Microsoft Systems Management Server を使用した新規アプリケーションのインストール

アーキテクチャ ガイド

トピック

概要
新規ソフトウェア展開の前提条件
展開の準備
付録

概要

はじめに

本書の目的

本書では、企業のコンピュータ処理環境で Microsoft Systems Management Server (SMS) を使用して、Microsoft Office XP などの新規ソフトウェア製品を配布およびインストールするためのアーキテクチャ ガイダンスを提供します。

対象読者

本書は、Microsoft Consulting Services (MCS) やパートナーのコンサルティング企業など、Microsoft Services に役立ちます。 本書は、ユーザーの観点からは、情報技術 (IT) 実稼動環境に変更を導入またはサポートする IT マネージャと IT サポート担当者のメンバという 2 つの主要なグループを主な対象にしています。

本書を使用する場合は、Microsoft Operations Framework (MOF) のプロセス、チーム、およびリスク モデルを十分理解し、使用できる必要があります。 これらのモデルを説明しているドキュメントのコピーは、https://www.microsoft.com/japan/systemcenter/default.mspx で入手可能です。

このガイドの要点

企業のコンピュータ処理環境に新規ソフトウェアを効果的に展開するには、以下の 3 つの項目が必要になります。

  • 効率的および効果的な運用。

  • 自身の役割と担当を認識している担当者。

  • 適切なツールとテクノロジ。

このガイドでは、Microsoft Systems Management Server (SMS) のような自動化されたツールを使用して、組織がどのようにこれら 3 つの要件を満たすかについての、特定のアーキテクチャ ガイダンスを提供します。

本書全体では、例として Office XP の配布とインストールを使用します。

このガイドは、MOF によって提供される運用ガイダンス、より厳密には、MOF サービス管理機能 (SMF) ガイド、特に、変更、構成、およびリリース管理ガイドに基づいています。

本書は、組織の以下のような問題点の回避を支援するようにデザインされています。

  • 組織がどのコンピュータを所有しているか、およびそのコンピュータにどのソフトウェア アプリケーションがインストールされているかを判断する困難さ。

  • 組織のグループ間での調整の不足。たとえば、新規ソフトウェアの展開を他の変更と同じ時間に行うスケジュールが設定されると、競合や予期しない問題が発生する結果になる可能性があります。

  • 正式な標準が採用されていないことによる、管理されない、一貫性のない新規ソフトウェアの展開。サポートの電話が増えるという結果になる可能性があります。 このような環境では、購入済みのライセンスに対するインストールの追跡も難しくなる可能性があります。

  • 企業ネットワーク間で大きなパッケージを送信する際の影響に関する組織全体の理解の不足。

新規ソフトウェア展開の前提条件

概要

組織は、Office XP などの新規ソフトウェアを適切に展開するために、以下の項目を確認する必要があります。

  • 効率的および効果的な運用環境を持っていること。

  • 運用フレームワーク内での自身の役割と担当を担当者が認識していること。

  • 運用アクティビティを実行するために最も適したツールやテクノロジを選択、実装していること。

効果的な運用

MOF および MOF SMF は、IT 環境を効果的に運用するための重要な要素です。 サービス管理機能を支える人、プロセス、およびテクノロジをドキュメント化した SMF ガイドは、データ センターまたはその他の種類の企業のコンピュータ処理環境で、Microsoft テクノロジを展開済み、または展開を検討している組織の運用のガイダンスを提供します。 SMF ガイドはまた、概念的な情報、ベスト プラクティス、および SMF プロセスに関連する詳細手順も提供します。

変更管理、構成管理、およびリリース管理の 3 つの SMF は、新規ソフトウェアの展開にとって特に重要になります。 これらの 3 つの SMF を使用しない場合、以下のような状況が発生します。

  • 構成管理データベース (CMDB) に格納されている情報にアクセスする方法がないので、組織はどのコンピュータを所有しているか、そのコンピュータにどのソフトウェア アプリケーションがインストールされているかを判断することが困難になる可能性があります。

  • 組織のグループの間の連携があまり期待できない場合があります。 連携が不足していると、新規ソフトウェアの展開が他の変更と同じ時間に行われるようなスケジュールが設定される可能性があり、競合や予期しない問題が発生する可能性があります。

  • 標準が採用されていない場合は、新規ソフトウェアの展開が管理されない、一貫性のないものになります。 管理されていない展開は、サポートの電話が増加するという結果につながる可能性があります。 このような環境では、購入済みのライセンスに対するインストールの追跡も難しくなる可能性があります。

  • 企業ネットワーク間で大きなパッケージを送信する際の影響が、完全に理解されない可能性があります。

新規ソフトウェアの展開の影響やコスト、特に Office XP のような大きなものは、変更管理 SMF を使用して評価する必要があります。 評価の結果が満足できるものだと想定すると、組織はリリース管理 SMF を使用して、実稼動への Office XP の展開に役立つ情報を提供できます。 構成管理 SMF は、変更管理 SMF とリリース管理 SMF の両方に対して、情報やサポートを提供します。

MOF 変更エリアを構成するこれらの 3 つの SMF とその他の 3 つの MOF エリアの SMF ガイドについては、https://www.microsoft.com/japan/systemcenter/default.mspx を参照してください。

組織が運用環境で更新を効果的に管理および展開するための人、プロセス、およびツールが適切に存在するかどうかわからない場合、運用アセスメントの実行を検討する必要があります。 Microsoft は、運用アセスメントの目的で有償サービス提供物を用意しています。 運用アセスメントの準備方法に関する詳細については、https://www.microsoft.com/japan/systemcenter/default.mspx を参照してください。

MOF チーム モデルは、さまざまな規模の成功した IT 運用組織に存在する一貫性のある品質目標に基づいて、IT サービス管理のためのガイドラインを提供します。成功した IT 運用組織には、成長しつつある E ビジネス データ センターやアプリケーション サービス プロバイダなど、大企業の IT 部門からより小規模なものまであります。

ガイドラインでは、以下のことを説明しています。

  • 運用チームを構成するための役割群のベスト プラクティス。

  • 各役割群の主要なアクティビティと能力。

  • 組織の異なる規模や種類にチームをスケール変換する方法。

  • どの役割の兼任が適切に機能し、どれが機能しないか。

  • どのガイド原則を支持すると、Microsoft プラットフォーム上の分散コンピュータ処理環境の実行と運用に最も成功するか。

MOF チーム モデルの詳細については、https://www.microsoft.com/japan/systemcenter/default.mspx を参照してください。

ツールとテクノロジ

中小規模の組織への新規ソフトウェアの展開には自動化されたツールが必要になります。 このようなツールは、展開する組織が計画に必要なインベントリ情報を取得できるようにしたり、管理者がインストールを計画および制御できるようにします。 合意済みの標準に従ってインストールをカスタマイズしたり、特定のユーザーの役割や職務権限を反映するには、新たなツールが必要になることもあります。

以下のセクションでは、組織で Office XP などの新規ソフトウェアの展開をサポートするために使用される Microsoft のツールを識別し、説明します。 特定の環境で使用されるツールの数や種類は、組織の規模や予算など、多くの要因によって変化します。

Systems Management Server (SMS)

SMS は以下のような重要な機能を提供するので、新規ソフトウェア配布の展開と管理に好んで選択されるメカニズムです。

  • ソフトウェア インストールを開始する前に、どのコンピュータがソフトウェアを必要とするか、どのコンピュータが更新を必要とするかを判断するインベントリを取得する能力。

  • 勤務時間外、または通常のビジネス運用への影響が最も少ない時間帯に、ソフトウェア展開のスケジュールを設定する能力。

  • 管理者がインストールの進捗を監視できるステータス レポートを表示する能力。

  • システム インベントリに基づいて、手動で作成したグループまたは Microsoft Active Directoryョ ディレクトリ サービスでコンピュータの位置付けを示す能力。

  • 組織が、ネットワーク経由で、簡単かつ効果的に新規ソフトウェアを移動できるようにするエンタープライズ レプリケーション。

  • Microsoft Windowsョ 2000 および Windows XP 以外のオペレーティング システムのサポート。

SMS の詳細については、https://www.microsoft.com/japan/smserver/downloads/20/default.asp を参照してください。

カスタム インストール ウィザード

大企業ユーザーは、Office XP などの新規ソフトウェアを、企業内のすべてのユーザーに同じ方法で展開することはあまりありません。 熟練したユーザーが Office XP のすべてのアプリケーションを必要とすることもあれば、仕事上の役割を実行するために Microsoft Word のみを必要とするユーザーもいます。 管理者はカスタム インストール ウィザード (CIW) により変換 (MST) ファイルを作成できます。このファイルを使用して、特定の機能を選択的にインストールしたり、特定の機能を削除することにより、通常のインストールをカスタマイズします。

  • テクノロジ メモ Office XP は、Microsoft Windows と同様に、ユーザーが Office XP 環境に適用できるすべての設定を格納する "プロファイル" を使用します。 このような設定には、チーム ドキュメントの場所から既定のフォントまで何でも含めることができます。 管理者は Office プロファイル ウィザード (OPW) を使用して、このような設定がインストール中に構成されるように、事前に定義できます。

  • 上記のカスタム インストール ウィザードによって作成された MST ファイルと共に、OPW が保存したプロファイルが使用されます。

グループ ポリシー

Office プロファイル ウィザードで記述される構成オプションの多くは、Microsoft Windows のグループ ポリシーを使用して定義できます。 管理者はこれらの設定をユーザーごとまたはコンピュータごとに定義し、グループ ポリシーにより実施させることができます。 組織がこの方法でグループ ポリシーを使用することを計画をしている場合、必要な変更を行う前に、グループ ポリシーの既存の実装を評価する必要があります。

長期間にわたる運用のために、どのようにグループ ポリシーが構造化されるかについては、ホワイト ペーパー https://www.microsoft.com/japan/technet/archive/ittasks/maintain/s2impgp.mspxhttps://www.microsoft.com/japan/technet/archive/ittasks/maintain/s1impgp.mspx を参照してください。

展開の準備

概要

組織は Office XP などの新規ソフトウェアの展開を行う前に、IT 環境を注意深く検討し、展開の成功を保証するために修正が必要かどうかを判断する必要があります。 推奨する管理ツールやテクノロジだけでなく、特に運用プロセスや手順をレビューする必要があります。

運用プロセスと手順

組織は運用のすべての側面をレビューする必要がありますが、新規ソフトウェアの展開が成功するために最も重要な側面は変更管理、構成管理、およびリリース管理です。

変更管理

管理者は MOF 変更管理 SMF に従って、新規ソフトウェアに対するそれぞれの新規要求を処理したり、変更要求 (RFC:request for change) から始まり、変更分類、変更承認、変更開発、変更リリース、変更レビューと手順を進めていく必要があります。 MOF 変更管理 SMF に関する詳細については、https://www.microsoft.com/japan/systemcenter/default.mspx を参照してください。

構成管理

構成管理プロセスは、組織の IT インフラストラクチャを識別および管理する組織の能力を扱います。このため、効果的な修正プログラム管理には、構成管理プロセスもまた重要になります。構成管理プロセスは、望むらくは構成管理 SMF に基づきます。

たとえば Office XP を展開する場合、組織は CMDB を使用して、どのクライアント コンピュータが最小限のハードウェア仕様を満たしているか、どのコンピュータがアップグレード (追加メモリの組み込みやハード ディスクのアップグレードなど) を必要としているかを、インストールの開始前に判断する必要があります。 また、CMDB にはソフトウェア ライセンスに関する情報が含まれているので、組織は CMDB を使用して、展開のために追加ライセンスがいくつ必要かを判断できます。

構成管理 SMF で利用可能な構成管理の詳細については、https://www.microsoft.com/japan/systemcenter/default.mspx を参照してください。

リリース管理

原則的には MOF リリース管理 SMF に基づくリリース管理プロセスは、変更を実稼動に移動するために必要な手順を詳しく説明するので、新規ソフトウェアの展開にとって重要になります。

たとえば、Office XP のようにサイズが大きい場合、組織は製品をどのようにリモート サイトに配布するかを判断するために、リリース管理プロセスを使用する必要があります。 また、組織はライセンス情報を最新状態に保つために、リリース管理プロセスを使用する必要があります。 Office XP の各コピーがコンピュータに展開されるとき、Microsoft の使用許諾書の規則により、利用可能なライセンスの数が 1 つ減少します。 利用可能なライセンスがなくなったとき、これ以上ソフトウェアを展開することはできなくなります。

リリース管理 SMF で利用可能なリリース管理の詳細については、https://www.microsoft.com/japan/systemcenter/default.mspx を参照してください。

推奨管理ツールとテクノロジ

組織は、どのツールやテクノロジを選択するにしても、サーバーの配置や配布ポイント、構成オプションの選択と新規ソフトウェアを適切に展開するために必要な設定について、注意深く検討する必要があります。

Office XP の展開の例では、組織は低速で密集したネットワークを経由するのではなく、管理者が遠隔地へオンライン以外の手段で (CD-ROM を使用して) Office XP のソース ファイルを配布できるように、SMS の既存の実装を変更する必要があります。

このセクションの残りの部分では、一例として Office XP を使用し、管理者が新規ソフトウェアを適切に展開できるようにするための、SMS のデザインと実装に関する特定の推奨事項を説明します。

Systems Management Server

組織は、Office XP の展開をサポートするために SMS インフラストラクチャの最適化を開始する前に、以下がことが満たされているかどうかを確認する必要があります。

  • すべての SMS サーバーに、SMS Service Pack 4 (SP4) がインストールされていること。

  • SMS インフラストラクチャが、https://www.microsoft.com/japan/systemcenter/default.mspx にある SMS パッケージ サービス提供物で提供されるガイダンスに従って、デザインおよび実装されていること。

稼動中の適切に管理された SMS インフラストラクチャもまた、Office XP の展開のサポートには不可欠です。また、SMS の実装は、https://www.microsoft.com/japan/systemcenter/default.mspx にある SMS 運用ガイドに従って、保守および運用される必要があります。

サイト階層

大部分の SMS ソリューションは、図 1 に示すようなトップダウン階層でデザインされます。一般的に SMS サイト サーバーは、数多くのクライアントが存在する、またはワイド エリア ネットワーク (WAN) の帯域幅および稼働率を管理する必要のあるビジネス拠点に置かれます。 通常は、階層の頂点にあるサーバーで管理が行われますが、SMS プライマリ サイト サーバーが展開されている場所ならどこでも、管理者が管理機能を実行できるようにデザインされています。

図 1: 帯域幅を最適化するための、SMS の階層デザイン

1: 帯域幅を最適化するための、 SMS の階層デザイン

組織はこのモデルにより、帯域幅の稼働率を制限するようにサイト間のセンダを構成したり、1 日のうちの特定の時間帯にサイト間の通信を制限することにより、SMS のネットワーク稼働率を効果的に制御および管理することが可能になります。 ただし、このモデルは、データ センター クラスのコンピュータを分離したり、区別することはありません。

このため、管理者は間違って特定のソフトウェア アプリケーションをこのようなコンピュータに提供しないように注意する必要があります。 このような状況を避けるために、以下の図 (図 2) で示すように、管理者は組織の成功にとって重要だと考えられるデータ センター サーバーやコンピュータを持つ SMS サイト階層に、クライアントとして、新しいブランチを導入する必要があります。

図 2: Office XP 用に変更された SMS 階層

2: Office XP 用に変更された SMS 階層

図 2 で示すように、SMS 階層に SMS テスト サイトが導入されています。管理者は、このテスト サイトを使用して、実稼動環境に展開する前に、SMS の構成設定、パッケージ、および提供情報への変更をテストする必要があります。 独立したテスト サイトを使用することにより、変更の範囲の制限に失敗したテスタが、このような変更を実稼動クライアントに誤って展開できないようにします。

テスタは、テスト サイトのメンバであるコンピュータに変更を追加したり、新規アプリケーションを提供できる必要がありますが、実稼動環境には変更を加えることができないようにする必要があります。 テストが成功して、変更管理が変更を承認した場合は、SMS 設定ファイルまたは後に実稼動階層にインポート可能なパッケージ定義ファイルに必要な変更をエクスポートできます。

コンピュータは、インターネット プロトコル (IP) サブネットが、サイトが管理する IP サブネットの 1 つである場合のみ、SMS サイトのクライアントになります。 大部分の組織では、データ センター サーバー、実稼動クライアント、およびテスト コンピュータには、独立した IP サブネットが割り当てられます。 ただし、場合によっては、このようなコンピュータが同じサブネット上に存在し、コンピュータが必要なサイトのクライアントになるように、Force Site (Site4c.exe) ツールの使用を必要とします。

Force Site ツールについては、https://www.microsoft.com/technet/sms/20/moblink1.mspx にあるホワイト ペーパー『SMS モバイルおよび低速リンク クライアントの管理 (Managing SMS Mobile and Slow-Link Clients)』 (英語) を参照してください。

ハードウェア インベントリ

Office XP を展開するには、環境内に何が存在するかについて正確で最新の知識が必要になります。 SMS ハードウェア インベントリは、既定ではハードウェア情報を取得しますが、Office XP の展開に必要な追加情報を得るために拡張できます。

ハードウェア インベントリでは、コンピュータからどのような情報が収集されるかを定義するために SMS_DEF.MOF ファイルが使用されます。 次のセクションで説明するように、このファイルは多くの属性をキャプチャするように更新される必要があります。

SMS_DEF.MOF ファイルを更新する際に考慮する必要のあるいくつかの問題点があります。 まず最初に、SMS_DEF.MOF ファイルが更新されるとき、更新されるファイルが階層のすべての SMS サイトに配布され、各サイト サーバー上の SMS\Inboxes\Clifiles.src\Hinv フォルダに配置される必要があります。 これは、SMS 階層のサイトごとに個別に行われる必要があります。 バックアップ コピーは、常に、前回のバージョンから作成される必要があります。

次に、ファイルへの更新は、他の場所および CMDB に記録された設定に保存される必要があります。 Service Pack が SMS に適用されるとき、または SMS が他の何らかの方法でアップグレードされるときは、SMS_DEF.MOF ファイルが Service Pack またはアップグレードで提供されたバージョンで上書きされます。 結果としてファイルへのすべての変更が失われるので、ハードウェア インベントリが引き続き必要な情報を収集することを保証するために、すべての変更を再適用する必要があります。

最後に、Service Pack またはアップグレードが SMS_DEF.MOF ファイルに変更を導入するので、管理者はこのファイルにカスタム修正を手動で再適用する必要があります。

組織がソフトウェアを配布するときは、多くの場合、他のコンピュータからポータブル コンピュータ (ラップトップ、ノートブック、タブレットなど) を検出および分離できるようにする必要があります。 ポータブル コンピュータは、多くの場合、ダイヤルアップ接続やその他の低速で断続的な接続でネットワークに接続されているので、これらのコンピュータへのソフトウェアの配布は別に処理する必要があります。

SMS ハードウェア インベントリ ツールが収集する情報は、多くの場合、他のコンピュータからポータブル コンピュータを区別するには不十分です。 コンピュータをポータブル コンピュータとして明確に識別できる単一の属性や属性のコレクションはありません。 管理者は、そのようなコンピュータを識別するために、ハードウェア インベントリ プロセスの一環として、追加の情報を収集する必要があります。

識別するための情報を得る 1 つの方法は、付録 A で説明している SMS_DEF.MOF の変更です。その結果を下図 3 で示しています。 返される chassistype 属性を使って、ラップトップ、デスクトップ、またはノートブックなどのコンピュータの種類を識別していることに注意してください。 可能な値とその意味については、「付録 A」を参照してください。

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図 3: ポータブルコンピュータを検出するための、ハードウェアインベントリの拡張
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ソフトウェア インベントリ

管理者は、Office XP の展開を開始する前に、クライアント コンピュータでどのようなソフトウェア アプリケーションが実行されているか、またはインストールされているかについての、正確で最新の情報が必要になります。 SMS ソフトウェア インベントリは、クライアント コンピュータ上にインストールされたすべての .exe ファイルについての情報を読み出しますが、どの製品が実際にインストールされているかを判断するには、追加の分析が必要です。

管理者は、アプリケーション ソース ファイルを含むボリュームを、ソフトウェア インベントリ プロセスから明確に除外することを保証する必要があります。 サーバー上の通常のドライブ名を使ってアクセスされるオフライン記憶装置も除外する必要があります。

これらのボリュームについては、管理者が各ドライブのルートに Skipswi.dat と呼ばれるスキャンされない隠しファイルを置く必要があります。 このファイルの使用については、以下のサポート技術情報の記事で説明されています。

  • 255959: SMS: Turning Off Software Inventory on a Single Client (英語)。

  • 263401: SMS: Software Inventory Recalls All Remote Offline Storage on Windows 2000 Clients (英語)。

組織は、すべてのソフトウェアのソース ファイルが確実に独立したドライブに配置されるように、ファイル サーバー (配布ポイント) のファイルの構造を再デザインする必要がある場合があります。

SMS パッケージと提供情報を使用する更新の展開

管理者が、Office XP のインストールのためにユーザーやコンピュータの特定のグループを対象にしたり、通常の営業時間外に行われるインストールを計画したり、低速ネットワークまたはダイヤルアップ リンクで接続しているクライアントを処理できるように、SMS はソフトウェア配布の機能を提供します。 管理者がこれらの機能の使用を計画している場合、以下の推奨事項を考慮する必要があります。

対象とする コンピュータ

SMS では、ハードウェアおよびソフトウェア インベントリ中に集めた情報を、Office XP の配信の指示に使用できます。 これらには豊富な情報が格納されているので、複雑なクエリを作成できます。 このようなクエリにより、物理サイト (コンピュータに割り当てられた IP サブネット)、特定の SMS サイトのメンバーシップ、または、利用可能なディスク領域、プロセッサ、または物理メモリなどの物理構成のような要因に基づいて、コンピュータを選択できます。

通常、Office XP は組織全体に同時に展開されるのではなく、段階的に展開されるので、管理者は最初は制限された台数のコンピュータ、たとえば、特定の IP サブネットの範囲内にあるコンピュータのみを選択するクエリを構築する必要があります。 この最初のコンピュータ グループへの公開が成功した場合に、他のサブネットのコンピュータを含めるように、クエリの選択基準を変更できます。 展開が完了するまで、このプロセスを繰り返すことができます。

多くの場合、ハードウェアおよびソフトウェア インベントリが取得する情報は、管理者が段階的に展開するには十分です。 その他の場合として、既定で SMS データベースに表されない部門やその他の組織グループごとに、Office XP を展開する必要がある場合もあります。 たとえば、財務部が他の部門のユーザーよりもより緊急で Office XP が必要とするので、財務部のコンピュータに最初に Office XP を展開する必要があるかもしれません。

組織の構造を把握するために、組織が SMS データベースの情報を拡張できる方法がいくつかあります。

  • Windows Active Directory の使用。

    Active Directory 内の組織単位 (OU) 構造は、一般的には、IT 管理の観点から、ビジネスの管理構造を反映します。 この構造内でのコンピュータの場所は、Active Directory/SMS コレクション同期 (Active Directory/SMS Collection Synchronization) ツールを使用して、SMS データベースにインポートできます。 SMS の詳細については、https://www.microsoft.com/smserver/downloads/20/tools/smsadsync.asp (英語) を参照してください。

  • カスタム レジストリ キーの使用。

    管理者は、コンピュータが属している部門を完全に識別するために、SMS ハードウェア インベントリ中に収集されるローカル コンピュータのレジストリ値を作成および管理する必要があります。 その値が長期にわたって確実に管理されるように、手動または可能であれば自動化されたプロセスを実施する必要があります。

それほど多くはありませんが、監査目的のために組織の構造に従って Office XP を展開するときに、この方法で SMS データベースを拡張すると役に立つことが立証されています。 ただし、組織によっては内部での変更が頻繁な場合もあるので、この情報を長期にわたって管理することは費用がかかり、時間もかかります。

Office XP の展開のテスト

管理者は実稼動に展開する前に Office XP をテストするために、SMS パッケージと提供情報を構築し、テスト クライアントに対してそれらを利用可能にする必要があります。 誤って実稼動クライアントに対して利用可能にしないように、これらを SMS テスト サイトに作成する必要があります。

管理者は、デスクトップ コンピュータやポータブル コンピュータのクライアントへの Office XP ファイルの配布をテストする必要があります。 また、管理者は可能であれば、異なる場所にあるサイト サーバー間や低速で密集した WAN ネットワーク リンク経由で、Office XP ファイルの配布をテストする必要があります。 オンラインではない (SMS 媒体使用センダ) 配布方法が実稼動で使用される場合、こちらもテストする必要があります。

パッケージの実稼動への移動

テストが成功した場合は、CIW を使用して作成された MST ファイル、および OPW を使用して作成されたプロファイルを、基準ソフトウェア ライブラリ (DSL) に配置する必要があります。 図 4 で示すように、Site Properties Manager ツールを使用して、Office XP をテスト環境に展開するために作成されたパッケージは、パッケージ定義ファイルに従ってにエクスポートされる必要があります。管理者は、Office XP を実稼動に展開する合意がとれたら、SMS 階層の最上位にあるサイト サーバー、または適切な場合はデータ センター サイトに、パッケージ定義ファイルをインポートできます。

図 4: テスト環境からのパッケージのエクスポート

4: テスト環境からのパッケージのエクスポート

配布ポイントやパッケージ ソースを含む、すべてのパッケージ詳細が保存されることに注意してください。 これらは実稼動サイトでは異なるので、パッケージ情報がインポートされるときに変更する必要があります。 クライアントを対象として指定するために使用されるクエリも、必要に応じて、同じツールを使用してエクスポートできます。

配布ポイントでの Office XP の準備

管理者は、SMS パッケージを実稼動にインポートした後に、ファイルのコピーが各 SMS サイト内の配布ポイントに配置されることを保証する必要があります。

大部分の組織では、WAN を使用して、SMS サイト間でソフトウェア アプリケーションが配布されます。 配布が通常の勤務時間外に行われるように、また配布が指定された量のネットワーク帯域幅を使用するように確実に構成するために、サイト間センダで制限が設定されます。 これらの設定により、ソフトウェア配布による通常のビジネス運用への影響は最小化されますが、適切な制限事項によっては、Office XP がすべての SMS サイトに到達するにはかなりの時間がかかることがあります。 場合によっては、非常に制限された WAN 経由で送信するよりも、オンライン以外でファイルを送信するために SMS 媒体使用センダを使用する方が望ましい場合もあります。

サイト間のネットワーク リンクが低速であるか、混雑している場合、たとえサイト間センダに制限がなくても、Office XP の配布が実現可能ではないことがあります。 このような場合にも、SMS 媒体使用センダを使用する必要があります。

SMS 媒体使用センダは、SMS サイトが存在する場所でのみ利用可能です。 組織は、多くの大きなアプリケーションを展開する場合、SMS サイト サーバーの数や位置を再評価する必要があります。

ネットワーク管理者は、Office XP ソース ファイルが SMS サイト サーバーに到達するときに、サイト内のすべての配布ポイント サーバーにすぐに送信されることを認識する必要があります。 送信が行われる時刻やこのアクティビティの最中に使用されるネットワーク帯域幅の量を制御または制限する方法はありません。 低速または非常に混雑したネットワーク リンクの末端に配布ポイントを置くことは、ビジネス上の価値がない限りお勧めしません。

大規模サイトの場合は、管理者はその場所内のすべてのクライアントにサービスを提供するために十分な配布ポイントが存在することを保証する必要があります。 ソフトウェアが一度に数多くのクライアントに展開される場合は、配布ポイントを論理ネットワークではなく、独立した物理ネットワークに配置する必要があります。

支社での準備

複数の小規模支社を持つ組織の場合、場所の数が少なすぎて、独立した SMS サイト サーバーを配置することは費用が見合わない場合もあります。 このような場合、ワークステーションの 1 台が公開期間中にローカル SMS 配布ポイントとして動作するように構成されていない場合は、サイトの各クライアントはネットワーク経由で Office XP ソース ファイルにアクセスする必要があります。

支社のクライアントが SMS サイトでランダムにワークステーションを選択するのではなく、指名されたワークステーションを配布ポイントとして選択するようにするために、管理者は PrefServ.exe を使用する必要があります。 PrefServ.exe の詳細については、https://www.microsoft.com/technet/prodtechnol/sms/sms2/reskit/default.mspx を参照してください。

管理者は、SMS 提供情報によって挿入するようユーザーに求める Office XP の CD-ROM の送付を選択することも可能です (以下を参照してください)。

Office XP のクライアントへの提供

SMS では、管理者がソフトウェア アプリケーションをインストールする時点を決定するオプションをユーザーに提供できます。ただし、規定の期日後は、そのアプリケーションが自動的にインストールされます。 図 5 で示すように、必須割り当てが将来のどこかで行われるように設定し、[ ユーザーは割り当てられたプログラムを独自に実行できる ] チェック ボックスをオンにすることにより、これを実現できます。

図 5: Office XP をクライアントで利用可能にする

5: Office XP をクライアントで利用可能にする

**ユーザーは、**Office XP をインストールできること、およびそのインストールは指定した期日後に必須でインストールされることを通知される必要があります。 この方法で Office XP を提供することにより、ユーザーは都合のよいときにインストールを選択できるオプションが与えられます。 割り当てた期日に到達すると、Office XP が自動的にインストールされます。

Office XP は大きなアプリケーションなので、公衆交換電話網 (PSTN) や総合デジタル通信網 (ISDN) のダイヤルアップ接続経由では、インストールに何日もかかります。 このような状況下では、たとえ [必須割り当て] の日時に到達してもインストールが行われないようにするために、管理者は [遅いリンクには割り当てを必須にしない] チェック ボックスを常にオンにする必要があります。 このチェック ボックスがオンの場合、リモート ユーザーが高速接続が可能な場合、または次にコンピュータをオフィスに持参したときにのみインストールが行われます。

ユーザーが同じセットのアプリケーションを実行していない場合は、テクニカル サポートが困難で、費用がかかるので、任意の日にポータブル コンピュータ ユーザーにオフィスに持参してもらい、Office XP をそのコンピュータにインストールすることが適切です。 ビジネス上の理由または個人的な理由でコンピュータをオフィスに持参できないユーザーについては、管理者が SMS 提供情報によって挿入することをユーザーに求める Office XP の CD-ROM の送付を選択することも可能です。

付録

付録 A: SMS インベントリでのコンピュータの種類の識別

SMS の管理者は、組織に展開された異なる種類のコンピュータを識別するために、ハードウェア インベントリが可能なすべてのサイト サーバーの SMS_Def.mof ファイルに、以下の追加を行う必要があります。 SMS_Def.mof ファイルは SMS\Inboxes\Clifiles.src\Hinv にあります。

[SMS_Report(TRUE), 
SMS_Group_Name(鉄ystem Enclosure・, 
SMS_Class_ID(溺ICROSOFT|System_Enclosure|1.0・] 
class Win32_SystemEnclosure : SMS_Class_Template 
{ 
[SMS_Report(TRUE),key] 
string Tag; 
[SMS_Report(FALSE)] 
string Caption; 
[SMS_Report(FALSE)] 
string Description; 
[SMS_Report(TRUE)] 
string Manufacturer; 
[SMS_Report(TRUE)] 
string Name; 
[SMS_Report(TRUE)] 
string SerialNumber; 
[SMS_Report(TRUE)] 
string SMBIOSAssetTag; 
[SMS_Report(TRUE)] 
string Version; 
[SMS_Report(TRUE)] 
uint16 ChassisTypes; 
};

SMS は、更新された SMS_Def.mof ファイルを、クライアント アクセス ポイント (CAP) に自動的に伝達し、クライアントは次の保守サイクルでこのファイルをダウンロードできます。 更新されたファイルはすべての SMS クライアントで利用できるので、管理者はこのような修正を行う前に、元のファイルをバックアップしておく必要があります。

SMS クライアントがファイルの処理に成功したら、新しいインベントリ クラスである "System Enclosure" が、ハードウェア インベントリの一部として SMS サイト サーバーにレポートされます。 その情報は、最終的には Microsoft 管理コンソール (MMC) の SMS リソース エクスプローラ スナップインに表示されるので、SMS 管理者はクエリおよびレポートを構築するためにその情報を使用できます。

Office XP の展開で特に興味深いのは、コンピュータのハードウェア構成を示す chassistype 属性です。 以下の表で示すように、chassistype 属性には多くの異なる値がありますが、管理者はポータブル コンピュータがラップトップ、ポータブル、ノートブック、またはサブ ノートブックとして識別される可能性があることを認識しておく必要があります。

ChassisType

説明

1

その他

2

不明

3

デスクトップ

4

ロー プロファイル デスクトップ

5

ピザ ボックス型

6

ミニ タワー

7

タワー

8

ポータブル

9

ラップトップ

10

ノートブック

11

ハンドヘルド

12

ドッキング ステーション

13

オールインワン

14

サブ ノートブック

15

小型

16

ランチ ボックス型

17

メイン システム シャーシ

18

拡張シャーシ

19

サブ シャーシ

20

バス拡張シャーシ

21

周辺機器シャーシ

22

記憶装置シャーシ

23

ラックマウント方式シャーシ

24

密閉ケース PC

詳細については、https://www.microsoft.com/smserver/techinfo/administration/20/using/getassetinfo.mspx でホワイト ペーパー『Systems Management Server 2.0 を使用した資産情報の収集(Collecting Asset Information with Systems Management Server 2.0)』 (英語) を参照してください。

組織内のすべてのポータブル コンピュータが、8 (ポータブル)、9 (ラップトップ)、または 10 (ノートブック) のシャーシの種類をレポートしたと場合は、管理者は以下の SMS クエリを使用して、ポータブル コンピュータを識別できます。

select SMS_G_System_SYSTEM_ENCLOSURE.ChassisTypes, 
SMS_G_System_SYSTEM.Name from SMS_R_System inner join 
SMS_G_System_SYSTEM_ENCLOSURE on 
SMS_G_System_SYSTEM_ENCLOSURE.ResourceID = 
SMS_R_System.ResourceId inner join SMS_G_System_SYSTEM on 
SMS_G_System_SYSTEM.ResourceID = SMS_R_System.ResourceId 
where SMS_G_System_SYSTEM_ENCLOSURE.ChassisTypes = "8" or 
SMS_G_System_SYSTEM_ENCLOSURE.ChassisTypes = "9" or 
SMS_G_System_SYSTEM_ENCLOSURE.ChassisTypes = "10" order by 
SMS_G_System_SYSTEM_ENCLOSURE.ChassisTypes

SMS クエリ : Office XP の展開用のポータブル コンピュータの対象指定

寄稿者

プログラム管理

Anthony Baron, Microsoft Corporation

主執筆者

Nigel Cain, Microsoft Corporation

Ben Gamble, Microsoft Corporation

Kamal Patel, Microsoft Corporation

テクニカル ライタ

Jerry Dyer, Microsoft Corporation

編集者

Matt Baszner, Volt Technical Services

目次