Office 2013 互換性の評価

 

適用先:Office 2013, Office 365 ProPlus

トピックの最終更新日:2016-12-16

概要: テレメトリ ダッシュボードおよび最新の Office 互換性プロセスを使用して、組織内の Office の互換性を評価する方法について説明します。

対象ユーザー: IT 担当者

Office 展開プロジェクトを順調に進めるためには、Office の互換性を評価するための適切なプロセスの使用、および Office のアップグレードによって発生する可能性があるリスクの理解を支援するツールの使用という 2 つの事柄が主に重要となります。Office 2013 では、これらの両方がサポートされています。最新の Office 互換性プロセスという、Office の互換性を評価するのに役立つ新しいプロセスが導入されています。Office 2013 に付属の新しいテレメトリ機能およびツールと共にこのプロセスを使用することによって、Office を高速に展開でき、ユーザーが受ける影響を最小限に抑えつつ、新しいバージョンの Office を稼働できます。この記事では、最新の Office 互換性プロセス、およびこのプロセスにおける Office テレメトリの使用方法について説明します。

重要重要:
この記事は、「Office 2013 互換性のコンテンツ ロードマップ」に含まれています。このロードマップは、Office 2013 の互換性の評価に役立つ記事、ダウンロード、スクリプト、およびビデオを参照する際の出発点として使用します。
個々の Office 2013 アプリケーションに関する互換性情報については、Office.com で "2013 互換性" を検索してください。

この記事の内容

Office 2010 のリリース以降、数多くの IT 担当者や IT コンサルタントに対して、彼らが行っている Office 2010 の展開について聞き取りを行ってきました。多くの場合、Office Migration Planning Manager (OMPM) や Office Environment Assessment Tool (OEAT) などのツールを使用して、組織内の各クライアント コンピューター、ファイル サーバー、およびドキュメント リポジトリにある Office ドキュメントや Office ソリューション (アドインやマクロなど) を特定および評価しているという答えが返ってきます。では、これらのツールの使用が推奨されない理由は何でしょうか。これらのツールは、Office ドキュメントおよびソリューションを効果的に検出できます。しかし、実際のところ、あまりに多くのドキュメントやソリューションが検出されるため、結果として生成される評価データ (数百のソリューションおよび数百万のドキュメントのデータが生成されることもたびたびあります) を確認して Office の展開を開始するまでに 12 ~ 18 か月かかることもあります。

1 年間かけて Office を展開するための準備を行うとリスクを減らせるように見えますが、実際は、多くの場合、展開が遅れることの方が、ビジネスが中断されるリスクよりもコストがかかります。たとえば、アップグレードは、ビジネス上の価値をもたらす新機能を利用するために行うものですが、ユーザーが新しいバージョンの Office を使用していないと、このようなビジネス上の価値をもたらす新しい Office の機能を利用できません。互換性の評価に長い時間をかけると、少なくとも 1 年間は Office への投資から利益を得ることができなくなります。その間、IT 担当者は、ビジネスにとって不可欠とはいえないドキュメントやソリューションのテストにも多くの時間を費やすことになります。このように長い時間をかけてテストを行ったり、繰り返しテストを行ったりすると、組織の機動性が損なわれ、ユーザーや IT 担当者が変化を受け入れない体質になる危険性があります。

Office 2013 の互換性についての計画策定を開始するときに、2 つの単純な目標を立てて作業を開始しました。それらは、IT 担当者が Office の互換性を評価するのに費やす時間を最小限に抑えること、および Office のアップグレードによるリスクを低減することです。もちろんこれらの目標は簡単に達成できるものではありません。Office の複雑で高機能な環境では、互換性の問題が常につきまといます。ビジネス上のリスクは実際に損害が発生する可能性があり、IT 担当者は組織にとって最適な意思決定を日々行う必要があります。Office 2013 は既存の Office ドキュメントおよびソリューションと互換性があることはわかっていましたが、ユーザーのドキュメントおよびソリューションが新しい Office で利用できることを IT 担当者が確認できるツールが必要であることもわかっていました。課題は、互換性評価プロセスを積極的に推進するツールではなく、このプロセスを支援するツールを作成することでした。

新しい互換性ツールの要件を定義するときに、Office の展開を困難にする一般的な問題を調査しました。未知の問題に対する不安の除去、展開の高速化、将来の Office アップグレードにおける基盤の確立、および IT 担当者が互換性に関する問題を管理できるようにすることを目的としました。この作業の結果、Office 2013 に組み込まれている新しいテレメトリベースの互換性インフラストラクチャ、および Office の互換性を評価するための新しいアプローチが誕生しました。このアプローチは最新の Office 互換性プロセスと呼ばれ、次の表に示す手順で実行します。

最新の Office 互換性プロセスのフェーズ

使用されているドキュメントおよびソリューション、使用者、および使用頻度を検出します。頻繁に複数のユーザーが使用しているドキュメントおよびソリューションは、互換性テストの候補となります。

ビジネス グループと協力して、ビジネスに不可欠なドキュメントおよびソリューションを特定します。検出フェーズで発見したデータを元にしてこの議論を進めることができます。Office 展開の初日から利用できることが必要な、ビジネスに不可欠なドキュメントとソリューションを特定することが目標です。

Office 2013 を使用して、ビジネスの遂行に必要なドキュメントおよびソリューションをユーザーがテストするパイロット展開を開始します。このことを、ユーザー受け入れテストと呼んでいます。ドキュメントおよびソリューションを初日に使用したときに発生するすべての問題のトラブルシューティングを積極的に行います。

Office を展開して、引き続きドキュメントおよびソリューションを監視します。更新された Office ソリューションを展開し、Office 2013 のパフォーマンスおよび動作の傾向を監視します。ビジネスに不可欠ではないドキュメントおよびソリューションで問題が発生した場合は、ヘルプ デスクのリソースを活用して問題のトラブルシューティングを行います。


この記事では、互換性に関連する Office の変更点について説明します。その後、最新の Office 互換性プロセスの各フェーズ、およびこのプロセスの支援に Office テレメトリ機能を使用する方法について説明します。

Office テレメトリは、Office 2013 での互換性に関連する数多くの新機能および変更点のうちの 1 つです。Office 2010 で導入されたその他の新機能には、クイック実行のサポートやアドイン管理の機能向上などがあります。

組織で現在 Office 2003 または Office 2007 を実行している場合、Office 2007 および Office 2010 で導入された新機能については、次の記事を参照してください。

以降のセクションでは、新しい互換性機能および変更点について詳細に説明します。

Office テレメトリは、Office 2013、Office 2010、Office 2007、および Office 2003 と連携する、新しい互換性監視フレームワークです。Office の Office 2013 テレメトリを使用すると、特定の Office アプリケーションで Office 2013 ドキュメントまたは Office ソリューションを読み込む、使用する、閉じるなどのイベントやエラーが発生したとき、そのイベントに関するレコードがローカル データ ストアに追加されます。 各レコードには、問題の説明と詳細情報へのリンクが含まれています。 また、インベントリ データと利用状況データも追跡されます。

Office テレメトリは Office 2013 の新機能であるため、Office 2003、Office 2007、Office 2010 には組み込まれていません。これらのクライアントでは、インストールされているアドインや最近使用したドキュメントに関する情報を収集するエージェントを展開します。これらのクライアントのアプリケーション イベント データは取得できませんが、ビジネスで使用する、あるいはビジネスで重要と考えられるものを検出する際に役立つインベントリ データと利用状況データを取得できます。

組織全体から収集された Office テレメトリ データを確認するには、テレメトリ ダッシュボード (Excel 2013 ブック) を使用します。ダッシュボード コンポーネントを展開する手順については、テレメトリ ダッシュボードを展開する を参照してください。テレメトリ ダッシュボード コンポーネントとその動作について説明する図については、Office 2013 のテレメトリ ポスターをダウンロードしてください。このポスターには、すべてのコンポーネントの解説、監視される Office ファイルの一覧、データ コレクションの動作などに関する説明が記載されています。

Office テレメトリ ポスターのサムネイル イメージ

クイック実行は、Office のインストールにかかる時間を短縮する、マイクロソフトのストリーミングおよび仮想化テクノロジです。また、同じコンピューター上で最新バージョンの Office を以前のバージョンの Office と並行して実行できるようにする分離環境も提供します。クイック実行を使用してインストールした場合でも、Office 製品でマクロを実行したり、コンピューターにインストールされているその他の Office ソリューションと通信したりできます。Office テレメトリ機能は、クイック実行を使用してインストールされた Office 製品でも使用できます。

クイック実行を使用すると、現在の環境をそのまま使用しながら Office 製品を試験的に展開できるため、最新の Office 互換性プロセスにおいて重要な役割を果たします。この安全策を利用することによって、ユーザーは、生産性を維持しながら、ためらわずに変更を実施できます。ドキュメントまたはソリューションが Office 製品で正しく動作しない場合、ユーザーはいつでも前のバージョンの Office でファイルを開いて、作業を続行できます。

クイック実行を使用した Office 製品のインストール方法の詳細については、「クイック実行の概要」を参照してください。最新の Office 互換性プロセスの確認フェーズにおけるクイック実行の使用方法の詳細については、「フェーズ 3: Office ファイルの動作を確認する」を参照してください。

Office 2013 の新しいグループ ポリシー設定を使用すると、各 Office 2013 アプリケーションの管理アドインの一覧を作成できます。この一覧から、常に有効化するアドイン、常に無効化する (ブロックする) アドイン、ユーザーが構成可能なアドインを指定できます。また、管理アドインの一覧に含まれていないすべてのアドインをブロックすることもできます。

これらのグループ ポリシー設定を使用することによって、組織内の Office でのアドインの使用方法をより詳細に制御できます。たとえば、特定のアドインが頻繁にクラッシュの原因となっていることがテレメトリ データから判明した場合、それらのアドインを無効化できます。組織内でサポートされていないアドインの使用がテレメトリ データから判明した場合、それらのアドインを無効化することもできます。逆に、特定のアドインを常に有効化するように構成することによって、それらのアドインが必ず使用されるようにすることもできます。アドインを有効化またはブロックすると、ユーザーはそのアドインの状態を変更できなくなります。

テレメトリ ダッシュボード内で、これらの新しいグループ ポリシー設定を管理することもできます。アドインの管理ワークシートには、Office 2013 アドインの成功率、つまり重大なエラーが発生していないセッションの割合が表示されます。また、各アドインの読み込み時間や、アドインを使用しているユーザーのうちブロックされているユーザーまたは常に有効化されているユーザーの割合も表示されます。テレメトリ ダッシュボードを使用して、新しいグループ ポリシー設定を適用する GPO スクリプトを生成することもできます。

これらのグループ ポリシー設定の詳細については、フェーズ 4: Office を管理するを参照してください。アドイン管理プロセスの概要については、Let's manage add-ins using Telemetry Dashboard を参照してください。

Office 2013 には、既存の Office ドキュメントおよびソリューションとの互換性に影響する製品の機能向上やその他の変更点が数多く含まれています。特定の Office 2013 アプリケーションでは、Office ドキュメントまたはソリューションで、変更された機能、削除された機能、または非推奨の機能に関連するエラーが発生した場合にテレメトリ イベントを記録できます。これらのアプリケーションは、Word 2013、Excel 2013、および Outlook 2013 です。テレメトリ ダッシュボードを使用すると、これらのイベントを監視して、その発生頻度および影響を受けるユーザーを確認できます。

変更および削除された機能の詳細については、次のリソースを参照してください。

Office 2013 での変更点

Compatibility issues in Office 2013

Visio では、Visio 2013 の新しい機能を提供するための XML ベースのファイル形式が導入されています。これらの新機能には、他のアプリケーションとの共同編集と強化された相互運用性が含まれます。新しいファイル形式とファイル名拡張子は、図面 (.vsdx, .vsdm)、テンプレート (.vstx, .vstm)、ステンシル (.vssx, .vssm) に使用されます。古い形式から新しい形式への切り替えをサポートするために、Visio 2013 は、互換性モード、変換オプション、互換性チェックなど、いくつかの互換性機能を提供します。グループ ポリシー管理テンプレートを使用して、どの Visio ファイル形式を既定で使用するかコントロールできます。

新しい VSDX ファイル形式については、「Visio 2013 における新しい VSDX ファイル形式について IT プロが知っておくべきこと」を参照してください。

Microsoft Visio 2013 Viewer では、Internet Explorer を使用することで .vsdx, .vsdm, .vsd, .vdx, .vdw, .vstx, .vstm, .vst、または .vtx ファイルを開くことができます。Viewer は、Microsoft ダウンロード センター からダウンロードできます。

Microsoft Visio 互換機能パックを使うと、Visio 2010 ユーザーは新しい Visio 2013 図面ファイル形式で作成されたファイル (拡張子が .vsdx や .vsdm のファイル) を開くことができます。これは、Microsoft ダウンロード センター からダウンロードできます。

ここからは、最新の Office 互換性プロセスについて説明します。検出フェーズの目標は、最も使用されているドキュメントとソリューション、およびその使用者を把握することです。検出プロセスの開始には、次の 2 つのアプローチがあります。

  • 推奨されるアプローチは、テレメトリ エージェントの展開を開始して、監視対象グループ内での利用状況を検出し、その結果を使用してビジネス グループとの議論を開始するアプローチです。

  • もう 1 つのアプローチは、ビジネス グループと協力し、ビジネスに不可欠なドキュメントおよびソリューションの一覧を提出するようにビジネス グループに依頼するアプローチです。ビジネス グループで障害復旧計画が策定されている場合は、その計画にこの一覧が含まれている場合もあります。このアプローチの欠点は、一覧が最新のものではない可能性があることです。このアプローチを選択する場合は、テレメトリ データを使用してこれらの一覧の精度の向上を図る必要があります。

一覧を最初から作成するかどうかにかかわらず、ビジネス グループとの協力は不可欠です。テレメトリ ツールでは、ビジネスにとって重要なドキュメントまたはソリューションを特定できません。ツールでは、利用状況に基づいて重要なドキュメントまたはソリューションの手がかりを得ることができますが、それらのドキュメントおよびソリューションのビジネスにとっての重要性はビジネス グループにしか判断できません。テレメトリ データのみに基づいて判断すると、年度末売上レポートや年間業績レビュー テンプレートなどの特定の時期に使用されるソリューションや、データ収集時に使用されていないその他のドキュメントを見落とす可能性があります。

既存の Office クライアントに テレメトリ エージェントを展開する計画を立案します。エージェントを展開する前の注意点がいつくかあります。 エージェントの展開における要件については、Office テレメトリ エージェントを参照してください。テレメトリ ダッシュボードをまだ展開していない場合は、テレメトリ ダッシュボードを展開する を参照してください。

組織全体のクライアント コンピューターのうち、約 20% を監視することをお勧めします。組織内の各グループで使用されている業務分野別ソリューションを特定できるように、監視対象のサンプルには各ビジネス グループを代表するユーザーを含める必要があります。サンプルには、熟練ユーザー、および Office 2013 の試験運用に興味を示しているユーザーを含めます。グループまたは組織単位 (OU) 全体を監視する方が、参加する個別のクライアント コンピューターを選択するよりも制約が少なく、簡単な場合があります。小規模な組織では、すべてのクライアント コンピューターを監視してもかまいません。

人事、法務、財務などの一部のビジネス グループでは、個人のファイルや機密ファイルがテレメトリ データで公開されることが問題となる場合があります。テレメトリ ダッシュボードには、このようなデータが公開されないようにする方法がいくつか用意されています。たとえば、テレメトリ エージェントを構成して、ファイル名およびタイトルを難読化できます。また、特定のアプリケーションのデータがレポートされないようにすることもできます。プライバシー設定の詳細については、「テレメトリ ダッシュボードでのプライバシー設定の管理」を参照してください。ビジネス グループと共にプライバシー オプションを確認して、テレメトリ ダッシュボードでレポートされないようにする Office データの種類を決定します。

クライアントにテレメトリ エージェントを展開する場合、クライアントを表すラベルを最大 4 つ指定できます。これらのラベルは、ダッシュボードでデータをフィルタリングして、個別のビジネス グループ、特定の種類のユーザー、特定の地理的な場所にいるユーザーなどに絞り込む場合に役立ちます。ビジネス グループと協力して、この一覧を策定します。ラベルの構成方法の詳細については、「Office テレメトリ エージェントの有効化および構成」を参照してください。

合理化フェーズの目標は、ビジネスに不可欠な Office ドキュメントおよびソリューションを特定することです。傾向を調査する少なくとも 1 日前には、テレメトリ ダッシュボードでデータを収集することをお勧めします。

以降のセクションでは、データの解釈方法、ビジネス グループとの協力方法、およびテスト対象の決定方法について説明します。

データがテレメトリ ダッシュボードに収集され始めたら、利用状況の傾向の調査を開始できます。調査を開始するにあたってのヒントをいくつか示します。

  • 代表するユーザーが含まれている必要があるにもかかわらず、そのようなユーザーが含まれていない部門やグループがないか確認します。たとえば、使用されている財務用ソリューションがない場合は、財務グループの監視を有効化するのを忘れている可能性があります。

  • 10% を超えるユーザーが使用しているドキュメントおよびソリューションを検索します。これらは追加で評価を行う候補となります。

  • 3 人以上のユーザーが使用しているドキュメントを検索します。共同編集が行われる傾向があるか、これらはテンプレートであるかを確認します。ドキュメントよりもソリューションの方が多く共有されている場合もあります。

  • ユーザー数は少なくても、重要であることがわかっていて将来追跡する必要があるソリューションをメモしておきます。

  • ドキュメントがどこから開かれているかを確認します。これにより、電子メール メッセージの添付ファイルと、頻繁に編集されるドキュメントとを区別できます。

  • 同じソリューションまたはドキュメントで異なるファイル サイズが複数あるかを確認します。複数ある場合は、複数のバージョンが使用されていることを示している可能性があります。これらは、将来統合する候補となります。

この時点で既にビジネス グループと協力して、ビジネスに不可欠なドキュメントおよびソリューションを特定している場合もあります。ビジネス グループから提出された一覧と、テレメトリ ダッシュボードに示された利用状況データを比較します。利用状況データが、ビジネス グループから提出された一覧を裏付けるものとなっているかを確認します。重要なドキュメントやソリューションであることが利用状況データからは判断できない場合、これらが特定の時期に使用されるものであるかどうかを確認します。たとえば、一部のソリューションは、会計年度末に向けてより多く使用される場合があります。ユーザー受け入れテストの計画を調整できるように、利用状況データとの違いについて再度ビジネス グループと話し合うことをお勧めします。

まだビジネス グループと協力して作業していない場合は、この段階で連絡をとります。初期の利用状況データから、テストおよび修復の候補となるドキュメントおよびソリューションの一覧を作成できます。ただし、高、中、低などの優先度レベルを割り当てるのではなく、実施するテストの種類によってドキュメントおよびソリューションをランク付けすることをお勧めします。ビジネス グループに対して、次の表に示す選択肢のうちのいずれかを割り当てるように依頼します。

テストする Office ドキュメントおよびソリューションの分類

IT 部門が責任を持っており、必ず動作させる必要があるドキュメントおよびソリューション

初日に準備ができるように事前対応的にテストする

これらのドキュメントおよびソリューションは、Office 展開の初日に使用できるように、テスト、修正、および準備します。

ユーザーから依頼があった場合に IT 部門が修正するドキュメントおよびソリューション

事後対応的にテストする

これらのソリューションは、ユーザーがヘルプ デスクに問題を報告した場合にのみ修正します。

どのユーザーも重視していないドキュメントおよびソリューション

テストしない

ビジネス グループに連絡し、ドキュメントおよびソリューションを分類するように依頼したときに、ビジネス グループは、すべてのドキュメントおよびソリューションを初日に準備できるようにテストする必要があると主張する場合があります。Office の互換性に関する専門家である Chris Jackson は、 Office 互換性テストにまつわるコストについて TechNet マガジンに記事を執筆しました。事後対応的なテストを正当化し、Office の移行にしばしば悪影響を与える感情的な懸念を払しょくするためにこの情報を使用できます。詳細については、Microsoft Office: Office の互換性に関する数学 を参照してください。

検出および合理化フェーズが終わったら、初日に準備する必要があるドキュメントおよびソリューションの Office 2013 との互換性のテストを開始します。確認フェーズの目標は、ユーザーが利用する環境でソリューションおよびドキュメントが動作することを確認することです。ソリューションやドキュメントにバグがないことを確認するのではなく、バグによってユーザーが作業できなくなることがないことを確認します。

この作業を自動的に行うツールはありません。Office 2013 で作業することによってドキュメントおよびソリューションをテストするようにユーザーに依頼する必要があります。これは、ユーザー受け入れテストと呼ばれ、必ず行う必要があります。クイック実行によってユーザー受け入れテストを簡単に実施できるようになり、ユーザー受け入れテストを試験運用に変えることができます。ユーザーに対して、新しいバージョンの Office でドキュメントおよびソリューションを使用するように促し、問題が発生した場合は以前のバージョンの Office を使用するようにアドバイスします。

このフェーズでは、テレメトリ データも役立ちます。テレメトリ データから、機能しないドキュメントやソリューション、およびどのように機能していないかを判断できるためです。テレメトリ ダッシュボードには安定性と不安定性の傾向が表示されるため、ドキュメントまたはソリューションを更新した場合にそれらの安定性をすばやく確認できます。

ユーザー受け入れテストを計画および監視するのに役立つガイドラインをいくつか示します。

ビジネスに不可欠なドキュメントおよびソリューションの所有者は、ユーザー受け入れテスト参加の有力な候補者です。各部門では、検出フェーズで生成した一覧を確認することによって所有者を特定できます。特定できない場合は、テレメトリ データを使用して、最もアクティブなユーザーを特定します。

各部門の技術に詳しいユーザーを参加させることも必要です。これらのユーザーは、ソリューションまたはドキュメントの動作のしくみを詳しく把握している可能性が高いためです。また、さまざまな職務階級、役割、場所の多様なテスターを参加させます。

ユーザー受け入れテストの重要なルールに、テスト環境を可能な限り運用環境に似た環境にするというルールがあります。テスト環境は、いくつかの方法でセットアップできます。運用ドメイン内に組織単位 (OU) を別途セットアップした事例や、運用環境と同一のテスト環境を別にセットアップした事例があります。テスト環境は、簡単にセットアップでき、ユーザーが簡単にアクセスできるものであることが必要です。テストを実施するうえでの障害を取り除き、テストを行う時間がないと訴えるユーザーからのクレームを最小限に抑えることが目標となります。既にテスト環境がプロビジョニングされ、集中管理されている組織では、そのテスト環境を使用します。まだテスト環境が用意されていない場合は、テスト環境をセットアップせずに、クイック実行を使用します。

クイック実行を使用すると、リスクを負わずに、運用環境でテストを行うメリットを最大限に享受できます。クイック実行を使用して Office 2013 をインストールすることによって、ユーザーは、以前のバージョンの Office を Office 2013 と共に実行できます。互換性などの問題が発生した場合、ユーザーは、以前のバージョンの Office を使用して引き続き作業できます。

クイック実行を使用すると、ユーザー受け入れテストを簡単に試験運用に変えることができます。以前の環境を維持したまま新しい環境を展開し、テレメトリ ダッシュボードを使用して Office 2013 のクイック実行展開の状態を監視できます。使用されているビルド、およびレポートされている互換性の問題を確認できます。テレメトリ ダッシュボードを使用してユーザー受け入れテストおよび試験運用を監視することによって、新しいバージョンの影響を把握できないという不安を和らげることができます。ビジネス グループおよび Office ソリューションの所有者に対して、展開の状態以上の情報を提供できます。

重要重要:
Office のサイド バイ サイド インストールは、運用環境のための長期的なソリューションとしてではなく、ユーザー受け入れテストおよび試験運用のための一時的なソリューションとして使用することをお勧めします。運用展開が開始されたら、以前のバージョンの Office を段階的にアンインストールするように計画します。

クイック実行の詳細については、クイック実行の概要 を参照してください。

ここまでの作業で、初日に準備する必要があるソリューションを特定し、ユーザーによるそれらのソリューションの Office 2013 でのテストが完了しました。ユーザーからのバグ レポート、およびテレメトリ ダッシュボードのデータによって、Word 2013、Excel 2013、および Outlook 2013 が既存の Office ドキュメントおよびソリューションに対してどのように動作しているかがわかります。修正または抑制する必要があるバグおよびその他の問題についての情報を収集し、社内開発者およびビジネス グループ マネージャーと協力して修復計画を作成します。社内で開発された場合は、ソリューションの使用を停止するか、またはソリューションを修正するかを決定する必要があります。サードパーティ製品の場合は、ベンダーと協力して更新バージョンを入手するかどうかを決定する必要があります。

テレメトリ ダッシュボードおよびテレメトリ ログは、両方ともこのプロセスで役立ちます。付加的な修正や新しいバージョンの Office ソリューションを展開して、Word 2013、Excel 2013、および Outlook 2013 の正常性を監視できます。開発者は、Office テレメトリ ログを使用して、既存のドキュメントおよびソリューションと共に Word 2013、Excel 2013、および Outlook 2013 を使用した場合にローカル コンピューターで発生する互換性のイベントを監視できます。

開発チームは、テスト プロセスを支援する自動テスト ツールを用意している場合があります。初日の準備においては、展開を妨げる問題のみを通知および修正するようにこれらのツールを調整しておくことが重要です。少なくとも初日においては、ユーザーの日常業務に影響しないバグを修正する必要はありません。これらのソリューションは、必要に応じて後で修正できます。

メモメモ:
ベンダーのサポートに関する声明を互換性テストの代わりとして利用できるかどうか疑問に思う場合は、Chris Jackson による Microsoft Office: Office の互換性に関する数学 を参照してください。この記事では、ベンダーのサポート状況を調査することのコスト上のメリットとデメリットについて説明しています。

管理フェーズの目標は、テレメトリ ダッシュボードを使用して Office 利用状況およびアドインを監視し、ユーザーが Office 2013 に移行する準備を行うことです。

Office 2013 を展開したら、Office の正常性および利用状況の傾向を確認します。これにより、Office に対する投資の価値を引き出し、将来の展開における見通しを得ることができます。たとえば、使用されている ActiveX コントロールを把握すると、将来の Windows の更新に役立ちます。Excel が単にスプレッドシート ツールとしてだけではなく、データ接続を使用するフロントエンド アプリケーションとしても使用されているかどうかや、新しい Office ソリューションによる環境への影響などを把握しておきます。次に Office 展開を行うときは、何が使用されており何が重要であるかを正確に把握しているので、検出プロセス全体をスキップできる可能性があります。

以降のセクションでは、管理フェーズについてのいくつかのガイダンスを示します。

Office 2013 によって使用されているソリューションを監視すると、読み込みに時間のかかるアドインや、頻繁にクラッシュするアドインを見つける場合があります。また、組織内で使用すべきではないアドインを見つける場合もあります。「Office 2013 におけるアドイン管理の機能向上」で説明したように、Office 2013 で使用されているこのようなアドインを管理できる新しいグループ ポリシー設定があります。

新しいアドイン管理ポリシー設定は、次の Office 2013 アプリケーションで使用できます。

  • Access 2013

  • Excel 2013

  • InfoPath 2013

  • Word 2013

  • Outlook 2013

  • OneNote 2013

  • PowerPoint 2013

  • Project 2013

  • Publisher 2013

  • Visio 2013

テレメトリ ダッシュボードには、これらの設定を構成するためのインターフェイスが備えられています。[ソリューション] ワークシートで、ページの上部にある [アドインの管理] リンクを選択すると、[アドインの管理] ワークシートが表示されます。このワークシートで、各アドインのテレメトリ データを確認し、各アドインを制御するためのグループ ポリシー設定を選択できます。ワークシート上の指示に従ってスクリプトを生成し、このスクリプトを実行すると、GPO を Active Directory の組織単位に適用できます。

将来は、アドイン管理設定を使用するのに役立つコンテンツの提供を計画しています。当面は、これらの設定をテレメトリ ダッシュボードで構成するか、または Office 2013 Administrative Template files (ADMX/ADML) and Office Customization Tool をダウンロードできます。

サポートされている各 Office 2013 アプリケーションに対して、個別のアドイン管理設定があります。これらの設定は、次のパスにあります。

  • [ユーザーの構成]\[管理用テンプレート]\[Office 2013 アプリケーション名]\[その他]\[管理対象アドインの一覧]

  • [ユーザーの構成]\[管理用テンプレート]\[Office 2013 アプリケーション名]\[その他]\[非管理対象のアドインをすべてブロックする]

アドイン管理プロセスの概要については、ブログ記事 Let's manage add-ins using Telemetry Dashboard を参照してください。

Office 2013 では、以前のバージョンのアプリケーションで作成された Word、Excel、および PowerPoint ドキュメントを開く場合に、互換モードが自動的に使用されます。ユーザーが互換モードでドキュメントの作業を行う場合は、以前のバージョンの Office を使用する他のユーザーでもすべての編集機能を使用できるようにするために、Office 2013 の新機能や機能向上が利用できなくなります。互換モードでは、ドキュメントのレイアウトも保持されます。

Word 2013、Excel 2013、および PowerPoint 2013 では、Office 2003 またはそれより前のバージョンの Office で作成されたバイナリの Office ドキュメントを開く場合に互換モードが使用されます。Word 2013 では、Word 2007 および Word 2010 で作成された OpenXML ドキュメントを開く場合にも互換モードが使用されます。

全体的な Office 2013 トレーニング計画の一環として、ユーザーに対して互換モードのしくみについてのガイダンスを提供する必要があります。互換モードについてのエンドユーザー向けトピックは、Office.com で「2013 互換性」と入力して検索できます。

[ファイル作成時の既定の互換モードを設定する] ポリシー設定を使用して、Word 2013 で新規 Word 文書を作成するときに使用される既定の互換モードを管理できます。Word 2007 または Word 2010 で使用されているレイアウト機能を使用するアドインまたはマクロがある場合にこの設定が必要になることがあります。このポリシー設定を有効にすると、新しい Word 文書と互換性がある Word のバージョン (2003、2007、2010、または 2013) を指定できます。この設定では、4 つの構成オプションを使用できます。

  • Word 2003 このモードでは、Word 2003 と互換性のない Word の機能が無効になります。

  • Word 2010 このモードでは、Word 2007 と互換性のない Word の機能が無効になります。

  • Word 2010   このモードでは、Word 2010 と互換性のない Word の機能が無効になります。

  • 完全機能モード   このモードでは、すべての新機能が有効なままになります。これは、Word 2013 の既定の設定です。

Word 2003 オプションを選択すると、Word 2007、Word 2010、および Word 2013 の機能が無効化された新しい Open XML ファイルを作成するように Word が構成されます。このように構成した場合、Open XML ファイルには Word 2003 ユーザーが編集できない内容は含まれません。ただし、Office 2003 のユーザーが Word 2003 と互換性のある Word Open XML ファイルを編集するためには、互換機能パックをインストールしておく必要があります。

完全機能モードを選択した場合、Word 2013 の新機能を Word 2007 または Word 2010 で使用できないことを除いて、Word 2007 および Word 2010 のユーザーには影響がありません。これらのユーザーは、Word 2013 文書を開いて編集できます。

Office 2013 の管理用テンプレートは Microsoft Download Center からダウンロードできます。[ファイル作成時の既定の互換モードを設定する] ポリシー設定は、[Microsoft Word 2013]\[Word のオプション]\[保存] にあります。

Office 2013 と古いバージョンの Office との並行実行は、パイロット テスト中に短期的に互換性を確保するためのソリューションとしてのみ行うことをお勧めします。試験運用フェーズが終了し、製品展開を開始すると同時に、Office 2013 を実行する運用コンピューターから以前のバージョンの Office を削除し始めることをお勧めします。これにより、更新または修復の操作の後にファイルの種類の関連付けが適切な状態ではなくなり、問題が広がることを防止できます。

ヘルプ デスクに対して Office 2013 についての教育を行い、ユーザーをサポートできる準備を整える必要があります。次に、手早く情報を入手するためのリソースを示します。

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