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ビジネスにおける IT: 第 3 の C

現在、IT の世界には、C で始まる 2 つの大きな動向がありますが、3 つ目の動向は、まだあまり注目されていません。

Romi Mahajan

今や、だれもが C で始まる 2 つの大きなテクノロジの動向を話題にしています。これに気付かないでいるには、世間から離れて暮らすよりほかないでしょう。その動向とは、クラウド (Cloud) とコンシューマライゼーション (Consumerization) です。今の時代に、この 2 つの概念を無視することは、事実上不可能です。

これらの概念は、まったく新しいものでしたが、短期間で、すっかりおなじみのものになりました。IT 業界の評論家が口を開けば、1 分もたたないうちに、2 つの動向のうち、少なくともどちらかには必ず言及するでしょう。また、IT 業界では、すべての企業が、クラウド サービスやコンシューマー デバイスの統合において他に先んじるために、懸命に努力しています。"アイデアの領域" は、クラウド コンピューティングと IT のコンシューマライゼーションに関する言葉であふれています。

それでは、3 つ目の C についてはどうでしょうか。3 つ目の C とは、他の 2 つを結び付けるもの、つまり "文化 (Culture)" です。ですが、IT 業界は、最初の 2 つの C が持つ大きな可能性を引き出せるように、業界の文化を改変しようとは、あまりしていないようです。

文化の変革

IT 業界は、中身のない言葉に振り回されることが多く、深く考えて行動することが少なすぎます。コンシューマライゼーションという確かな動向があると論じるのは、簡単です (Apple と Google の台頭が、その証拠です)。その動向により、IT 業界にどのような変化がもたらされるかを議論するのも、それほど難しくはありません。しかし、コンシューマライゼーションが、組織の青写真と現代企業の文化にとって、何を意味するのかを理解するのは困難です。

クラウドやコンシューマライゼーションに関して自らの優位性を主張する企業では、文化人類学者を大量に雇用しているでしょうか。雇用および解雇のあり方、"人事評価" の方法、および社内の方針を修正しているでしょうか。"ピーターの法則" にとらわれるのをやめ、私たちが働いているこの新しい時代では、経験が成功に近づくための要素になるという考えを支持するために、熱心に取り組んでいるでしょうか。現時点では、IT 業界で、こうした取り組みが行われていることを示す証拠は、ほとんどありません。

IT 業界に限らず、文化を変えるには、皮肉で矛盾するような改革が必要です。多くの場合、意思決定権を持つ統括者は、これまでに学んできた知識を自主的に捨て、自分よりも明らかに経験が少ない者に権限を譲り、身を引く必要があります。文化の変革には、皇帝が退位し、将官が伍長の話を聞き、親が子に知恵を求める必要があります。

また、文化の変革には、アイデアの産出と実行の明確な結合が必要です。ですが、この結合は、創造力を吸い取り、否定するだけの中間管理職という "保守層" によって、ずいぶん昔に断ち切られました。この言い方は、おおげさかもしれませんが、IT 業界も、クラウド コンピューティングやコンシューマライゼーションなどの動向がもたらす画期的な変化を、同じくらい誇張しています。

文化を改変しなければ、最初の 2 つの C が持つ可能性を十分に引き出せないおそれがあるため、企業文化は、今すぐ、新しい動向に適応する必要があります。懸命に取り組めば、だれもが議論し、向き合っている激動の時代において、他に先んじることができるでしょう。

IT 部門は、組織の他の部門よりも迅速に文化を変革できると、確信しています。IT 部門には、絶えず顧客から情報が入ってくるというのが、その 1 つの理由です。それに比べて、マーケティング部門、財務部門、およびオペレーション部門には、顧客から情報を得る機会が、あまりありません。また、私たちが議論している多くの変革は、IT に導かれてきたということもあります。

IT の世界にとっては、刺激的な時代です。数年で帝国が盛衰するような急速な変化や、IT 関連の仕事の複雑さなど、これらはすべて大きな可能性を示唆しています。ただし、IT プロフェッショナルが、この機会をうまく生かすには、熟慮、完全性、一貫性、および知恵が必要です。

文化の変革は、IT プロフェッショナルとして慌ただしい生活を送るという犠牲を伴う場合があります。テクノロジの仕事に就いている人の多くには、よく考え、変化し、これまでの知識を捨て、新たに学び直す時間が、ほとんどありません。しかし、これらを実行しない限り、私たちは全員で進歩を妨げ、夢を失敗に終わらせることになります。

次に IT 業界の動向に関する記事を読んだときには、所属する組織の文化について、よく考えてみてください。「夢を本当に実現するには、今の自分をどう変えればよいだろう」と、自問してみてください。これは現実を突き付けられるような課題ですが、大きな見返りがあります。その見返りは自分自身だけでなく、業界にも与えられます。この時点で、第 3 の C に取り組むには、4 つ目の C を十分に持っている必要があるということに気付くでしょう。それは、"勇気 (Courage)" です。

Romi Mahajan

Romi Mahajan は、KKM グループの代表取締役です。KKM に加わる前は、Ascentium Corporation のマーケティング最高責任者でした。Romi はテクノロジとメディア回路に関する著名な講演者で、さまざまな諮問機関の委員を務め、また、年間 12 個以上の業界イベントで講演を行っています。

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