファイルを削除し、自動的に起動しないようにデータベースを設定します。これにより、移動処理中に、データベースが意図に反してオンラインになるのを防ぐことができます。
  • データベースを別の場所に移動しているときは、送信中のメールが配信不能になったりメールが失われたりする場合があります。この問題による影響を最小限に抑えるには、移動処理のできる限り早い段階で、ユーザー アカウントを新しいデータベースの場所にリンクさせる必要があります。元のデータベースをシャットダウンまたは移動する前に、この操作を実行してください。これにより、移動処理が完了するまで、そのデータベース内のすべてのメールボックスに対するクライアント アクセスを防止できます。この操作の詳細については、「Active Directory 属性を使用したメールボックスの有効化、無効化、およびホーム サーバーの変更」を参照してください。
  • Exchange は、さまざまなシステム機能を実行するために、SMTP、システム、システム アテンダントなど、いくつかの異なるメールボックスを生成します。データベースを新しい場所に移動した後、データベース内にこれらの機能に関するメールボックスが残る場合があります。メールボックス クリーンアップ エージェントはこれらのメールボックスの接続を解除し、既定では 30 日後にこれらを削除します。これらのメールボックスは、手動で接続を解除したり削除したりする必要はありません。
  • ベスト プラクティスとして、データベースの移動が完了したら、できる限り早く Exchange サーバーを再起動することをお勧めします。サーバーを再起動しなくても基本的なクライアント接続機能とメール配信機能は動作しますが、その他のシステム機能およびサード パーティ製のアプリケーションが動作するには再起動が必要な場合があります。

詳細情報

メールボックスの移動処理の操作および削除標識付きメールボックスのテーブルの詳細については、「メールボックスの移動処理と削除標識付きメールボックスのテーブル」を参照してください。

メールボックスの有効化や無効化を行ったり、メールボックスのホーム サーバーを変更したりする方法の詳細については、「Active Directory 属性を使用したメールボックスの有効化、無効化、およびホーム サーバーの変更」を参照してください。