IT 管理: IT の社会的尊厳

IT 担当者の社会的尊厳の改善を求めることは、イノベーションと生産性を礎とする IT の文化を維持するうえで非常に重要なことです。

Romi Mahajan

社会的尊厳は、あらゆる偉業の根幹にある基本的で普遍的な概念です。社会的尊厳が向上する仕事は、楽しくてやり甲斐があるでしょう。仕事が楽しいと感じる人は、思考が柔軟になり、高い創造性と生産性を発揮します。社会的尊厳の向上がなければ、仕事は単なる義務になります。このような環境で作業する人は、創造性や柔軟性を失い、生産性も低くなります。

尊厳および敬意と言った基本的な価値観については、IT の世界と他の専門職で何も変わりはありません。にもかかわらず、近ごろ IT 担当者の社会的尊厳は、根本的な脅威にさらされています。今こそ、IT 担当者の地位向上と企業社会全体のために、IT 担当者は社会的尊厳の改善を要求するときなのです。

過去 10 年間、IT 担当者は、最前線に立ってきました。社会的尊厳に対する脅威は、さまざまな方面からもたらされます。そのため IT 担当者は、少ないリソースで多くのものを生み出す、お金を使うのではなく、お金を稼ぐ、サービス レベル アグリーメント (SLA) に留意しながら学習と成長のための時間を作る、日々自分の存在価値を守ることについて絶え間ぬ努力を続けてきました。これは IT 担当者に恒常的に課せられている使命です。

その一方で、デバイス、チャネル、およびプラットフォームの急激な増加により、一流の IT 担当者にも試練が課されています。私の見解では、IT 担当者は今回も底力を発揮するはずです。実際、これまで何度も自ら道を切り開いてきました。実にレトリック的な IT 業界についての浅い見方ではありますが、世論形成者は、私と同じようには考えていないようです。

最も基本的なところでは、社内の別の組織との間には、いつも走っている緊張があります。営業部門とマーケティング部門のスタッフの仲が良くないことが多いように、開発者と IT 担当者の仲も良くありません。また、特に会計部門や法務部門と一緒に仕事をすることを好む人はいないでしょう。誤解から起こっている状況ですが、このような先入観は、すべての企業で見られます。ですが、問題の原因は、そこではないような気がします。

問題の原因の本質は、IT 部門以外のスタッフが IT 部門に対して抱いている先入観にあるように思えます。IT 部門以外のスタッフは、IT 担当者に対して、次のようなイメージを持っています。

  • "おたくであること" と内向的なことを良しとする自分たちとは違う文化を持っている
  • ビジネスに関与していない
  • 浮世離れしたタイプで顧客を理解していない
  • コマンドを扱うことと No というのが好きな管理者

また、IT 部門以外のスタッフは、感覚的に IT 部門が次のような存在だと思っています。

  • ひたすら奉仕する
  • 何でも知っていて、すぐ対応してくれる
  • すべてのユーザーのニーズと気まぐれに耳を傾けてくれる

これらをすべてまとめると、IT 担当者は本質的に、組織において特別な役目は何も果たさない画一的な自動制御ロボットの集団だと思い込まれていることがわかるでしょう。他の人から見ると、IT 担当者は、人に胸を張れるような仕事はしていないことになります。これは永遠に捨て去られるべき危険な考え方です。

社会的尊厳の改善を求める

ここまでに記載した大衆イメージに反して、IT 担当者は精力的です。IT 担当者は、すべての企業で最も創造的な部門の 1 つに自分たちが所属していることを絶えず実証しています。また、IT 担当者は、ビジネスを前進させています。一般論から外れた社内神話だとしても、このような要素の組み合わせが、会社組織における高い尊厳を生み出します。

より正確なフレームワークの中では、IT 部門には次のような特徴があるといえます。

  • 恒常的革新: IT 部門は、テクノロジの変化と顧客対応 (多くの場合は、社内顧客対応) の最前線に立っています。顧客対応については、営業部門を除く、他の部門よりも頻繁に対応しています。IT 担当者は DIY (自分でやる) 精神を持ち合わせており、毎日のように自分たちで修理を行い、新しいものを作り出しています。
  • 説明責任は大歓迎: IT 部門は、顧客にサービスを提供する明確なプロセスを保有している数少ない部門です。IT 部門の説明責任は、結果が測定しやすく、実際よく測定が行われています。これは IT 部門を他の部門と基本的に差別化する要素となっています。
  • ビジネス活動を維持するための絶え間ぬ貢献: IT とビジネスは切り離せないものになりました。ある程度の規模の企業または成功を収めている企業の中で、IT が生産性の基盤となっていない企業を見つけるのは非常に困難です。

企業の他の部門では、上記の特徴が自分たちの部門に当てはまると誠実に言えるでしょうか。これらの特徴は高い社会的尊厳を獲得するための要因になることは間違いありません。

ビジネス活動を円滑に行うための根底となる役割を IT が担っているにもかかわらず、IT とビジネスの間には文化的な隔たりがあるという先入観が存在しています。テクノロジの力を借りずに仕事をしていたのは、遠い昔の話です。当時、テクノロジは、たいてい研究開発部門などに隔離され、企業の他の部門からは切り離されていました。そのため、テクノロジは、ビジネスを営むための日常的な要件から意図的に外されていました。

ですが、2013 年のビジネスの世界では、その隔たりは、もはや存在しないことはおわかりでしょう。IT 担当者は、ビジネスを運営するために、ビジネス ユーザーが使うシステムを供給しており、毎日ビジネス上の意思決定を行っています。また、商品やサービスを生み出したり、パートナーや顧客とつながったりするためにビジネスが使用しているインフラストラクチャに関する重大な判断を最前線で行っています。IT 担当者が、現実の世界から隔離されていると思うのは、見当違いで有害な考え方です。

相互尊重の組織において、IT の存在は、長すぎるほど棚に上げられてきました。今こそ、IT 担当者は、当然与えられるべき信用の証を授けられるときです。社会的尊厳と IT は密接な関係にあり、IT 担当者は、堂々と振舞うべきなのです。IT 担当者以外の方が、この記事をお読みになった場合は、ご自分が周りに期待する社会的尊厳と同等のものを IT 担当者にも認めることを忘れないでください。

Romi Mahajan

Romi Mahajan は、KKM グループの代表取締役です。KKM に加わる前は、Ascentium Corporation のマーケティング最高責任者でした。Romi はテクノロジとメディア回路に関する著名な講演者で、さまざまな諮問機関の委員を務め、また、年間 12 個以上の業界イベントで講演を行っています。

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