WebDAV と IIS 7.0 の新機能

作成者 : Robert McMurray
発行日 : 2008 年 2 月 18 日 (作業者 : robmcm(英語))
更新日 : 2009 年 3 月 18 日 (作業者 : robmcm(英語))

はじめに

WebDAV とは

WebDAV は Web Distributed Authoring and Versioning (Web 分散オーサリングとバージョン管理) の短縮形です。これは、HTTP プロトコルに対するオープンスタンダードの拡張機能であり、インターネットを介したファイル管理を可能にします。WebDAV では、通常のファイル システムと同様の操作 (コピー、移動、削除など) に加えて、名前と値のペアに基づく柔軟なプロパティ メカニズムと、リソース ロックの機能が提供されます。WebDAV は Microsoft の Web 発行シナリオにおいて重要なコンポーネントであり、WebDAV リダイレクター、Web フォルダー、SMS/SCCM、およびその他の多くのコンポーネントで使用されています。

Expression Web Designer など、Microsoft の一部の新しい Web オーサリング ツールには、WebDAV 対応のサイトで作業するためのサポートが組み込まれています。また、Windows Vista および Windows Server® 2008 には優れた WebDAV リダイレクターが追加され、WebDAV モジュールを使用するように構成された Web サイトにドライブ文字をマップすることが可能になりました。これにより、FrontPage 2003 や Visual Studio などの WebDAV サポートが組み込まれていない Web オーサリング ツールからでも、WebDAV 対応の Web サイトを利用することができます。

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IIS 7.0 の WebDAV モジュールの新機能

Microsoft は、IIS 7.0 用の新しい WebDAV 実装をリリースしました。このモジュールは、WebDAV プロトコルとの互換性が向上し、IIS 6.0 用の WebDAV モジュールよりも構成しやすく、Microsoft の以前のバージョンの WebDAV よりも高速になるように完全に書き直されています。この新しい WebDAV 拡張モジュールでは、さまざまな機能と向上点がサポートされています。以下の一覧は、このバージョンの向上点のいくつかを示しています。

: この新しい WebDAV 拡張モジュールは、Windows Server 2008 およびインターネット インフォメーション サービス 7.0 のみを対象としています。Windows Server 2003 および Internet Information Services 6.0 では動作しません。

IIS 7.0 との統合

  • 統合パイプライン : IIS 6.0 の WebDAV 実装は ISAPI を通じて行われましたが、正しく機能するためには、コア サーバーで WebDAV ISAPI が認識されている必要がありました。IIS 7.0 のネイティブ モジュール インターフェイスは非常に機能が豊富なため、このようなことを考慮する必要はありません。
  • 管理 : IIS 7.0 は新しい管理インターフェイスおよび構成ストアを備えており、新しい WebDAV 拡張モジュールはこの新しい設計と緊密に統合されます。以前の IIS 6.0 のメタベースはなくなり、代わりに .NET XML ベースの *.config 形式に基づく新しい構成ストアが導入されました。さらに、IIS 7.0 には新しい管理ツールが用意されており、新しい WebDAV 拡張モジュールはそのパラダイムにシームレスに組み込まれます。

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WebDAV の構成

  • WebDAV 固有の構成 : 以前の WebDAV では、IIS の構成設定が非常に複雑になる場合がありました。たとえば、標準の IIS の "ディレクトリの参照" 設定は、WebDAV PROPFIND 動詞を通じてディレクトリ アクセスも制御していました。これは、ディレクトリの参照を有効にせずに PROPFIND アクセスのみを有効にしたいサイト管理者にとっては問題でした。新しい WebDAV の実装では、IIS 7.0 の拡張可能な構成スキーマおよび管理ツールを活用して、これらの設定を切り離し、WebDAV の動作をより細かく制御することが可能です。
  • サイト単位の WebDAV 設定 : IIS 6.0では WebDAV を Web サービス拡張を通じてサーバーレベルで有効にしていましたが、IIS 7.0 では WebDAV をサイトレベルで有効にできます。
  • URL 単位のセキュリティ設定 : 新しい WebDAV 拡張モジュールでは、URL 単位のオーサリング ルールがサポートされており、管理者は URL ごとにカスタム WebDAV セキュリティ設定を指定できます。これらのオーサリング ルールは IIS 7.0 の URL 単位の承認規則とは別に指定されるものであり、通常の HTTP 要求と WebDAV オーサリングに対して、それぞれ個別のセキュリティ設定のセットを指定することができます。
  • 共有ロックと排他的ロックのサポート : 新しい WebDAV 拡張では、上書きによって更新内容が失われるのを防止するため、共有ロックと排他的ロックの両方がサポートされています。

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WebDAV の使用の開始

WebDAV のチュートリアル

IIS 7.0 での WebDAV の使用を開始するうえで役立つように、Microsoft は次のチュートリアルを作成しました。

コミュニティ サポート

Microsoft では、Microsoft のサポート Web サイト (https://support.microsoft.com/) で説明されている通常のルートを通じて、WebDAV に関する顧客参加型のテクニカル サポートを提供しています。

また、次のパブリック フォーラムを通じた WebDAV のコミュニティ サポートの提供も行っています。

IIS 7.0 用 WebDAV の変更点と既知の問題

: インストールに関する詳細については、Microsoft の Web サイト (https://www.iis.net/ (英語)) の「IIS 7.0 での WebDAV のインストールと構成」を参照してください。

このリリースには以下の変更点が含まれており、また以下の問題が確認されています。

  • 新しい WebDAV 拡張モジュールのインストール後に IIS 7.0 をアンインストールすることは可能です。これによって WebDAV 拡張は動作しなくなります。また、その後 IIS を再インストールした場合でも、一部の WebDAV 構成設定 が IIS の applicationHost.config ファイルから失われるため、WebDAV モジュールは引き続き動作しません。最善の解決策は、IIS のアンインストール後に WebDAV をアンインストールすることです。
  • 多くの Web ベースの機能については、リモート マネージャーに委任したり、IIS 7.0 の新しい構成インフラストラクチャを使用して web.config ファイルに追加したりできます。ただし、WebDAV 拡張モジュールの機能については、委任や web.config ファイルへの格納はできません。
  • ファイルの一覧を取得する PROPFIND は匿名で実行することができます。ただし、ファイルのアップロードには認証されたユーザーが必要です。これは、セキュリティを開放することによって匿名でのファイルのアップロードを可能にできた IIS 6.0 からの変更点です。IIS 7.0 用の WebDAV では、この動作が変更され、すべての WebDAV の操作で認証が必要となっています。ただし、一部の WebDAV クライアントとの下位互換性を確保するために、匿名での PROPFIND の使用が許可されています (具体的には、PUT、MKCOL、PROPPATCH、COPY、MOVE、および DELETE のすべての動詞で認証が必要です)。
  • 新しい WebDAV モジュールでは、個別のファイルを使用する単純なプロパティ ストアがサポートされており、サーバー間でプロパティを簡単にコピーできます (IIS 6.0 では、プロパティは NTFS 代替データ ストリームに格納されていたため、異なるファイル システム間でプロパティをコピーすることは困難でした)。

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