Windows 10 のサービス オプション

Windows 10 には、Windows を展開しアップグレードする新しいモデルとして、継続的なプロセスによって機能の更新プログラムを提供するというモデルが用意されています。

従来、Windows の新しいバージョンは数年ごとにリリースされてきました。 組織内でこれらの新しいバージョンを展開することは、"ワイプ アンド ロード" プロセスを活用して既にあるコンピューターに新しいバージョンのオペレーティング システムを展開する場合も、ハードウェアの交換サイクルの一環として新しいバージョンのオペレーティング システムに移行する場合も、一大プロジェクトとなっていました。 どちらの場合も、組織は必要なタスクを完了するために、かなりの時間と労力を費やしていました。

Windows 10 では、新しいモデルが採用されています。 数年ごとの新しいリリースにのみ新機能を追加する代わりに、ハードウェアとアプリケーションの互換性を高いレベルで維持しながら継続的に新機能を提供し、1 年に 2 ~ 3 回、新機能を提供することを目標としています。 この新しいモデルはサービスとしての Windows と呼ばれ、組織では Windows を展開およびアップグレードする方法を見直す必要があります。 "数年ごと" に行われるプロジェクトではなく、継続的なプロセスとなりました。

このプロセスをサポートするために、より単純な展開方法を使う必要があります。 これらのシンプルな方法 (たとえば、一括アップグレード) と、既存のデバイスを段階的に展開する新しい手法を組み合わせることで、従来の展開プロジェクトの一部として実行されていた作業を長い期間に分散させることにより、全体的に見れば、必要な作業の量を減らすことができます。

重要な用語

この新しいサービスとしての Windows モデルに移行するにあたって、2 つの重要な用語の区別を理解しておく必要があります。

  • アップグレード。 追加の機能を含む Windows 10 の新しいリリースで、1 年に 2 ~ 3 回リリースされます。

  • 更新プログラム。 定期的にリリースされるセキュリティ修正プログラム、信頼性修正プログラム、その他のバグ修正プログラムのパッケージであり、通常、Update Tuesday (Patch Tuesday とも呼ばれる) で毎月 1 回リリースされます。 Windows 10 では、これらは本来累積的です。

これらの用語に加えて、次のような概念も理解しておく必要があります。

  • ブランチ。 「ブランチ」の概念は、長年にわたり使われてきたもので、従来の Windows を作成してサービスを提供してきた方法を表しています。各リリースは Windows コードの特定のブランチから作成され、更新プログラムはそのリリースのライフサイクルにおいて、そのリリースに対して作成されるものでした。 この概念は Windows 10 にも適用されますが、アップグレードの頻度が高くなったため、目にすることが多くなっています。

  • リング。 "リング" の概念は、対象となる PC のグループに Windows 10 を展開するためのメカニズムを定義します。各リングは別のグループを表します。 これらは、新しい Windows 10 のアップグレードのリリース メカニズムの一部として使われ、組織の内部でアップグレードのロールアウト プロセスをより細かく制御するために使用する必要があります。

Windows 10 のブランチの概要

組織内のさまざまなニーズとユース ケースをサポートするために、ブランチを選択できます。

ブランチ
  • Windows Insider Program。 リリースの前に新機能を確認して、新機能に関するフィードバックを提供し、既にあるアプリケーションやハードウェアとの互換性を早期に検証するために、少数の PC で Windows Insider Program ブランチを利用できます。 これらの PC は、通常、IT テストに使用される専用の PC、IT 管理者が使用する予備の PC、その他の重要でないデバイスです。

  • Current Branch。 初期導入者、IT チーム、およびその他のより広範なパイロット グループで、さらにアプリケーションの互換性と新しくリリースされた機能を検証するために、Current Branch (CB) を使用できます。

  • Current Branch for Business。 組織内の大半のユーザーについては、Current Branch for Business (CBB) によって、長い時間をかけて、段階的に心機能を展開できます。

  • Long-Term Servicing Branch。 重要なデバイスや特殊なデバイス (工場の機械装置、POS システム、ATM など) の場合、Long-Term Servicing Branch (LTSB) によって、新機能を受け付けないバージョンの Windows 10 Enterprise を提供します。ただし、セキュリティやその他の更新プログラムによって長期的なサポートが継続されます (Long-Term Servicing Branch は別の Windows 10 Enterprise イメージであり、Microsoft Edge、Cortana、Windows ストアなど、多くの付属アプリが削除されている点に注意してください)。

ほとんどの組織では、個々の PC の用途に合わせて、これらのすべての選択肢を組み合わせて利用できます。 以下に例を示します。

業界Windows Insider ProgramCurrent BranchCurrent Branch for BusinessLong-Term Servicing Branch
小売業<1%10%60%30%
製造業<1%10%55%45%
製薬業<1%10%50%40%
コンサルティング10%50%35%5%
ソフトウェア開発者30%60%5%5%

 

組織はそれぞれ異なるため、特定の業種内であっても正確な内訳は異なります。これらの数字は特定の推奨事項ではなく、単なる例と考えてください。 特定の組織における適切な組み合わせを判断するには、組織内の個々の PC の用途をプロファイリングし、各 PC を適切なブランチの対象として設定します。

  • 小売業では、店舗内に重要なデバイス (POS システムなど) があることが多く、Long-Term Servicing Branch の PC の割合が高くなります。 ただし、小売業の運営をサポートするインフォメーション ワーカーが使用する PC では、Current Branch for Business を利用して新機能を受け入れることができます。

  • 製造業も、通常、工場内に重要なデバイス (制御システムなど) があるため、Long-Term Servicing Branch が適しています。 ただし、小売業の場合と同様に、工場をサポートするインフォメーション ワーカーには Current Branch for Business の方が適しています。

  • 製薬企業の場合、製品の開発に使用される PC に対して法規制の要件があることが多く、このようなニーズは Long-Term Servicing Branch を利用することによって満たされます。 ただし、すべての PC がこれらの規制要件の対象となるわけではないため、対象外の PC では Current Branch for Business を使用できます。

  • コンサルティング会社では、従業員の生産性をできる限り向上させるために、従業員に最新の機能を提供する必要があります。 また、できるだけ早く新機能に関する専門知識を育てる必要があるため、Current Branch の重要性が増します。 ただしこの業界でも、コンサルタントにサービスを提供するインフォメーション ワーカーがいます。このようなインフォメーション ワーカーは Current Branch for Business を利用できます。

  • ソフトウェア開発者は、通常、新しい Windows のアップグレードに合わせてリリースされるソフトウェアの開発に取り組んでいます。 これを実現するために、開発者の多くは Windows Insider Program プレビュー ブランチを使って初期の開発作業を行い、開発の進行に合わせて Current Branch に移行します。

組織全体のすべての PC または大半の PC で、Long-Term Servicing Branch を使用するシナリオはほとんどないことに注意してください。

サービスとしての Windows のモデルについて詳しくは、「Windows のサービスの概要」をご覧ください。

Current Branch と Current Branch for Business

新しい Windows 10 の機能アップグレードの展開が完了すると、最初に Current Branch のコンピューターにアップグレードが提供されます。Current Branch for Business が構成されたコンピューターは、後日、少なくとも 4 か月後に機能アップグレード (と追加の修正プログラム) を受け取ります。 ツールを使って更新処理を管理している組織では、さらに 8 か月以上アップグレードを延期できます。 この間、アップグレードされていないコンピューターで引き続き月例のセキュリティ更新プログラムを使用できます。

PC を Current Branch for Business 用に構成するプロセスは簡単です。 手動で (設定アプリから)、グループ ポリシーを使用して、またはモバイル デバイス管理 (MDM) を使用して、[アップグレードを延期する] 設定を構成する必要があります。

図 1

図 1. [アップグレードを延期する] 設定の構成

現在、多くの組織では、Windows Server Update Services (WSUS) または System Center Configuration Manager を活用して PC を更新しています。 Windows 10 でも、これを変更する必要はありません。すべての更新プログラムは、承認またはこれらの製品で構成された自動展開ルールによって管理されるため、組織が選択するまで、新しい更新プログラムが適用されることはありません。 [アップグレードを延期する] 設定は、追加の検証チェックとして機能し、最初の 4 か月間の延期期間の終了までに新しいアップグレードの対象となっている Current Branch for Business のコンピューターで、インストールを遅らせることができます。この場合、最初の 4 か月間の延期期間が終了した後、8 か月の期間内にいつでもアップグレードをインストールできます。

Windows Update から直接、更新プログラムを受信するように構成されたコンピューターの場合、[アップグレードを延期する] 設定は、PC をアップグレードする時期を直接制御します。 アップグレードを延期するように構成されていないコンピューターは、最初の Current Branch リリースの時点でアップグレードされます。アップグレードを延期するように構成されているコンピューターは、4 か月後にアップグレードされます。

Windows 10 では、モビリティのレベルが高く、ドメインに参加していない PC やタブレットの更新プログラムを管理できるようになりました。 これらの PC については、モバイル デバイス管理 (MDM) サービスや Windows Update for Business を活用して、現在 WSUS や Configuration Manager で行っている管理と同じ種類の管理を行うことができます。

モバイル デバイス管理 (MDM) サービスに登録されている PC の場合、Windows 10 は新しい更新プログラム承認メカニズムを提供します。これを利用して、新しい機能アップグレードやその他の更新プログラムのインストールを延期することができます。 Windows Update for Business は、最終的には、アップグレードと更新プログラムを管理するためのさまざまな機能を提供する予定です。これらの機能に関する詳しい情報は、2015 年末にこれらの機能が利用可能になったときに提供されます。

Current Branch の各機能更新プログラムのリリースでは、新しい ISO イメージが利用可能になります。 これらのイメージを使って、既にあるコンピューターをアップグレードするか、新しいカスタム イメージを作成することができます。 これらの機能アップグレードは、既に Windows 10 を実行しているデバイスに簡単に展開できるように、WSUS でも公開されます。

Windows の以前のバージョンとは異なり、Current Branch または Current Branch for Business のサービスの有効期間は有限です。 引き続き月例のセキュリティ更新プログラムを受信するために、これらのブランチを実行しているコンピューターに、新しい機能アップグレードをインストールする必要があります。 これにより、ソフトウェアの展開に関して新しい考え方が必要になります。 展開スケジュールを Current Branch のリリース スケジュールに合わせておくことをお勧めします。

  • Windows Insider Program リリースを使って評価プロセスを開始します。

  • Current Branch を使うことで、最初のパイロット展開を実行します。

  • Current Branch for Business が利用可能になった後、幅広い展開に拡大します。

  • 次の Current Branch が利用可能になる前に、現在のリリースを使った展開を完了します。

図 2

図 2. 展開のタイムライン

一部の組織では、既にあるすべての PC に Windows 10 を展開するのに 12 か月間以上かかる場合があります。 これに対処するために、複数の Windows 10 リリースを展開して、展開プロジェクト中にこれらの新しいリリースに切り替えることが必要になる場合があります。 前のリリースのパイロットおよび展開中に、あるリリースの評価を行うなど、タイムラインを重複させることができます。

図 3

図 3. 重複するリリース

このようにタイムラインを重複させることで、組織は展開するリリースを選択できます。 ただし、1 つのリリースを長時間継続すると、それ以降のリリースを (既にある Windows 10 PC と新しく移行する PC の両方に) 展開する時間が少なくなるため、1 つのリリースをそのリリースの有効期間いっぱい維持することは、全体的には悪影響を及ぼす可能性があることに注意してください。

Long-Term Servicing Branch

特殊デバイスについては、Windows 10 Enterprise Long Term Servicing Branch (LTSB) ISO イメージを利用できます。 これらは、流動的なスケジュールでリリースされ、通常、CB や CBB リリースよりも頻度が低いと想定されています。 リリースされると、これらはセキュリティ修正プログラムと信頼性修正プログラムによって、長期間サポートされます。サービスの有効期間中に新機能は追加されません。 LTSB イメージには、付属のユニバーサル Windows アプリの多く (Microsoft Edge、Cortana、Windows ストア、メール/カレンダー アプリなど) が含まれていないことに注意してください。これらのアプリが使用するアプリやサービスは頻繁に更新されて新機能が追加され、LTSB OS を実行している PC でサポートすることができないためです。

これらの LTSB イメージを使って、既にあるコンピューターをアップグレードするか、新しいカスタム イメージを作成することができます。

Windows 10 Enterprise LTSB インストールでは、ユニバーサル Windows アプリを作成できる、Windows SDK、Visual Studio、および関連ツールを使って作成された基幹業務アプリを実行する機能によって、ユニバーサル Windows プラットフォームを完全にサポートしていることに注意してください。 他の ISV のアプリ (Windows ストアで公開されているものを含む) については、ISV に問い合せて、特定のアプリが長期的にサポートされるかどうかを確認してください。

前に説明したように、組織全体の各 PC または大半の PC で、Long-Term Servicing Branch を使用するシナリオはほとんどありません。

Windows Insider Program

Windows 10 の新しい機能の更新プログラムの開発中に、Windows Insider Program 参加者に対して、プレビュー リリースが提供されます。 これにより、これらの参加者は新機能を試し、アプリケーションの互換性を確認して、開発プロセス中にフィードバックを提供することができます。

Windows Insider Program ビルドを取得するには、Windows Insider Program の参加者が設定アプリでオプトインし、Microsoft アカウントを指定する必要があります。

(通常、機能が Windows Insider Program の "スロー" リングで利用できるようになったときに) 展開の検証、テスト、イメージの作成を行うことができるように、新しい ISO イメージがリリースされることがあります。

ブランチ間の切り替え

特定の PC を使用している間に、利用可能なブランチを切り替えることが必要になる場合や、切り替えることが望ましい場合があります。 使用しているブランチに応じて、この操作の正確なメカニズムは異なります。単純な場合もあれば、さらに複雑になる場合もあります。

PC で使用しているブランチ変更後のブランチ必要な操作
Windows Insider ProgramCurrent Branch最終的な Current Branch リリースを待ちます。
Current Branch for Business直接変更することはできません。Windows Insider Program のコンピューターは、開発サイクルの終了時に自動的に Current Branch リリースにアップグレードされるためです。
Long-Term Servicing Branch直接変更することはできません (ワイプ アンド ロードが必要)。
Current BranchInsider設定アプリを使って Windows Insider Program にデバイスを登録します。
Current Branch for Business[アップグレードを延期する] 設定を選択するか、ビジネスの準備が完了するまで次のアップグレードを受け取らないターゲット グループに PC を移動します。 この変更による直接的な影響はないことに注意してください。次の Current Branch リリースがインストールされなくなるだけです。
Long-Term Servicing Branch直接変更することはできません (ワイプ アンド ロードが必要)。
Current Branch for BusinessInsider設定アプリを使って Windows Insider Program にデバイスを登録します。
Current Branch[アップグレードを延期する] 設定を無効にするか、最新の Current Branch リリースを受け取るターゲット グループに PC を移動します。
Long-Term Servicing Branch直接変更することはできません (ワイプ アンド ロードが必要)。
Long-Term Servicing BranchInsiderメディアを使って Windows Insider Program の最新のビルドにアップグレードします。
Current Branchメディアを使って新しい Current Branch ビルドにアップグレードします (Current Branch ビルドはより新しいビルドである必要があります)。
Current Branch for Businessメディアを使って新しい Current Branch for Business ビルド (Current Branch ビルドと修正プログラム) にアップグレードします。 より新しいビルドである必要があることに注意してください。

 

関連トピック

Windows 10 の展開に関する考慮事項
Windows 10 の互換性
Windows 10 のインフラストラクチャ要件

 

 

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