Windows 8: ファイル履歴について

ファイル履歴は、いくつかの主要な場所に保存されている個人用ファイルを継続的に保護するための新しい自動システムです。

Bohdan Raciborski

個人用ファイルが変更されるたびに、指定した専用の外部ストレージ デバイスにファイルのコピーが保存されるファイル履歴では、ライブラリ、デスクトップ、お気に入り、連絡先フォルダーに保存されている個人用ファイルが継続的に保護しています。ファイル システムの変更は、定期的に (既定では 1 時間ごとに) スキャンされ、変更されたファイルは別の場所にコピーされ、また、特定の個人用ファイルに加えられた変更の全履歴が自動的に作成されます。

ファイル履歴は Windows 8 で導入された機能で、この機能によりファイルを保護する新しい方法が提供されます。Windows 7 の Windows バックアップと復元機能は、あまり普及しなかったので、ファイル履歴に置き換えられます。どのような事故もデータ損失につながる可能性があるため、Windows バックアップと復元機能の廃止により、個人データとデジタル メモリは非常に脆弱な状態になります。

そのため、マイクロソフトは、Windows 8 で次のことを積極的に行おうとしています。

  • データをごく簡単に保護できるようにして、すべての Windows ユーザーがファイル履歴を有効にし、自分の個人用ファイルが保護されていることに確信を持てるようにする。
  • バックアップの設定と使用に伴う複雑さを取り除く。
  • バックアップをユーザーによる操作が不要な自動サービスに変えて、ファイルを保護するための負荷の高い作業が、バックグラウンドで行われるようにする。
  • シンプルかつ魅力的な復元エクスペリエンスを提供し、これまでよりも容易に個人用ファイルの特定のバージョンを見つけ、プレビューして復元できるようにする。

ファイル履歴を設計するときには、過去の教訓を活かして、変化する PC ユーザーのニーズに対処するための要件を追加しました。

  • PC ユーザーは、かつてないほど PC を持ち歩くようになっています。このような状況に対処するために、ファイル履歴は最適化され、電源状態が絶えず変化し、ネットワークやデバイスとの接続と切断が繰り返し行われているノート PC のサポートが強化されました。
  • PC ユーザーは、かつてないほど多くのデータを作り出し、データに依存するようになっているため現在システム ドライブにあるデータだけではなく、過去に作成されたあらゆる作業とデータも保護されます。

特定の時点のバージョンのファイルやフォルダー全体が必要になったら、すぐに見つけて復元できます。ファイル履歴の復元機能は、ファイルを参照、検索、プレビュー、および復元する操作のために最適化された魅力的なエクスペリエンスを提供するように設計されました。

設定

ファイル履歴を使用してファイルのバックアップを開始する前に、ファイルの保存先ドライブを設定する必要があります。マイクロソフトでは、クラッシュなどの PC の問題からファイルを保護するために、外部ドライブやネットワーク上の場所を使用することを推奨しています。

ファイル履歴では、ライブラリ、連絡先、お気に入り、およびデスクトップにあるファイルのコピーだけが保存されます。それ以外の場所にあるフォルダーをバックアップする必要がある場合は、既存のいずれかのライブラリにフォルダーを追加するか、新しいライブラリを作成できます。

ファイル履歴を設定するには、次の手順を実行します。

  • コントロール パネルのファイル履歴アプレットを起動します。
  • 外部ドライブに接続し、ページを更新して、[オンにする] をタップまたはクリックします。

PC にドライブを接続して、表示された通知をタップまたはクリックし、[バックアップ用にこのドライブを構成] をタップまたはクリックして、[自動再生] ダイアログ ボックスでドライブを設定することもできます。設定は、これで完了です。設定が完了した瞬間から、ファイル履歴により、ライブラリ、デスクトップ、お気に入り、および連絡先のあらゆる変更が 1 時間ごとにチェックされます。変更されたファイルが見つかると、ファイル履歴の保存先ドライブにファイルが自動的にコピーされます。

ファイルの復元

何か問題が発生して、1 つ以上の個人用ファイルが失われたときには、ファイル履歴の復元機能を使用して次の作業を簡単に行えます。

  • Windows エクスプローラーと同様の形式で個人用のライブラリ、フォルダー、およびファイルを参照する。
  • キーワード、ファイル名、および日付の範囲を使用して特定のバージョンを検索する。
  • 特定のファイルについて保存されている複数のバージョンをプレビューする。
  • 1 つまたは複数の選択したファイルを 1 回のタップまたはクリック操作で復元する。

マイクロソフトは、ファイル履歴の復元機能をワイドスクリーンのディスプレイに合わせて設計し、ファイルのプレビューを見て、ファイルの特定のバージョンを探すユニークで魅力的で便利な方法を提供しようと考えました。

他のバックアップ アプリでは、必要な 1 つのファイルを見つけるのに、特定の日付に作成されたバックアップ一式を選択し、該当フォルダーを見つけてファイルを参照する必要があります。必要なファイルが見つかったとしても、適切なファイルかどうかを確認するためにファイルを開いたり、ファイルのコンテンツをプレビューすることはできないため、そのファイルは復元するほかありません。そのファイルが適切なバージョンでなかった場合は、もう一度、最初からファイルを探し直す必要があります。

ファイル履歴では、Windows エクスプローラーから直接検索を始めることができます。特定の場所に移動して、エクスプローラーのリボンの [履歴] ボタンをクリックまたはタップすると、選択したライブラリ、フォルダー、または個別ファイルのすべてのバージョンが表示されます。たとえば、[ピクチャ] ライブラリを選択して [履歴] ボタンをクリックまたはタップすると、[ピクチャ] ライブラリの全履歴が表示され、特定のファイルをクリックすると、選択した画像ファイルの全履歴を確認できます。

[前へ] ボタンや [次へ] ボタンをクリックするか、画面をスワイプして、必要なバージョンに簡単に移動できます。探しているバージョンが見つかったら、[復元] ボタンをクリックすると、選択したバージョンが元の場所に復元されます。

ファイル履歴では、システム全体 (OS、アプリ、設定、ユーザー ファイル) を保護するのではなく、最も大切で、事故が発生した場合に復元するのが最も難しい、個人用ファイルに的を絞っています。

パフォーマンスを考慮した最適化

これまで多くのバックアップ アプリでは、ブルート フォース型の方法が採用され、ボリューム全体をスキャンして、ディレクトリやファイルの変更をチェックしていました。この方法は、システムのパフォーマンスに大きな影響を与える可能性があり、完了するまでに長い時間を要しました。それに対して、ファイル履歴では NTFS 変更ジャーナルを活用しています。

NTFS 変更ジャーナルには、NTFS ボリュームに保存されている全ファイルに加えられた変更がすべて記録されます。ファイル履歴では、ディレクトリを開いて読み取る処理が必要なボリュームのスキャンは行わず、NTFS 変更ジャーナルを開いてスキャンして、変更を確認します。スキャンした情報に基づいて、コピーする必要がある変更されたファイルの一覧を作成します。このプロセスは迅速で効率的です。

ファイル履歴は、簡単に中断して、すばやく再開できるように設計しました。この設計により、ファイル履歴では、システムがスリープ モードになったとき、ユーザーがログオフしたとき、システムがビジー状態でフォアグラウンドの処理の完了に追加の CPU サイクルが必要なとき、またはネットワーク接続が失われたり飽和状態になったときでも、最初からやり直す必要なく処理を再開できます。

ファイル履歴は、リソースの限られている小型のフォーム ファクター PC やタブレットを含め、どの PC でも適切に機能するように設計されています。システム リソースは、システム パフォーマンス、バッテリ寿命、および全体のエクスペリエンスへの影響を最小限に抑える形で使用されます。

ファイル履歴では次のことが考慮されています。

  • ユーザーが PC の前にいるかどうか (ログオンして、システムを活発に使用しているかどうか)
  • PC で AC 電源とバッテリ電源のどちらを使用しているのか
  • 前回のバックアップ サイクルがいつ完了したのか
  • 前回のバックアップ サイクルからどのくらいの変更が加えられたのか
  • フォアグラウンド処理のアクティビティ

このすべての要素に基づいて (これらの要素は 10 秒ごとに再チェックされます)、データをバックアップするのに最適な方法を決定しています。これらの状態が 1 つでも変更されると、ファイル履歴では、クォータを増減したり、バックアップ サイクルを中断または終了するという判断を下します。

モバイル ユーザーを考慮した最適化

ファイル履歴を有効にしている場合、ファイル履歴では状態の遷移が円滑に処理されます。たとえば、ノート PC のカバーを閉じたり、外部ドライブを切断したり、ノート PC を自宅のワイヤレス ネットワークの圏外に持って行ったりした場合、ファイル履歴では、次のように適切な処理が行われます。

  • カバーを閉じる: PC がスリープ モードになると、電力モードが変化したことが検出され、処理が中断されます。
  • カバーを開ける: システムのパフォーマンス全体 (ゲームも含む) に影響を及ぼさずにファイルの保護を実現することを優先しながら処理を再開します。また、システムがスリープ モードから復帰しているときにシステムに影響を及ぼさないように、カバーを開けた後に行われるアクティビティが完全に終了するまで待機します。
  • 専用のストレージ デバイスを切断する: ストレージ デバイスが接続されていないことが検出され、変更されたファイルのバージョンのキャッシュがシステム ドライブに保存されます。
  • 専用のストレージ デバイスを接続する: 次のサイクルでは、ストレージ デバイスが再接続されたことが検出され、ローカル キャッシュから外部ドライブにすべてのバージョンがフラッシュされ、通常の処理が再開されます。

簡単さと安心

マイクロソフトは、「個人用のファイルに最大限の保護を提供すること」および「使いやすさ、簡単さ、安心を提供すること」という 2 つの方針を念頭に置いてファイル履歴を設計しました。

ファイル履歴は、いくつかの簡単な決定を下すだけで活用できます。ほとんどの場合、使用する外部ドライブを決定する必要があるだけで、その他の決定は Windows 8 によって処理されます。ファイル履歴の処理は透過的に行われ、Windows のユーザー エクスペリエンス、信頼性、またはパフォーマンスに影響はありません。来月号では、Windows 8 とファイル履歴のさらに高度なバックアップ機能を紹介します。

Bohdan Raciborski

Bohdan Raciborski は、マイクロソフトの主任プログラム マネージャー リードです。ソフトウェア開発とプログラム管理の分野で 20 年以上の経験があります。企業向けの高可用性と高パフォーマンスのストレージ ソリューションから、先進国市場と新興市場向けのコンシューマー製品まで、さまざまな領域におけるソフトウェア開発とチーム管理を専門としています。

 

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