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IT スキル: スパイ合戦: IT 部門とビジネス部門の分裂を乗り越える

IT 部門とビジネス部門の目標が一致したときにビジネスは成功します。ですが、この境地に辿り着くことは、皆さんが考えているよりも困難です。

Joshua Hoffman

IT 業界では、何年にも渡って、多くの議論が交わされてきました。たとえば、最適なネットワーク プロトコル、適切な Web ブラウザー、適切なストレージ ソリューション、最も効率が良い OS はどれかという議論です。ですが、IT 部門とビジネス部門の役割についての議論ほど、長期に渡って熱い議論が交わされて、知的職業に従事している IT プロフェッショナルにとって重要なトピックはありません。

このトピックについての議論 (つまり、対立関係) が始まった時期は定かではありませんが、年月を重ね、ビジネスの基盤における IT の重要性が増すほど、この関係の緊張が高まっています。問題となっているのは、だれが判断を下して、どのようなアプローチを採用して、どのソリューションを採択するかということです。IT は、単なるコスト センターや価値を創出する手段なのでしょうか。それから、最も根本的かつ不朽の論点は、IT がビジネスを促進しているのか、それともビジネスが IT を促進しているのかということです。

この現在進行形で未解決の対立が多くの組織で継続されていることは、だれにとってもメリットがありません。IT とビジネスの意識が対立ではなくコラボレーションに向けられるようになれば、それぞれのイニシアチブがより効率的になります。同じ目標を達成することを望む気持ちが必要です。おそらく、この願望は存在しているので、ほとんどの組織では、単に議論を見直す必要があります。

IT サービスの重要な特質だけでなく、IT サービスが最終収益にもたらす価値を伝達するためには、組織は、どのように役割を再位置付けしたら良いのでしょうか。IT 部門とビジネス部門のマネージャーが行う話し合いを生産的なものにするには、どのような伝達手段を用いれば良いのでしょうか。また、IT プロフェッショナルが、スキルを向上して、組織でより大きな役割を果たせるようにするのに役立つリソースには、どのようなものがあるのでしょうか。この記事では、これらのトピックを取り上げます。

コストと価値

この対立の主な論点となっているのは、IT が組織にとってコストであるかどうかという点です。IT は、単にハードウェア、ソフトウェア、ケーブル、電力などに対して支払った総額に過ぎないのでしょうか。IT は最終利益に財務的な価値を直接もたらすのでしょうか。これが主な論点です。

IT では、組織のコストを削減することが可能で、多くの場合、実際にコストを削減しています。また、ビジネス プロセスを強化することでも、コスト削減に一役買っています。この労力の価値を実現して評価を得るうえで重要な役割を果たしているのが、マーケティングの仕事です。

TechNet マガジンの記事「困難な時代に IT を改革する (英語)」で、Romi Mahajan は、IT が多くの人の生活必需品になっていると述べています。IT 部門は、設備に対応する部門となり、仕事を続けられるようにして、設備が機能するようにする役割を担っています。この役割を担うにあたって、この認識に対応し、どう見ても苦しみを大袈裟に表すために、IT プロフェッショナルは意識的な努力を買って出る必要がありました。

話はわかりやすく伝える必要があるので、伝達手段が重要となります。多くの IT プロフェッショナルは、技術用語を使いがちです。技術用語を使用した方が、想定外の動作をしている状況や理由を簡単に説明できます。また、実証可能なビジネス上の価値よりも、帯域幅、スループット、処理能力などで価値を表す方が簡単です。ただし、技術用語を使用すると、ビジネス部門のリーダーは、IT 部門のマネージャーが、今後の予算の見通しについての話し合いを聞いているときと同じ感覚に陥り、耳を貸さなくなる可能性が高くなります。

IT の価値は、技術的なベンチマークを超越したところにあります。そのため、「新しいテクノロジを導入したことで、組織のユーザーにもたらされたメリット」、「ナレッジ ワーカーは、これまでより緊密に顧客やパートナーと連絡を取れるようになるのか」、「新しいツールによって、ナレッジ ワーカーの作業は、どのように簡略化されるのか」、「どのくらいの時間を節約できて、この節約した時間を、より重要な目標達成のために費やすことができるのか」というような一般的な言葉で説明するのが適切です。

学習時には、専門的能力の伸ばすことを目標として話を伝えてください。最新バージョンの SQL Server や Exchange Server のトレーニング プログラムは簡単に受講できます。IT の価値を一般的な言葉で伝達する能力を身に付けるのは難題のように思えるかもしれませんが、長い目で見ると、大きなメリットを得られる可能性が高いです。

ソリューション指向のアプローチ

IT の価値を見直して、ビジネス部門の同僚と、より有意義な会話を交わせるようにしましょう。IT に関するソリューション指向の会話を交わすことで、プロセスの早い段階でビジネス部門の同僚と作業関係の本質を深めることができます。

Romi Mahajan が執筆した TechNet マガジンの別の記事「インターネット成功の影の功労者である IT」では、IT は寡黙であることが最善とされていると述べています。つまり、IT は、自分だけのソリューションであってはならないということです。IT では、私たちの目標を一括で実現するための、より良い手段を提供する必要があります。たとえば、ビジネス ユーザーは、Exchange Server を使用して、さらに効率的にメッセージを送信できる方法を必要としているわけではなく、顧客、同僚、およびパートナーと連絡を取ることに関心があります。ビジネス ユーザーは、SharePoint 内部のしくみよりも、最善のビジネス インテリジェンス (BI) にアクセスできることに興味があります。

ビジネス部門が抱えていて解決する必要がある問題について話し合うときに、ビジネス部門の同僚に積極的に同席してもらうようにすれば、双方が IT を問題解決のツールと見なすようになります。当然だと思われるかもしれませんが、このような話し合いでも、食い違いが生じることが少なくありません。たとえば、ビジネス部門から BI が必要だという要請があり、IT 部門が BI プラットフォームを展開したとします。これはソリューション指向の話し合いではありません。というのも、ビジネス部門では BI が必要だと考えていますが、IT 部門では、IT 部門が最適だと判断した技術的なソリューションを提供するからです。

これは、IT 管理者と IT 部門の同僚が、ビジネス部門の同僚とより有意義な関係を構築する好機です。この機会を活用して、組織が抱える潜在的なニーズを直接満たす、より良いソリューションを提供できます。

まず、BI プラットフォームを必要とするビジネス部門が抱えるニーズの背後にある根本的な動機を特定するために、質問を投げかけます。「経営幹部に主要業績評価指標を提示するつもりですか」、「外回りの営業担当者の詳細な販売データが必要ですか」、「ビジネス部門では、BI 機能を使用して、どのような操作を達成しようとしているのですか」というような質問です。目的と手段に加えて、理由に重点を置くと、ビジネス部門により良いソリューションと価値を提供できます。

妥協点を取る

この分裂を乗り越えるには、歩み寄りが必要です。IT 部門とビジネス部門の意見の妥協点を取るのが公平です。ビジネス部門のリーダーが IT プロフェッショナルと協力して、この溝を埋める方法は多数あります。最善の策は、早い段階かつ頻繁に組織の戦略計画に IT プロフェッショナルがかかわるようにすることです。

戦略計画を立てる段階で IT 部門が関与しないことは、IT 部門とビジネス部門の対立を深めるよくありがちな落とし穴の 1 つです。ビジネス部門のニーズや期待値を聞かされると、IT 部門は面食らうことがあります。IT 部門では、計画が実現可能、現実的、またはビジネス部門のニーズに適していることを確認する役割を果たす機会が必要です。

戦略に関する話し合いの早い段階で IT 部門がかかわるようにすると、IT 部門がビジネス部門のニーズについての理解を深められるだけでなく、より正確な予算とスケジュールを出せるようになり、より現実的な期待値を設定する機会を得られます。IT 部門とビジネス部門の分裂を乗り越えるためにビジネス部門の同僚が取れる最大の対策は、早い段階で IT 部門が関与する機会を提供することです。

この分裂は、ビジネス部門と IT 部門の話し合いの方法、話し合いの組み立て方、話し合いで使用する言葉などに起因しています。そのため、この問題は、ツール、ユーティリティ、または証明書を使用しても解決できません。同僚と連絡を取ったり、対応したりする方法などのソフト スキルが必要になります。この点に関して、IT 部門とビジネス部門の目標を調整するのに役立つリソースがあります。

これは人間による問題なので、人間による解決が必要です。両部門のネットワークの構築、コーチングやメンターの実現は、この溝を埋めるうえで非常に役立ちます。皆さんの組織では、メンター制度やコーチング プログラムが実施されていますか。実施されていない場合は、ぜひ実施して、より良いコミュニケーションと理解を実現するためのきっかけを作ることから始めてみてください。メンター制度とコーチングは、部門をまたいで行われるようにし、IT プロフェッショナルとビジネス部門の同僚が双方から学べるようにします。

LinkedIn などのソーシャル ネットワーキングによるピア グループも貴重な資産です。ソフト スキルは、経験によって発達します。戦略に関する成功体験だけでなく失敗体験を共有することは、専門能力を伸ばすうえで非常に有益です。有名なビジネス スクールや大学の教育プログラムを継続して受講することも、このようなスキルを伸ばすのに役立ちます。

Microsoft Business Web サイト (英語) では、Business Insights ニュースレター (英語) など、多数のリソースが公開されています。他には、ホワイト ペーパー、テクノロジ管理の専門家との対談などのリソースが公開されています。特に「費用便益分析の予想外のメリット(英語)」は、何年も前に公開された記事ですが、応用できる複数の教訓があります。

IT プロフェッショナル向けのリソースは、どのようなトピックでも、ツールを伴わなければ十分であるとは言えません。ツールを使用する必要があると感じている場合は、ぜひ、Return on Investment または Total Cost of Ownership (TCO) Calculator を使ってみてください。Windows Azure 対応の TCO Calculator など (ページの右側からアクセスできます) のツールを使用すると、ビジネス部門と IT 部門の間で行う話し合いの現実的な開始点を見つけることができます。

IT 部門とビジネス部門の分裂は、十分すぎるほど長期に渡って存在しました。朗報は、この対立に明確な解決策があることです。この溝は確実に埋めることができます。IT 投資の価値を立証する措置を積極的に講じ、ソリューション指向のアプローチを採用して、組織の戦略計画の早い段階で、計画に関与するようにしましょう。そうすることで、IT 管理者と IT 部門は、今後も組織が成功を収めるうえで重要な役割を果たすことができます。

Joshua Hoffman

Joshua Hoffman は、TechNet マガジンの前の編集長です。現在は、フリーランスで執筆活動とコンサルティングを行っており、クライアントにテクノロジとそれぞれのクライアントに合ったマーケティング手法に関するアドバイスをしています。また、市場調査の分野の成長と強化に注力している ResearchAccess.com (英語) で編集長を務めています。現在、ニューヨーク市に住んでいます。

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